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5 学園探索と目標決め 1

「よし、じゃあまずは学園探索‥‥‥ではなく、目標決めからやろう!」

一瞬目を輝かせた生徒たちだったが、ドイルが言った続きの言葉に、一気に教室のテンションが下がった。

「え、そんな嫌なの? 目標決めは大事だぞ? この学園で何をやりたいのか、何を突き詰めるのか。それが決まっていないと、全部ほどほどにやることになって、自分の個性が出せなくなっちまう。大人になって誰も守ってくれなくなったとき、周りに埋もれて個性が出てねえ奴を誰が欲しがる?」

なるほど、認めたくはないが、一理ある。

先ほどまでは目標決めなんて面倒くさいと思っていたが、確かにドイルの言う通りだろう。

ふとレイルが周りを見渡すと、クラスメイト達も同じことを思ったようで、先ほどのげんなりした表情が幾分明るくなっていた。


「お! みんなやる気になったようだな! そしたら、今から紙を配るから、そこに決めた目標を書いてくれ」

((( やっぱ、めんどくさ‥‥‥‥‥ )))



(目標、かぁ‥‥‥‥‥)

ドイルがクラス全員に紙を配り終えた後。

レイルは机に頬づえをつき、紙をぼんやりと眺めながら考えていた。

(どんなのがいいかなぁ‥‥‥? やっぱり、魔法を上手に使えるようになりたいとか?)

だが、恐らく周りも同じことを考えているだろう。

それこそドイルの言っていた通り、自分の個性が周りに埋もれてしまう。

(ん~、でもなぁ、別に他に思いつか‥‥‥‥‥‥‥そうだ!!)

レイルはいい目標を思いついたと言わんばかりに目を輝かせ、紙に何かを懸命に書き始めた。


そして、ちょうどレイルが目標を書き終えた時、ドイルが言った。

「よーし、大体みんな書けたようだな。じゃ、俺のところに持ってきてくれ。一列目の人からな」

そして全員分の紙を集め終えたドイルは、生徒たちから期待の目を向けられ、苦笑交じりに壇上に手をついた。

「じゃあ学園探索、やるか!」



その後、ドイルの指示で二人組になった。

もちろんレイルはラルカとだ。

このまま二人で学園探索をするのだろうと思っていたら、ドイルが予想外の言葉を発した。

「よし、みんな二人組になったな! ‥‥‥‥‥‥にしても、男子と女子で分かれすぎだろ‥‥‥よし、女子二人組と男子二人組で四人グループを作れ! さすがにこんなにキッチリ分かれてるのはよくない!」

((( えええええ~~~!! ))))

クラス全員の気持ちが、綺麗にまとまった瞬間だった。



「じゃあ、えっと、よろしく‥‥‥な! 俺はライア・アズランだ!」

「‥‥‥‥‥えととととと。僕はランです‥‥‥‥。よ、よろしくお願いしますです‥‥‥」

「うちはラルカ! よろしくな~!!」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」

そう、なんとこのクラス。

恐ろしいほどに異性と話したことがある者たちが少ないのだ!

そのせいでみんなガッチガチに緊張しまくっている。

‥‥‥‥約一名、緊張のかけらも感じてなさそうな者がいるが、きっと気のせいだろう。


ちなみにレイルも異性と話すのはこれが初めてだ。

過保護すぎる両親のせいで、異性と話す機会、そもそも会うこと自体がほとんどなかったレイルは、ガッチガッチのカチンコチンに固まってしまっている。

三人に視線を向けられているが、レイルの口はしっかり閉じられたまま。

いや、本人も何か話さなければと焦ってはいるのだが、異性に全く免疫を持っていないため、緊張しすぎて声が出ないのだ。

「‥‥‥この子はレイル! ちょっと緊張してるみたいだけど、メッチャいい子だよ!」

(ナイス、ラルカ!!)

ラルカのサポートのおかげで助かったレイルであった。



そして、レイルたち四人組はとりあえず教室から出たわけなのだが。

「じゃ、みんなどこ行きたいっ?」

「俺はどこでもいいぜ!」

「ぼ、僕も‥‥‥」

なんということだろう。

ラルカのテンションにつられて男子たちが普通に喋っている。

先ほどははあんなに緊張でガッチガチだったのに!

(ああああああ、もうやだ。おうち帰りたい‥‥‥)


一人逃げ腰なレイルだったが、もちろん家に逃げ帰ることなんてできず。

引きつった笑みを浮かべ、ぎりぎりのところでその場にとどまっていた。

「レイルはどこ行きたい?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」

(お願いラルカ! 私に話を振らないで!!)

必死に目線で伝えようとするレイル。

(どうしたんだろ、レイル。お腹減ってるのかなぁー)

レイルの様子を見て、的確‥‥‥ではなく的外れにレイルの気持ちを察した(つもりになっている)ラルカだった。


「レイルさん? 緊張してんの?」

ライアに話しかけられ、さらにレイルの表情が凍り付く。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」

(私に話しかけないでぇぇぇぇ!! ってかさりげなく名前呼びすんな―――――!!)

心の中で断固講義をするレイル。

さすがにこのまま何も言わないだけじゃだめだと思い、無理やり口を開く。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥行、行キタイトコ無イデス」

若干棒読みになってしまったが、言えただけいいだろう。

心の中で自分を褒めくるレイルだった。

だが‥‥‥果たしてこんなグループメンバーで、楽しく学園探索などできるのだろうか?




一時間後。

寮の食堂の前には、お互いにすっかり打ち解けた様子の四人の姿があった。

その四人とは、レイル・ラルカ・ライア・ランのことである。

そう、あのレイルが男子と打ち解けているのだ!

「次どこ行く~?」

ライアの呼びかけに最初に応じたのは、一時間前は口も開けないほど緊張しまくっていたはずのレイルだった。

「はい! 図書館行きたい!」

「あ、僕も!」

「うちも行ってみたいー!」

なぜこれほどまでに打ち解けることができたのかというと‥‥‥。


あの後、ガッチガチに緊張しているレイルを見かね、ラルカがレイルをトイレに連れていった。

その時、男子二人の作戦会議が開かれたのである。

「なあ、レイルさんメッチャ緊張してたよな‥‥‥‥?」

「う、うん‥‥‥。どうすれば打ち解けてくれるのかな」

二人でゴニョゴニョ話していると、そこにラルカがやってきた。

「何話してんのー?」

「あれ、ラルカ。レイルさんは?」

ラルカは肩をすくめて、トイレを指した。

「レイルなら、引きこもっちゃったよ」

「そ、そうか‥‥‥。そんなに俺たちと話すのが嫌なのかな?」

不安そうなライアとラン。


「う~ん、そういうわけじゃないと思うけど‥‥‥。あ、そうだ、本の話とかしたら打ち解けてくれるかもよ?」

「え、本?」

目を点にして問いかけるランに対し、ラルカは自信満々にうなずいた。

「あの子、本が大好きみたいだから! この学園に来たのも、本がたくさんあるからだって言ってたし」

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