第22話 招待状
晩餐会の招待状がシャーロットのもとに届いたのは、その数日後だった。
王城の紋章が押された封蝋。
重厚な紙質。
そこに記されていたのは――隣国大使を迎える国賓晩餐会への正式な招待。
「……私が、国賓の晩餐会の席に?」
思わず声に出すと、従者が困ったように微笑んだ。
「王太子殿下のご意向だそうです。」
胸の奥が、ひやりとした。
国賓を招く場
ただの貴族の娘が気軽に呼ばれる席ではない。
また、殿下の囲い込みが一段強くなった気がする……。
後日。
今度は王宮からの使者が伯爵家を訪れた。
重厚な馬車が門前に止まり、
王家の紋章が刻まれた箱が、いくつも運び込まれる。
「王太子殿下より、シャーロット嬢へ。
晩餐会のためのお仕度一式をお届けに参りました。」
応接間に並べられた箱は、
どれも王家御用達の老舗店で誂えられた特注品。
恐る恐る、ひとつ開く。
中に収められていたのは、
淡い象牙色のドレス。
胸元と裾に、控えめな薔薇の刺繍。
「まあ、綺麗……。」
思わず、息が漏れた。
別の箱には、薔薇を象った宝飾品――
ピンクゴールドの台座に、淡く光る宝石。
そして、小さな封筒。
王太子殿下からの手紙が添えられていた。
――
晩餐会では、君にふさわしい姿でいてほしい。
当日は、私の隣に。
不安はいらない。
すべて任せて欲しい。
――
読み終えた瞬間、
胸の奥が、きゅっと締めつけられた。
ありがたい。
しかし……また一歩、戻れない場所へ進んだ気がする。
そんなシャーロットの気持ちに気が付くはずもなく、メイド達は興奮気味に声を上げている。
「さすがお嬢様ですわ!」
「もう、未来の妃そのものですね!」
その言葉を、
シャーロットはただ、静かに聞いていた。
薔薇の刺繍を指でなぞりながら。
このドレスを着る日は、
きっと、ただの晩餐会では終わらない。
そう、なぜか確信してしまう自分がいた。




