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1 初めての王都

新シリーズです。

よろしくお願いします!

「ここが王都‥‥‥!」

青い瞳を大きくさせ、興奮したように馬車の窓から外を眺める少女。


―――レイル・ラミレス、十二歳。

今、私は。夢にまで見た王都にいます‥‥‥‥!


△▼△


「お母様! 私、王都の学園に行きたいです!」

頬を上気させて母・ラリアを見つめるレイルに、ラリアは意外そうな表情で言った。

「あら、貴方はオーク学園に行くって言ってなかった?」


「確かにそうなのですが、この前、王都のラデン学園を紹介している本を読んで、思ったのです。私が通うべき学園は、ここ一択だと! しかも、お父様がご卒業された学園はラデン学園なのでしょう? それならば、私が行っても問題はないですよねっ?」

明らかに興奮した娘の姿を見て、ラリアは寂しさを覚えた。

「レイル‥‥‥ラデン学園はここから遠いから、通うとなると寮に入ることになってしまうわ。それでも貴方は行きたいの?」

ラリアは、できればレイルに " それなら行きません " と答えてほしかった。

可愛い娘と離れて暮らすのは寂しいのだ。


「はい、それでも行きたいです!」

目を輝かせ、頬に熱を持たせて嬉しそうに言う娘の顔を、ラリアはじっと見つめた。

――――レイルもそろそろ、世界を知るべきかもしれない。

過保護な私たち(両親)がいたから、レイルは領地から出るのは許されなかった。

でも、これをきっかけに外の世界について知ってもらうのも、ありかもしれない‥‥‥と、ラリアは思った。


ラリアは困ったような笑みを浮かべ、最愛の娘を抱きしめた。

「もちろん、いいわよ」

なかなか返事が返ってこず、不安そうにラリアを見ていたレイルは、ぱっと顔を輝かせた。

「お母様、ありがとう!!」



その後レイルはラデン学園の入学テストを受け、ラリアと一緒に面接も受け―――無事、受かった。

こうして、レイルは王都の学園―――ラデン学園に通うこととなったのだ。


△▼△


念願のラデン学園に通えることが決まり、レイルは浮かれに浮かれまくっていた。

スキップをしながら自室へ戻り、さっそく学園へ行く準備を始めたレイル。

学園に通い始めるのは四月。今はまだ二月。

少々早すぎる気もするが‥‥‥、レイルは鼻歌を歌っていてご機嫌なので、別にいいのかもしれない。


――――そうして迎えた、入学式の日。

「レイル、必要なものは全部持った? 忘れ物はない? 気を付けていくのよ」

「レイルちゃ~ん、早く帰ってきてね~!!」

過保護な両親たちに見送られて、レイルは長年暮らしていた家を出た。





「王都はこんな感じなのね‥‥‥! 人がいっぱい!」

はしゃぎながら外を眺めていると、遠くにとても大きな建物が見えた。

目を凝らすと、門のところに " ラデン学園 " と書いてある‥‥‥ような気がする。

レイルは読書が大好きなため、昔から活字を読みまくっていたので、少しばかり目が悪いのだ。

その建物に馬車が近づいていくと、だんだん先ほどはぼんやりしていた文字がはっきりと見えるようになった。

間違いない。

大きく、門に横に " ラデン学園 " と書かれている。


「これが、ラデン学園‥‥‥! 写真で見るより、ずっとずっと大きいわ!」

近づくにつれ、学生らしき人影も見えるようになってくる。

見たところ通りを歩いているのは、平民が多いようだ。

同じ制服を着ているので、新入生で間違いないだろう。

ちなみに、レイルはこれでも公爵令嬢なのと、屋敷からラデン学園が遠いので、馬車での登校である。


門の前に馬車が止められ、レイルは従者の手を取って馬車から飛び降りた。

「では、私はこれで」

屋敷から付いてきてくれた従者に手を振ると、レイルは学園に向かって歩き出したのだった。





「新入生の皆さんは、事前に配られた紙を頼りに自分の教室まで行ってください。あぁ、寮の方はまず荷物を自室に置いてから行かれるように」

校門の前にいた教師の言葉通り、レイルは鞄から自分の寮番号が書いてある紙を取り出し、寮に向かった。

「102号室‥‥‥‥‥‥ここね!」

目的の部屋の前まで来ると、レイルは一旦息を大きく吸った。

この中には、レイルのルームメイトがいるはずなのだ。


勢いよくドアを開き、部屋に足を踏み入れる。

「失礼しますっ! 同じく102号室の‥‥‥‥‥‥‥‥‥あ、あれ?」

部屋の中を見渡すが、誰もいない。

しかも、ベッドも一つだけである。

‥‥‥これは、一つのベッドでルームメイトと一緒に寝ろということなのだろうか?

いや、そんなはずはないだろうと、鞄から寮について詳しく書かれた紙を取り出し、じっくりと読み進める。


「あ、あ――――――――っ!」

つい大声で叫んでしまったレイルは、誰にも聞かれてないよね!? と周りを見渡し―――凍り付いた。

レイルは部屋に入ってからドアを閉めていない。

つまり―――レイルの大声は、駄々洩れであった。

「何よ、うるさいわね!」

隣の部屋の生徒が顔を出し、レイルに不満を述べる。


「すすすす、すみませんでした――――――っ!!」


レイルは平謝りをすると、大慌てでドアを閉めたのだった。

「ひゃあ~、やっちゃったよ‥‥‥‥」

最悪のスタートダッシュを切ってしまった。

だが、一番最悪なのは―――――。

「ルームメイトがいないって、どういうことなのよぉぉ!!」

そう、実は、寮についての説明のプリントに、小さく書いてあったのだ。


" 一人用の部屋もあります。その場合はベッドは一つだけしかありませんし、ルームメイトもいません。下のリンクに一人部屋の寮番号を貼っておくので、一人部屋がよかったり、一人部屋に不満がある場合は、3月29日までに電話をしてください。それ以降の変更は受け付けられません " と。


まあ、つまり‥‥‥レイルの確認不足である。

だが、ルームメイトを非常に楽しみにしていたレイルにとっては、かなり残念な結果になってしまったのだった。

閲覧ありがとうございました。

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