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王女殿下生誕祭

 第一王女アリア殿下の生誕祭は、王都全体がお祝いムードになる。

 アリアの好きな花で彩られ、好きな色で作られた物たちが並ぶ。

 そして、好きな食べ物が露店に並ぶのだ。


「いつ見てもすごいな」


 王都の華やかさといったら、もうなんかすごい。

 言葉が出ないほど、装飾も何もかもがお祝い雰囲気だった。

 さすが、国民から愛される王女様だ。僕は、お祝いムードで溢れかえっている街をまじまじと見つめていた。

 

「お兄ちゃん、こっちこっち」


 葵に腕を引っ張られて、王城前の広場に行く。

 そこには、既に多くの人だかりができていた。


「可愛いアリアの姿を見なきゃね」

「もっと前に行った方が見えるんじゃないか?」

「うるさい。低身長のこといじったらだめ」


 そんなじゃれ合いを続けながら、待つこと数分。

 王城のバルコニーが開き、誰かがしずしずと出てきた。

 青い瞳によく合った、澄み渡るような透明感のある青いドレス。金髪には、サファイアが煌めくティアラ。

 この国の第一王女、アリアだ。


「王女様ー!」

「お誕生日おめでとうございます!」


 国民が、わあぁ! と叫ぶ。

 アリアは、それに優雅に応えた。


「ありがとうございます。お祝いに来てくださった皆さんに、大いなる祝福を」


 にこりと笑った途端、どこからか悲鳴が聞こえた。

 黄色い歓声が溢れる広場で、誰かが発したのだろうか。

 その答えを探していると、葵が「あそこ」とバルコニーを指さした。


「お兄さん王子たちよ。ほら、アリアの可愛い姿見て卒倒してる」

「ほんとだ」


 よく見れば、アリアの隣に立っていた兄王子たちが卒倒していた。

 国王も、でれでれな顔をしている。

 あぁ、だから王妃に怒られるんだよ。

 でもこれがきっと、愛されている王家の形なんだろう。



 *



「あまりご無理をなさらないように」


 そう言われたのは、舞踏会も終わった時間のこと。

 アリアに贈り物を持って葵と行ったのは、友人としての時間だ。

 少し空気に当たります、とバルコニーに出る。

 そのときに、アリアがやってきたのだ。


「アオイがいつも貴方を心配していますわ」

「そうですね。彼奴には悪いことをしてます」

「あら、いつも通りの口調でよろしいんですのよ」


 アリアはくすっと笑うと、部屋の中の葵を見た。

 葵は、王妃と共にお菓子に目を輝かせている。

 そんな葵を、アリアは目を細めて見つめた。


「アオイは、王女という立場に在る私にも普通に接してくれます。それは、貴方も一緒です。あなた方が、私を王女ではなくただの女性として見てくれるから、ここにいられているのです」

「アリアは、普通の女の子だよ」

「ありがとうございます」


 アリアは、嬉しそうに微笑んだ。


「だから、あまりご無理をなさらないように。貴方が無理をすれば、悲しむのは葵ですわ。私は、友人であるあなた方が苦しんでいるところは見たくありませんの」

「なんとか、努力はするよ」

「努力する、ではなくやるのです!」


 アリアは、僕の足を思いっきり踏んづけてきた。

 ヒールが無慈悲に食い込む。

 普通に痛い。


「分かりましたか!?」

「あ、あぁ分かった! それより足退けてよ、アリアの大好きな葵に痛みが行くから」

「そうでした!」


 ようやく気付いたらしいアリアは、慌てて僕の足を解放してくれる。 

 葵は、と見ればどうやらお菓子に夢中で気が付かなかったらしい。

 あはは、葵らしいや。


「とにかく」


 こほんっと咳払いをしたアリア。

 彼女は、決意を持った目で僕を見上げてきた。


「困ったらいつでも言いなさい。私は、ヒナタとアオイの味方ですから」

「ありがとう」


 まったく、この王女様は。

 王女という立場ではないただの女の子として見てくれて嬉しい、とアリアは言った。

 それは、こちらにも言えること。

 僕たちの立場に物怖じせず、友人として見てくれるアリア。

 そのアリアの存在は、安心できる頼もしさがあった。


 山から、月が顔を覗かせる。

 アリアが一つ歳を取ってから、初めて出会う月。

 その月は、僕たちの唯一無二の友人を優しく照らすのだった。


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