表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地味に過ごしたかったのにヤンデレ王太子に囲われた  作者: 水瀬みずか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/54

第44話 嵐の前の静けさ

 辺境伯家の動きは、誰の目にも動いていないように見えた。

 王城では、王太子が「平和」「友好」「未来」を語り、貴族たちはその言葉にうなずき、辺境伯家は、ただ静かに席に座っているだけの存在になっていた。

――だが、水面下では、確実に手が伸びていた。


辺境伯の私室。

 夜、灯りは一つだけ。

「隣国の商人が最近、港を変えています。」

老臣が、低い声で報告する。

「表向きは物流の都合。だが、実際は王太子派の商会が優先権を持ち始めています。」

辺境伯は、指で机を叩いた。


「王太子は、戦ではなく流れで国を奪うつもりだな。」

「我らの領地を通らずに、物と金が動き始めれば、

辺境伯家は要ではなくなります。」

「ならば――」

辺境伯は、ゆっくりと言った。

「流れを、こちらで作る。」



数日後。

 王都では

「なぜか、辺境の武具が売れている」という噂が流れ始めたが、それは偶然ではなかった。

 レオンハルトは、学園の剣術場で静かに汗を流しながら、何事もない顔で同級生たちの会話を聞いていた。

「最近、剣が手に入りにくいらしいぞ。」

「王城の倉が、王太子派に抑えられてるって。」

「でも、辺境の工房のは質がいいって聞いた。」

レオンハルトは、口を出さない。

ただ、剣を振り噂が自然に広がる速度だけを測っていた。


その裏

辺境伯家は小規模な鍛冶師、馬商人、護衛団と静かに契約を結んでいった。

条件はただ一つ。

「我らの名は、前に出すな。」

商人たちは、偶然、辺境の品が良かった

という顔で、王都に品を流す。

やがて、こう囁かれるようになる。

「王太子派の流通は、安定している。だが、辺境の品は、信頼できる。」


 王城では平和の象徴としての政策が進む一方、人々の心の奥に、小さな違和感が芽生え始めていた。


――戦わない国は、誰が守るのか。

――剣を持たない未来に、責任はあるのか。

その問いを誰も口にはしない。

だが、皆が心のどこかで抱え始めていた。


レオンハルトはある夕方

学園の裏庭で一通の短い手紙を受け取った。

“流れは、でき始めている。”

それだけの文。

彼は、紙を燃やしながら、静かに息を吐いた。

(父上……もう、盤面は動いています。)

王太子は剣ではなく“平和”で国を縛ろうとしている。


ならば、辺境伯家は、平和では守れないものを人々の心に、思い出させるだけだ。

それは、剣を振るう戦ではない。

だが、確実に国の形を揺らす静かな反撃だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ