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ラスボスを闇落ちさせた女子生徒に転生してしまった

 乙女ゲームくわしくないので、某女神が転生する系のシリーズを参考にしました。


「これ‥ハルカさんに」


(え、)


 目の前の少年に手紙を渡されている。


(ハルカって誰?)


《はあ、いくら顔が良くたって、こいつ根暗じゃん。この私につり合うって思い上がってるとか? ウケるー》


(はい?)



 なぜか心にありえない意見がよぎる。


 私の体は、手紙を受け取り、

《このハルカ様につり合うのはタイガ君くらいよ》


 破こうとした。


(え、体が勝手に動く)


 ダメって気持ちを高めたら。何とか手が止まる。


 窓ガラスには全く知らない女子高生の姿が映っていた。

(なにこれ、転生? でも日本だよね)


 


 どうやらこの子の意識は乗っ取れるみたいだ。


(この子の記憶は探れたりするのかな?)



 名前は‥灰森遥香。16歳で虹ヶ坂高校の二年生。


(ん? 虹ヶ坂高校‥?)



 ってそれ昔夢中になったゲームの高校じゃん!

 ってことはやっぱり転生じゃん。



 しかしよりにもよって、脇役のハルカ?


 死亡フラグ確定の。



 大体このゲーム作られたのは確か90年代。

 超家庭的コンピューターの時代ですよ。


 分岐なんてゲーム序盤に決まって、四分の二でバッドエンド。

 まあハルカはどのエンディングでもダメだけど。


 シナリオが人気だっただけで、ゲームバランスがおかしく、モブ敵は強いわりに倒して得られる資金がスズメの涙。

 武器とか買うために同じマップをどれだけウロウロしたことか。


(せめてあの会社でも次のシリーズだったら、攻略が簡単なのに)



 次の仮面シリーズが発売された当初、コアなファンは随分けなしたものだった。

 ライトユーザーに媚びた、と。


 しかし今いるのは、その前の作品。


 あきらめるしかなかった。



「あ、ハルカさん?」



 少年の声で頭がすっきりする。

 そして一番大切なことを思い出した。


(今、振ろうとしていたアイダ君って‥ラスボスの間透?)


 血の気がサアッと引く。



 彼が闇落ちして学園を魔界に引きずりこむきっかけが‥ハルカに振られたことだった。


 そしてハルカがどのルートでも死亡確定なのは、彼をこっぴどく振ったからだった。



「やっばい」


 手の中を見る。まだ手紙はチョコッとしか破られていない。


「 ―――あーーー良かったぁ!」



 私は彼の手を取る。


「つき合いましょう!」



「え、まだ読んでないよね?」

 アイダ君は困惑している。


 そりゃまあ。しょうがないか。


「その、アイダ君カッコいいし、勉強もできるし、素敵だなって」


 嘘はついていない。


 彼の見た目を考えたのはプロのイラストレイターさんだ、顔面とスタイルは整っている。

 ラスボスになるにはバカでは無理だろうし。


 何だって良い、こやつの闇落ちさえ防げれば。



 ついでに私は前世では味わえなかったスクールラブを満喫できそうだし♪



「アイダ君、一緒に帰ろう」


 これが放課後デートかってドキドキする。

「駅ビル寄ろうよ」


 周りに何組か高校生カップルがいて、こそばゆい。


「本屋に行かないか、新刊を探したいんだ」

 アイダ君も楽しそう。


「もちろん♡」



 そして向かった本屋で私の目に飛びこんだのは‥


「ほうっ、90年代のジャン〇!」

「キャン、90年代のア〇メージュ」

「グフッ、90年代のファン〇ード」


 やばい、お小づかいなくなる‥


(ゲームに転生だけかと思ったら、タイムスリップまで楽しめちゃったぜ)

 メチャクチャお得じゃん。



「じゃあバイバイ」

 本屋から出た私は恋人を振り切って、速攻で家に帰る。


 カバンの中のお宝を確認しなくちゃね!



 


「あの、ハルカさん‥ 今日も一緒に帰って良いかい?」

 次の日はアイダ君から誘われちゃった♪


「いいよ、あ、ウチくる?」


 アイダ君はちょっとビクッとしたけど、うなずいてくれた。




「ハルカさん‥これただ本を読んでいるだけだよね?」

「ん? この雑誌を読んで、どの作品が好きとか感想を教えて欲しいんだけど」


 アイダ君には昨日買ったジャン〇を読ませただけなのに、何が不満なのだろう。


「それだけなんだなって‥」

「つまらなかった? じゃあ‥6時になったら、テレ東でアニメ始まるから見てく?」


 アイダ君は目をそらした。


「いい、もう帰るね」

「うん、じゃあまた明日」


 90年代‥それまでアニメは子供の観るものだった。

 テレビ局では主に小学生向けの作品が一週間に1・2作品作られるくらいで、水・土・日とアニメを放送するフジテレビが視聴率のトップを走っていた。



 しかし潜在的なファンは多いと見積もったテレ東が、中・高生向けの作品を大量生産しだしたのだ。

 平日月曜日から金曜日まで六時になれば毎日アニメが見られるのは、当時のオタクたちにとっては画期的な出来事であった。


 テレ東でアニメバブルが膨れ上がり、フジが凋落するのが90年代後半である。

 


 今は94年。

 〇ヴァンゲリオンは放送前だから、まだ粗製乱造の時代。



(アイダ君を誘うのは早すぎたのかな?)


 〇ヴァの放送が始まったのは、95年だったはず。


(あれ、来年は色々あった気がするな~ 何だっけ)




 土曜日。

 この時代は土曜も学校がある。



「アイダ君、遊びに行かない? 雑誌が豊富な図書館の情報をゲットしたんだけど」

「ごめんねハルカさん、週末はやりたいことがあって」


 あれ、向こうから告白して来たのに、最近若干避けられている?


 まあ、一人で行動できるのなら私にだってやりたいことはある。




 そう、ヒロインと攻略対象者のチェックですよ!


 他のクラスをちょこちょこのぞくと、いた。


 爽やかイケメンの赤城君、知的メガネの青山君、悪ぶっている黄金沢君、そしてヒロインの綿雪真白ちゃんだぁ!


 キャラデザさんの個性で、そこまでキラキラしたイケメンではないけれど、味があってそれも良いのだ♡



(真白ちゃん、誰が好みなんだろう)


 ドキドキしながら後を付ける。


「何やってるんだお前」


 ひゃあ! いきなり声をかけてきたのは隠しキャラの黒宮君ではありませんか!


「綿雪に何かするつもりじゃないだろうな」


 ‥‥は、一瞬意識が飛んだぜ。



 黒宮が、あの人間不信の黒宮が、真白ちゃんの心配をしているだと?


 


 前世の私含め、ファンイチ推しのカップリングが、黒×白だったのよ!

 意識が飛んだっておかしくないぜ。



「おいお前、聞いているのか?」


 不審がる黒宮に、私は最高の(悪い)笑顔を向けた。


「黒宮君、一緒に剣道部に行こう」

「は?」


 問答無用。私は黒宮を引きずって練習場に連れて行く。


「はぁ? お前何なんだよ」


 ムッとする黒宮に私はささやく。


「大人しく部活に参加しないと、綿雪さんにあなたの思いをぶちまけるけど」



 黒宮の顔が引きつった。

「な‥何誤解しているんだ? あんたの思い違いだろ」


 その割には剣道部の練習場までの到着に成功。



「おう、黒宮。今日は珍しいな」

 顧問の岡田先生に黒宮君を引き渡す。


「いやー 彼、部活に戻りたいそうです」

 

 黒宮には「部活に参加するだけでいいから」とつぶやいておく。



 なぜなら部活に参加するだけで、同じ部活の真白ちゃんとはほぼ自動的に好感度が上がるのだ。


 たとえゲームが開始しなくとも、この二人の関係性は深めて欲しい。

 


 ゲーム序盤の準備期間に誰と仲良くなるかで分岐が決まる。

 黒宮は一週目ではヒロインと出会えないのだ。





「ハルカさん、黒宮君とはどういった関係なのかな」


 月曜日、昼休みにアイダ君から問い詰められてしまった。


 情報が早すぎる! さすが魔界の王になろうとしているだけあるな


「え、ただの知り合いだよ。部活に無理やり連れて行っただけだし」

「その割には妙に親しかったみたいだね。彼にはずっと笑顔を向けていたようだけど」


 情報細かっ。ちょっと怖いわ。


「僕にはそんなおびえた顔をするんだね」


 アイダ君の目がスッと細められた。



 味があってそれもまた良い。



(ハフウ‥今私、アイダ君の彼女なんだよね)


「一緒にご飯食べよ」

 誘ってみたら、ドロドロのオーラが少し和らいだ。




    ****




 そして94年秋。


 学園は魔界に引きずり込まれていた。


「なー んー でー」


 え、私頑張ったよね。



 毎日学校でお弁当食べたり一緒に帰ったりしたし、夏休みだって一緒に秋葉原に探検に出かけたし。無理やりアニメイ〇や虎の〇デートだってした。



 そりゃ人混みを見たアイダ君は「愚民どもが」とか何とかつぶやいていたように聞こえたけどさ。


 冗談だと思ったのに‥



(夏コミに一人で行ったのがマズかったのかな?)



 とにかく今、学園の敷地は外界と隔絶されている。

 生徒たちはパニックにおちいっていた。


 スピーカーからはアイダ君の淡々とした犯行声明が流れてくる。


『君たちがこの魔界から抜け出すには、僕の用意した試練を乗り越えなければならない』


 しかし放送室にアイダ君はいない。


 私はスポーツバッグに身の回りの物をつっこんで、剣道部に向かう。

 案の定そこには真白ちゃんがいた。黒宮も一緒だ。


(よおっし♪)

 二人が一緒に冒険始めるのを、私はガッツポーズと共に見守った。



 そうここがストーリーの分岐だ。


 序盤で一番仲良くなったキャラにヒロインは誘われる。

 そしてそれぞれ脱出するルートが違うのだ。


 アイダ君の仕組んだダンジョンを攻略しながら、恋愛イベントをこなしてエンディングに向かう。




 私はコッソリ二人の後をつけて魔界に降り立った。


 黒宮が隠しキャラなのは、彼だけ他の三人と違って正規ルートを進まない。


 選ぶのは最難関の裏ルート。



「まさかこの道を選ぶとは」


 はい、ラスボスの登場ですよ。


「僕から逃げられるとでも?」


 無理だよね。知ってる。



「アイダ君」


 私は彼らの前に飛び出した。


 タイミングが良かったのか悪かったのか。


 それはちょうどアイダ君が黒宮に向って一撃を放ったタイミングだった。



 つまり命中したのは私。


「ぎゃあああああ」


 痛い痛い痛い痛い痛い。

 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。


 身体が痛みで支配される。

 精神が壊れる。





 気がついた時には、私の体は大量のチューブにつながれていた。


「ハルカ、良かった気がついたんだね。実権は成功だ」


 はい? 実権は成功?


「アイダ君、それどういう意味」


「ああ、ハルカ、君を攻撃してしまった僕を許しておくれ。もうこんなことが起きないように、君の体を魔物の肉体と融合させてもらった」



 ‥ はい?



 私は両腕を見る。


 何か大蛇っぽい入れ墨されとる。

 服は単純な布切れだし、胸も前よりおっきくない?



 ‥‥‥ 私は自分が人間辞めていることを悟った。




 私はため息をつくと、一番の懸念事項をたずねる。


「みんなはどうなったの?」


「君は優しいね。君が眠っている間にここまでたどり着いた生徒がいたから、褒美に全員帰してやったよ。君以外は」


「そう、良かった」


 それなら良い。犠牲が私一人で済んだのなら。

 それに今の私は生きている。


「で、誰? そのたどり着いた猛者は」

「ああ、綿雪君と黒宮だね。君には残念だったかもしれないが、あの二人は随分良い雰囲気だったよ」

「本当? っしゃあ!」


 私の望みは成就された。

 もう思い残すことは何もない☆




「でももう君は元の世界には帰れない。僕が帰さないからね」

「そっか、冬コミには行けないんだ」


 世の中諦めることも必要だ。


「えっと‥時々戻るだけなら許可するけど」



 え?


 それアリですか?


「え、じゃあイベント参加とかゲーム機買うとかは」

「ああ構わない。後‥君のためにテレビも見られるようにしておいた。まだテレ東一局だけだが」



「ええ~~~ マジ? じゃあここで永遠にノンビリオタクライフができるってこと?」

「そうだね」


「キャァ~ アイダ様! 魔界神!」


「えっと‥ 僕と二人きりで過ごすことには問題はないのかい?」

「? おしゃべりの相手くらいなら、魔物がいっぱいいますよね」

「そうだが、それでいいのか?」




 いや、想定していたバッドエンドにくらべたらほぼほぼ天国なのですが。

 

 


 そして私の魔界生活が始まる。


 テレビが見られたのは良かった。

 向こうの世界のニュースが伝わったから。




    ****




 95年1月、この世界でも阪神淡路大震災が起こった。


 現実世界をモデルにしたゲームだから、ほとんど同じ歴史をたどるのだろう。


「アイダ君、お願い助けて!」


 彼の力で、瓦礫に埋もれた生存者を救出する。

 全体の被害者から見たらたった300人に過ぎない。


(それでも助けられた)




 そして思い出す。

 同じ年に起こった大事件を。



「アイダ君、あいつらやっつけて!」


 富士山の麓にあった宗教施設は建物ごと魔界に召喚する。

 テロ事件は未然に防げた。


(警察に証拠物件を送り付けて、入院している被害者には完全回復薬を飲ませたからアフターケアもバッチリだね)


 信者たちは全員アイダ君に怯えている。

(後継団体さえ作らせないぜ)



 そして私はこれから起こりえる大事件をチェックしつつ、ゲーム機『遊駅』を手に入れネット環境を整えてもらった。



「んー、アイダ君愛してる!」


 ほっぺにチューすると、アイダ君に手首をつかまれてしまった。


「いい加減名前で呼んでよ、ハルカ」


 あら目がギラギラしている。



「そそそうだね、ト、トオル君」

 めっちゃ恥ずかしい。


 あと頑張って呼んだから手を離して欲しいな。



「これだけ君の願いをかなえたのだから、今度は君が対価を払う番だよ」


「対価? お金はあんまり持っていないなー」

 汗がダラダラ出る。


「ふふ‥ 対価はもちろん君で」


 はい、やっぱりそっちですよね。




 彼の顔が近づく。距離はすぐゼロになった。


 アイダは多分〇ヴァにハマる。

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