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2 待ちに待った学園生活 1

ともかく、レイルは気を落としながらも、教室へ向かった。

一年Sクラスである。

教室のドアを開けてすごすごと席に座ると、ちょうど教師が入ってきた。

「みんなもう揃っているか? いや、まだ全員はいなさそうだな。よーし、まだ時間もあるし、九時までゆっくりしていていいぞ~」


今は八時五十分、つまり九時まであと十分。

これは友達作りのチャンス!

レイルはキランと目を光らせ、隣の女子生徒のほうをぐるっと向いた。

「あの、よかったら―――」

「ねーメイメイ、入学式ってどんなのかな~? 楽しみだね~!」

レイルの声は斜め前の席の生徒にかき消された。

斜め前の女子生徒が後ろを振り返り、今まさにレイルが話しかけようとした生徒に向かって話し始めたのだ。


「そうだね! ねえところでさ、あの男子かっこよくないっ?」

隣の女子生徒は、レイルが話しかけたことにも気づいていない様子だった。

撃沈したレイルは、気を取り直して後ろの席の女子生徒に話しかけることにした。

「ねえ、よかったら――――」

「‥‥‥‥‥‥‥」

無視されている‥‥‥と思いきや。

彼女の視線は本にそそがれていて、ただ単に本に熱中しているだけのよう。


小さくため息をついた時、ちょうど教師が手をたたいたので、慌てて視線を前に戻す。

「みんな揃ったようだなー! じゃあ、まずは自己紹介から始めよう! 誰からがいいかな‥‥‥」

「はい! 私が最初にやります!」

教師が視線をさまよわせていると、一人の女子生徒が手を上げた。

「おっ、じゃあまずは元気のいい君から! その後は、時計回りの順に自己紹介をしていこう!」


教師に許可を出され、女子生徒はガタンッと音を鳴らしながら立ち上がった。

「アン・タスペリーよ。趣味は人と話すこと、あとは‥‥‥そうね、特技は魔法。この学園に入ったのも、魔法の授業を受けたくて来たわ」

ざわっと周りが騒がしくなる。

レイルも驚いたように目を見開いていた。

「タスペリーって‥‥‥伯爵家じゃんか」

「すげえ‥‥‥」

そう。タスペリー家は、伯爵家の中でもトップクラスの、国内でかなりの権力を握っている家紋だ。


ざわざわと話している生徒たちは、嬉しそうな者もいれば、表情が暗い者もいる。

当然だろう。

アンの家紋がタスペリー家ということは、アンと仲良くすればその権力のおこぼれがもらえるかもしれない。

‥‥‥‥だが。

もし、アンの気に食わないことをしてしまったら?

消されるだろう。

文字通り、社会的に。

つまり、今能天気に笑っている者は、あまり深く考えておらず、反対に表情をこわばらせている者は、きちんと物事を考えているのだろう。


「はい、タスペリーさんありがとう。では次、君の番だ」

「は、はい‥‥‥。僕の名前はラン。ただの平民です‥‥‥。特技は記憶すること、です‥‥‥」

オドオドと自己紹介を終えた少年は、ぺこりと頭を下げて席に着いた。

そうして、自己紹介は順調に進んでいった。


「俺はライア・アズラン。特技は攻撃魔法だ。 趣味は、そうだな。魔法勝負をすることだ!」


「私はベル・ルシアン。趣味は生け花です。特技は特にないわ」


「うちはラルカ! 特技は運動だ! 平民だから、マナーとかあんまりわかんないけど、よろしくな!」


レイルはクラスメイトの自己紹介を聞きながら、ふと疑問を持った。

なぜこれほどまでに名門の貴族たちが集まっているのだろうか?

考えていると、とうとうレイルの番になった。

「レイル・ラミレスです。趣味は読書、特技は特にありません。どうぞよろしく」

そう言って着席した自分にまさか注目が集まっているなんて、レイルは思うよしもないのだった。



全ての生徒が自己紹介を終え、教師が話し出す。

()()()()()()()だな! 自己紹介がうまいぞ! あ、ちなみに俺はドイルだ。俺は平民だが、貴族も平民も同じように扱わせてもらうぞ。これから一年よろしくな」

‥‥‥さすがSクラスとは、どういう意味なのだろう?

Sクラスだけ、特別なのだろうか?


レイルが考え込んでいると、他の生徒が手を上げてドイルに質問した。

「先生、さすがSクラスってどういうことなんですか?」

「あぁ、お前たちは知らないのか。この学園はな、優秀さでクラスが決まるんだ。ちなみにSは最も優秀なクラス! そして俺は最も優秀なクラスの担任だから、最も優秀な教師ってわけだ!」

‥‥‥後半からドイルの自慢のようなものも含まれていた気がするものの、レイルはさらっとスルーした。

というか、クラス全員スルーしていた。


まあともかく、これで疑問は解消された。

このクラスにやけに位の高い貴族たちが集まっていたのは、このクラスが一番優秀だったからなのだろう。

名門の貴族ということは、幼いころからの教育で頭脳が優れているはずだから。

疑問が消えてスッキリしていると、近くの男子がドイルに疑問をぶつけた。

「せんせー、俺別に頭よくないけど、なんでSなんですかー?」


「んー? 俺はSクラスが " 頭のいい奴らが集まっているクラス " だとは一言も言ってないぞ? ただ " 最も優秀な者が集まるクラス " と言っただけだ」

と、いうことは‥‥‥‥‥‥まさか。

「この学園のクラスは優秀さで決まるといったな。別に、勉学だけ優秀な奴らがこのクラスに集まっているわけじゃあない。スポーツ、魔法、勉学。他にも、あらゆる分野で才能を持つ者たちが集まるクラスなんだよ、ここは。ちなみにお前は、面接のときに魔法の扱いが優れていたから選ばれたわけだな」

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