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4 レイルとラルカのワンダホーパジャマパーティー

一つのベッドにごろんと寝転がる、レイルとラルカ。

あの後、レイルの部屋の前で「また明日」と言って二人は別れたのだが。

何故か、さあ寝ようという時間にラルカがパジャマに衣服を抱えた姿でレイルの部屋に侵入してきて、「パジャマパーティーやろ~!!」と言い出したのだ。

別に他の人の部屋で寝ることは校則違反でないし、レイルもわくわくしてきてしまったので、急きょ " レイルとラルカのワンダホ―パジャマパーティー " が開催されることになったのである。

ラルカがつけた名前に(ダサッ)と思うレイルだったが、友達の名誉のため、その言葉はそっと心の中にしまったのだった。


ともかく、二人一緒にベッドに寝転んだレイルとラルカは、ごろんとうつぶせになり、わくわくした瞳でお互いを見つめあった。

「ねえねえ、レイル! うち、レイルのことたくさん知りたい! レイルのこと、教えて!」

小声で伝えてくるラルカだが、気分が上がってしまっているのか、語尾が跳ね上がって聞こえる。

ふふふっと笑い、レイルは満面の笑みで答えた。

「もちろん! ラルカのことも教えてよねっ」

「もちのろ~ん!」

二人はお互いに顔を見合わせ、吹き出した。


レイルは自分のことについて語り始め、ラルカは嬉しそうにそれに聞き入った。

「‥‥‥でね、私、読書大好きだから、ここの学園は本がたくさんあるって聞いて、もう嬉しくって! それで、この学園に通うって決めたの」

ラルカは? という風に彼女を見れば、ラルカの表情が少し陰った。

「あ、嫌なら言わなくていいんだよ!」

慌ててフォローを入れてくれたレイル。

(こんなに優しい子に、隠し事なんてしたくない!)

そう思ったラルカは、ごろりと仰向けになり、天井を見つめながら話し出した。


「うちの家庭な、結構フクザツで‥‥‥。本当の母さんはもう死んじゃってて、新しい母さんが家にいるんよね。まあ‥‥‥なんて言えばいいんかな。‥‥‥新しい母さんは、うちのこと、嫌いみたいでな。面と向かって言われたわけじゃないけど、嫌がらせ的なのよくやってくるから、なんか察しちゃってさ」

悲しそうな顔で天井を眺めていたラルカの顔が歪む。

「‥‥‥‥‥‥やっぱ、嫌がらせじゃない、かも‥‥‥。父さんはほとんど家にいないから、新しい母さんはやりたい放題で。少しでも母さんの意思にそぐわない言葉とか言っちゃったら、夕食抜きは当たりまえ。酷いときはむち打ちだったかなぁ‥‥‥。うち、何度も泣きたくなったけど、泣くと母さんが怒っちゃうから」


震え始めたラルカの体を見て、レイルはラルカを優しく抱きしめた。

「‥‥‥辛かったね、ラルカ。ここには、そんな酷いことする人はいないよ。好きなだけ、泣いていいの。ラルカの好きなように、していいの」

どれだけ、我慢してきたのだろう。

どれほどこの子は、苦痛に耐えてきたのだろう。


レイルにしがみついて泣き始めたラルカの背をさすりながら、レイルはラルカの首元に視線を投げかけた。

ラルカの髪の毛は長いから、そこはちょうど髪の毛に隠れて見えなくなる場所なはずだ。

‥‥‥そこに、赤黒いアザがある。

レイルは痛々しく思いながら、ラルカの背を撫で続けたのだった。

―——ラルカの性格がその最低女のせいで歪まないでよかったな、と思いながら。





結局、その日はそのまま寝てしまい、目を覚まし時計を見たレイルとラルカは大慌てで支度をすることになってしまった。

「うわ~ん、遅刻しちゃう! ちゃんと目覚まし時計セットしとけばよかったぁぁ」

「今さら言ってもしょうがないよ、レイル! ほら、さっさと着替えて!」

ラルカにせかされ、自分の中での最速のスピードで着替えを終えたレイルは、ラルカと共に食堂へ向かった。

「うぅぅ、まだ食堂がやっていることを祈るのみ‥‥‥」


二人して恐る恐る食堂を覗き込むと‥‥‥大勢の生徒でにぎわっていた。

「‥‥‥え?」

食堂のど真ん中にある時計を見ると‥‥‥短針は6を指し、長針もまた6を指示していた。

つまり、六時半。

おかしい。先ほど部屋で見た時間は、七時二五分だったはず。

部屋から出て、五分で食堂についたとして―――1時間、時間がずれている?

「これって‥‥‥私の部屋にあった時計の時間、ずれてたってこと?」

レイルとラルカは顔を見合わせ‥‥‥深ぁいため息をついた。


その後、のんびりと食事を終えた二人は、それぞれ自分の部屋に戻った。

レイルが自室に入ると、布団の上の二人分の枕と、床に脱ぎ捨てられたパジャマが目に入ってきた。

「‥‥‥‥‥‥‥。ま、後で返せばいっか」

スルーして歯磨きを手早く終え、必要な教材などを鞄に詰め込む。

と、その時。

「あれ?」

何か、教材の隙間にきらりと光るものが見えた。

‥‥‥のだが、レイルが瞬きをしたその次の瞬間には、見えなくなっていた。

気のせいだろうと気にしないことに決めたレイルだったが、なぜか先ほどの光は脳裏に染みついて、離れることがなかったのだった。



それから五分ほど後に、寮の廊下でラルカと合流し、一緒に教室に向かったレイル。

今日こそ授業が始まるだろう、と意気込んでいたのだが‥‥‥悲しいことに、ここ一週間ほどは授業といった授業はないらしかった。

ただ、軽く魔法練習などはやるとのこと。

授業がないと聞きガッカリしたレイルだったが、魔法練習はやると聞いて気を取り直した。

(よし、魔法練習、がんばるぞ!)


だが‥‥‥レイルのやる気は空回りするばかり。

今日は学園探索と、この学園での目標を決めるだけらしい。

肩透かしを食らった気分だったが、学校探索は結構楽しそうだ。


(よぉぉし、その時にもう一度友達作りにチャレンジしよう!)


昨日はコテンパンにされて終わってしまったが、今日こそは!!

ギラッギラの目をして張り切るレイルを見て、一部の生徒が引いていた。

((( 怖っ‥‥‥‥‥ )))

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