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地味に過ごしたかったのにヤンデレ王太子に囲われた  作者: 水瀬みずか


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第47話 忍び寄る影

王都の空気が、目に見えないほどの速さで変わっていく。

噂は小さく、だが確実に人の足を止め、金の流れを曲げて言葉の重さを変えていた。


シャーロットも、その変化を肌で感じていた。

「……王都の雰囲気がなんか変だよね。」

そう漏らしたのは、伯爵邸の居間だった。


向かいで、

エドモンドは、

いつものように紅茶を飲んでいる。

「変じゃない。騒がしくなる前の静けさだ。」

「怖い言い方しないで。」

「怖い時期だからな。」


何でもない顔で言うが、その目だけが外を警戒するように細められていた。


その夜。

伯爵邸の裏門に、見知らぬ影が一つ、

近づいた。

忍ぶような足取りだが、完全ではない。

影が、塀を越えようとした、その瞬間。


影は地面に叩き伏せられていた。

「……っ!」

剣の柄で鳩尾を打たれ、息が詰まる。



「悪いが、ここは“見学コース”じゃない。」

剣を向けたのは、エドモンドだった。

いつもの軽口も、笑みもない。

ただ、冷たい目。


「誰に頼まれた。」

影は、黙る。

エドモンドはため息をついた。

「黙秘はいいが、選択肢は二つだ。」

剣先を、ほんの少しだけ近づける。


「自分で帰るか、二度と歩けないか。」


影は、震えながら口を割った。

「……金で雇われた。伯爵邸の様子を見てこいって。名前は知らない。」

エドモンドは、一瞬だけ考え影を突き飛ばした。

「二度と来るな。」


影は、転げるように去っていった。


 その一部始終を二階の窓からシャーロットは見ていた。

翌日の午後、居間で向かい合う。


「……ねぇ昨夜の、何だったの?」

「猫。」

「嘘でしょ。」

「でかい猫。」

呆れた目で見ると、エドモンドは肩をすくめた。

「お前が知らなくていいことだ。」

「……でも、危ないことしてる。」

「逆だ。」

真面目な声になる。

「お前が危ない目に遭わないように、俺が前に出てるだけだ。いいか、夜は窓を開けるな。知らない手紙は俺に見せろ。誰かに呼ばれても、一人で行くなよ。」


少し間を置いて、

いつもの調子に戻る。

「あと、変な男に優しくするな。」

「それ、いつも言うじゃない。」

「状況が“変”だから、もう一回言っとく。」


カップを持ち上げ、軽く鳴らす。

「今の王都はな、何よりも人が怖い。」


その視線は、窓の外ではなく、

シャーロットの“未来”を見ているようだった。

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