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コリンの父は酒瓶を週に一本だけ水に割ってゆっくりと飲み、酒に溺れる毎日を送りながら売り子のコリンに自身の魔道具を売り回すよう頼むのでした。


「コリン、昨日売れなかった分をしっかり客に買って貰え。いいな?売れなかったら分かっているだろうな?」

「はっ…はぃぃっ!」

「よし…夕方まで帰ってくるな!昼の弁当持って、とっとと行きやがれ!」


家から放り出されるように品物を入れた箱と弁当と一緒にコリンも外に追い出される。

こんな生活がもう二年も過ごしているのに父の魔道具は売れる事もなければ店に入っても見るだけで帰っていく客も多い、

二年前隣に出来たばかりの魔道具屋の売り上げが伸びつつあって安全性もあることから徐々に父の魔道具は売れなくなってしまった。

この時にも母は長旅に行くと言って二年も帰ってきていない


父はこの先の生活も苦しいと分かっていた…客が来ない間は裏で畑作業をして作物の確認をしつつ収穫出来そうな物は、採って知り合いの商人の方に委託販売して僅かに儲け貯めつつ消費していった。


「コリンの奴…そろそろ8歳だしな……誕生日の贈り物用意出来ないな」

「おいおい、また売れてなかったのか?しゃーねぇな!お前さんのガキの為に買っておいてやるよ、昔からの仲だろうが」


隣の鍛冶屋の爺さんが父の独り言を聞いていて割り込んで来た。

滅多に買わない爺さんだが彼の魔道具を買い取って分解していた。


「相変わらずお前さんの魔道具は危険だな、新しい魔道具屋は魔石との変換効率が向上して安定性も良くなっている。この火付け装置、俺のところでしか使えない火力だ」

「確かに…俺の作る魔道具は全部役に立ちそうな物が少ないな…」

「ちげぇ、素人に向かない物ばかりだ。お前さんの魔道具をよく知っている玄人連中にしか扱えない危険な物ばかりだ。10 年前から何も変わりやしねぇ!」


魔道具を分解しながら余分な部分は炉に入れて溶かし魔石部分だけを保管箱に入れた。


「しっかし…お前さんの使う魔石。何故にこれ程桁違いの出力を出すのが多いのだね?」

「妻が腕利きの傭兵でして…御土産帰りに大量の魔石を」

「成る程…ん?妻の名前は何じゃったか?」

「 爺さん、俺達の名前は明かせないと約束したじゃないか!?」

「おぉそうだった。独眼騎士ブリュガンデューク、大陸渡り傭兵団長オレカの二人か」

「 しっ!大声で言うな、俺の片眼気にしてるんだ」


そんな毎度の会話の外、コリンは売り回っているけれど一つも売れず。

使用時の安全性を気にする人達ばかりであった。


そしてコリンは裏路地に入り込むと狐の獣人男性がコリンを待ち侘びていたかのように樽の上で座っている。


「コリン、ウルティメティックスキルの練習書い?」

「そうだよ~兄さんお金貸して」

「いやー兄さん助かっちゃうな〜」


懐から金貨10枚程入った小袋をコリンに渡していた。

この世の通貨価値は銅から銀に金へ最後に魔結晶合金マグナニスタ

コリンの住まう王国ではマグナニスタが固有最上位通貨である。

そのマグナニスタは地底の溶岩を含んだ魔結晶鉱石が原料とされており、非常に価値があるものとなってはいるものの他国では薬品の材料として取引されている。


「よし!20枚になったよ」

「おー、休憩挟もうか!昼も近いしね」


コリンと狐男は昼食を摂ることに…コリンの弁当は相変わらずのポテトマッシュとベーコンだけ、狐男は持ち込んだメシを分け与えていた。


「フレストサラダと地獄龍の目玉焼きだ。」

「兄さんって何処かの領主の息子さんなのかな?」

「そんなことはない、知り合いのツテがたまたま宮廷料理人だっただけだ」


コリンは不思議そうに彼を見つめた後、再びスキルを使って…金貨を40枚に増やしていた。


「兄さん、ありがとう」

「んじゃ25枚は貰っていきな、全額貰ってもこっちが困るよ」

「そんな、毎日ここに居てくれるだけでも練習になってたのに」

「コリン…僕はいつでも此処に来れる訳では無いんだ……悪い噂は聞いたことあるだろう?」


最近の騒動で獣人と人間との間で体格差による衝突事故で人間側で死者が出た事で少し問題となっていた。

次第に獣人の集落は人間の統治圏内に取り込まれる形でほぼ消えつつある。

例外として勲を挙げた者等は、貴族社会で認められその配下もまた生き残る。

噂程度には獣人だけで構成された貴族が居るとは聞いたことがある。

ソレが彼だとはまだ思ってなかっただけであった…


コリンと彼は分けられた金貨を取って別れ離れていった。


夕方になるまで自分の固有スキルを再度使うと、手持ちの金貨が25枚から50枚へ…100に増えていた。

しかしその力を連続して使おうにも非常に疲れるのだ。


「おい!」


遠くで隣町の冒険者とここの人とで揉め事が起きていた。

その様子を探るべく認識出来るところまで近付くと


「交代の時間だ!」

「はいぁ」

「全く…依頼を受けた者がこんなに痩せこけた者達だとは」


依頼人に扱かれる様子であった。

コリンはその様子を見届けて家の方へと帰って中央通りに到着。


そこには思い出の噴水場、今は壊れて水が出ないが4歳頃の同い年との友達と一緒に冒険者になろうと約束した場所だった。

今の彼はどうしているのだろうと思う…


「ただいま父さん」

「おお…稼いでこれたか……金貨100枚!?誰かに会ったんかい!?」

「 狐のお兄さんに」

「くぁー!?毎月支援金くれているあの貴族の息子か!」


話しの先が見えないが多分こうだろう、コリンが会った狐の男はこの国でかなりの地位のある獣人貴族家系の息子さん、その者が忍びでこの町に来ていて店の経営主に支援金を渡している。

毎月の税収は銀貨20枚、金貨1枚と同じ価格帯にするには銀貨は100枚も必要とするので、1枚だけでもかなりのお釣りが来るのだ。


「しっかしコリン、何か多くないか?毎月金貨2枚だったのだぞ?」

「実は…ウルティメティックスキルの練習を彼としていたら発動しちゃって」

「何と!?コリンも使える歳になったかー!嬉しい…嬉しいよ!」


涙の量も多く金貨袋を開けずにそのままコリンに預けた父親


「 その能力は自分の為に使え、変に他の人に預けてはならんよ!これは自分で増やしたんだろ?」

「は…はい!」

「 もうこの店に置いておくには惜しい、そうだ。お友達が居るかもしれないクーデナ街に行ったらどうだ?」


その街は流れ付いた新しい住民から魔族の襲撃で崩壊したと聞いたから、まず居ないとコリンは考えた。

コリンは首を横に振って夕飯の仕度を始める。


それから数時間して二人は寝室へと行って今日の時間を過ごし、次の夜明けを迎えるが…



自分達の町で新体制派と旧体制派もとい王国正規軍との衝突が発生していた。


「住民の避難を急げ!」

「来たぞ反乱軍だ!」


新体制派は住民の殆どを捕まえて領地に連れ去っていく、王国軍は近衛兵団に住民を引き渡しながら安全な場所へと移送している。

そんな激戦区の中心にあったコリンの住処では魔石の共鳴による大爆発が起きる…それは隣の魔道具屋も同じ事が発生した。


「コリン!無事か!?」

「えっ…はい、大丈夫です…」


父親が瓦礫を掻き分けてやって来た。

しかし次に崩れた角材で父の腹を突き破っていた。


「父さん…」


その時、頭の中に奇妙な記憶が流れ込んで来た。

激しい頭痛が収まると、先ずは瓦礫の山から抜け出して金貨袋の50枚入りを持っていく

後のは持ち込まないとしてそのまま町外れの北口へ向けて走り始める。


「オラフグラードとは違うが、状況は似てる…そしてあの門は」


古い知り合いと最後に別れた場所である。

そこの記憶が無かったのだがようやく思い出した。

そうウルティメティックスキルが互いに判明した記憶の時間。


<重力操作かぁ…いいなぁ>

<コリン、そう言うお前は金銭出力。金に関してはずば抜けているだろ?8歳になったらテオの街で再会しよう>


また会う約束をして別れた北門という場所だ。

コリンはそのまま北門を抜けると、その後ろでは新旧体制の兵共が白兵戦を繰り広げているのだった。


暫く進んで森に入ると砂利道に変わりつつある


「道なりに進め場テオに着くな…よし…金を用意するか」


スキルで所持金50枚金貨を100枚に増やし、更に200枚と…400枚へ

ただ持ち運びが辛いのでどうにかならないものかと悩んでいたら空間の裂け目が出来ている。


「ここに捨てるか…でも落ちたら不味そうだし…早く閉じないかな」


そう思っている矢先に空間は閉じられる。

だんまりして、また開かないかと思い込んだら空間が裂けた。


「…ひょっとして…これが空間収納か?うわっ…」


試しに手を突っ込んだらヌメヌメとした空間が肌で感じ取れた。

金袋を投げ込むと、空間の時間が遅れているのも相まって入り切るのに時間が掛かっている。


「……いつ入り切るんだろ」


30分後…


100金貨を手元に持って、それ以外を空間に収納した。

個人所持金所持確認用魔導板で確認すると…しっかり空間内金銭も認識されている。


「問題なさそうだし…テオの街に出発だ」

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