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地味に過ごしたかったのにヤンデレ王太子に囲われた  作者: 水瀬みずか


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31/54

第31話 王太子

 第二王子の死から、まだ日が浅い。

 王城全体が黒と灰色に沈み、

 音楽も舞踏会も、すべてが止められていた。

 そんな中、シャーロットのもとに、王太子殿下から簡素な封の手紙が届いた。


――――――

弟を失ってから、誰ともまともに話せていない。

君となら、言葉にしなくても、ただ同じ時間を過ごせる気がした。

無理のない範囲でいい。

明後日の午後、王城の庭に来てほしい。

――――――


シャーロットは色味を抑えたドレスを選んだ。

王城の庭は、いつもより人影が少なく、花の色さえも静かに見えた。

王太子は黒を基調とした服で、いつもより少し痩せたように見える。


「来てくれてありがとう。」

その声は、いつもの余裕より、少しだけ低い。

二人は並んで歩く。

言葉は、しばらく出てこなかった。

やがて王太子が、ぽつりと漏らす。

「……弟は、愚かだった。だが、それでも私の弟だった。」

シャーロットは、何も言わずに頷いた。


「王族は、泣く場所が少ない。悲しむより、整えることを求められる。」

「……それは、きっと、すごく苦しいですね。」

王太子は、彼女を見て、わずかに笑った。

「君は、そういうことを自然に口にするのだな。」


しばらく歩いた先、

静かな花壇の前で、王太子は立ち止まった。

「……これは、君にはまだ話していなかった。」

そこには、まだ小さな苗木が植えられていた。

「薔薇だ。まだ咲かない。」

シャーロットは、そっと覗き込む。

「……小さいですね。」

「だが、必ず咲く。それまで、私が枯らさない。」

それだけ言って、

王太子は、それ以上の説明はしなかったが

シャーロットも、何も尋ねなかった。



二人は、静かに紅茶を飲んだ。

甘さも、香りもどこか控えめに感じられる午後だった。

それでも王太子は、

帰り際に小さく言った。

「……来てくれて、助かった。」

それは、

“王太子”ではなく、

“弟を失った男”の声だった。

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