第23話 晩餐会
王城の大広間には、すでに多くの貴族たちが集められていた。
正装に身を包み、女性達は趣向を凝らしたドレスで身を飾っている。
参列者に共通しているのは、今夜の主役が誰であるかを強く意識した緊張だった。
隣国大使を迎える、国賓晩餐会。
表向きは友好の証だが、その裏に何が動いているのか――それを正確に知る者は、そう多くない。
やがて、重厚な扉がゆっくりと開かれた。
ざわめきが、すっと引いていく。
現れたのは、王族方と隣国大使。
国王陛下と王太子殿下が大使と並んで歩きながら、すでに談笑していた。
「本日は、このような盛大な席をご用意いただき、光栄です。」
大使が穏やかに頭を下げる。
「こちらこそ。お越しいただき感謝いたします。」
王太子は、静かに微笑みながら、言葉を続けた。
「いずれ“隣国”という呼び方が、懐かしい言葉になる日も来るでしょう。」
そして――
王太子のすぐ後ろ、ほんの半歩下がった位置に、
シャーロットの姿があった。
王族でも、国賓でもない。
それでも、王太子の側に立つことを許された令嬢。
それだけで、広間に小さなどよめきが走る。
「殿下の“お気に入り”という噂は、本当だったのか。」
誰もが言葉を飲み込み、視線だけで騒いだ。
シャーロットは、胸の奥がひやりとするのを感じながら、
ただ、教えられた通りの歩幅で、王太子の後ろを進んだ。
(……こんな場所に、私が立っていいの?)
けれど、王太子は一度も振り返らない。
まるで最初から、そこに彼女がいることが“当然”であるかのように。
それが、祝宴の始まりだった。




