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奇妙な夢

作者: 真波

興味を持ってくださりありがとうございます。22時頃に更新します。

私はどうしようもなく何か書かずにはいられない人間ですが、書いたものを誰かに読んでもらえることはやはり嬉しいものです。良ければ楽しんでいってください。

 夢の中で、声が聞こえた。

 僕は手のひらからエネルギー波を出そうと繰り返し構えたり、エネルギーを溜めようとして両の拳を強く握って踏ん張ったり、強くなるために腹筋や腕立て伏せをしたりしてきたけど、そういった行為は自分が特別な存在になりたいからだった。

 声は言った。

 ――身体から垂れ流しになっている生命エネルギーを肉体にとどめてコントロールすることで、超人的な  肉体を得ることができる。

 僕はわくわくして続きを待った。

 声は続けた。

 ――それは嘘だ。生命エネルギーなどない。

 僕は、身体を強張らせた。そんな――。

 ――でも、きみには別の力の可能性がある。それは、肉体の増強のような同次元内での強化のようなチャチなものではない。生命エネルギーで岩山を破壊できるような力に憧れる気持ちは分かるが、きみは札束で殴ってくる相手に札の詰まったアタッシュケースで殴り返すことに憧れるのか? きみはその程度の、ありきたりな俗物じゃないだろう? 同次元での大小・強弱などという些事に心囚われる愚鈍な人間ではないだろう?

 ――もう一度言おう。きみには別の力の可能性がある。君の人生そのものを変える力だ。僕は一度落胆したものの、声のその言葉に再び期待を募らせた。

 ――想念は通常、垂れ流しになっている。熱い。寒い。眠い。空腹。満腹。暇。これらは「今」や「私は」という言葉を省略しているが、実際にはその意味で発せられている。この垂れ流しを止めて、保持する能力、それが真の「思考」だ。垂れ流しを止めるには、「今」ということと、「私」ということを取り除かなければならない。そうしたとき、きみは、君という視点を超越する。

 ――これを実行できた者は、まだこの世界に一人も存在しない。さあ、超越者への扉はすぐそこに開かれている。

 僕は息をのんだ。

 ――早速始めてみようか。君は今、前歯の裏に舌を当てている。ここから君という視点を超越させるのだ。

 声の主と思しき存在が、手を叩く音がした。すると、ベッドの上で眠っている僕が見えた。僕は僕を抜け出したのだろうか。

 ――違う。自分自身を俯瞰的に見ているだけで、「私」を取り除いたなどと、甚だしい愚か者の勘違いだ。ベッドの上で眠っているきみを見ている「きみ」がいるだろう。それをさっさとやめてしまいなさい。

 僕は分からない。分からない。

 ――無理か。

 僕は声の主が急に冷めた様子になったのを感じ取り、待ってほしいと言おうとする。言おうとして、言おうとして――。

 

 僕は気づけば街を歩いている。見慣れた故郷の街のようで、そうではない。

 故郷のように田畑があり、でも、どこかで見たことがあるような住宅街があり、どこかで見たことがあるようなビルがある。

 ふと、世界が粒子のように煌めく。世界がきらきらと揺らめきながら崩れていく。

 崩壊が始まったのだと気づく。家も、ビルも、道路も、森も、山も、大地も、きらきら、きらきら崩れていく。

 


 ついには地球がなくなって、ここは宇宙空間で、なのにまだ崩壊は終わっていないと直感する。

 

 視界がだんだんと狭くなっていく。崩壊ではなく、消滅が起きていると気づく。

 そういえば、さっきから僕はどこにいる?

 

 視界がさらに閉じていく。僕は…僕はここにいる! 僕はここにいる! 消える……消える……消える! 消える! 

 ーー消えた。

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