第37話『紫電の星盾』
「レイラっ!!」
何が起きた……? 何が、起きた……?
今の氷の剣は魔法だ、ぼくの魔法だ、触れたものを凍らせて砕く魔剣だ。
なんで、なんで……どうして……?
「なんで……」
「ハハッ、ハハハハハハ!!」
気を失ったはずのシノブが、立ち上がって高笑いを上げる。
赤い瞳がギョロリとぼくたちを睨み、口角が吊り上がる。
その歪な笑顔に、本能的な恐怖を感じた。
「まだ終わらない……終わらせてなるものか……」
「うぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!」
堪え切れない怒りを剣に乗せたセナが、叫びながらユスティアを振り下ろす。
黄金の剣はシノブの身体を切り裂いて両断。鮮血が……飛び散らなかった。
おかしい、何かがおかしい。血が流れていない、流れない、なんで、どうして。
「それは僕自身が、骸の魔女の魔法の影響下にあるからだ!!」
「骸の魔女の魔法!?」
「死を超越した不死者、骸の魔女の死徒……やっぱり、そうだったんですね」
「なるほど、君たちはそう呼ぶのか……」
両断されたはずの肉体が蠢き繋がり、立ち上がる。
骸の魔女の魔法、復活した死徒、死を超越した化け物。駄目だ、怖い、あれを殺せる人を、ぼくは一人しか知らない。今この場にいるぼくたちじゃ、あれを殺せない。
「まだ終わらせないぞ氷の魔女。僕は星神器を手に入れ、お前を調べ尽くしてやる……!!」
「させない……っ!!」
ぼくたちを庇うように立ち、セナが切りかかる。
光の軌跡を描きながら振り下ろされるユスティアの刃は、軽々しく指二本で止められた。
「セナ……!!」
「イヴ、シオンを連れて逃げてください! ここは私は食い止めます!!」
「させないと言っているだろ!!」
シノブが上着から何か小さな箱を取り出すと、笑いながらスイッチを押した。
出口に繋がる扉が閉じてその代わりに部屋全体の壁が開く。そこから姿を現したのは、数十体のアストライア家の複製体だった。
ざっと数えてカイルが五、レイラが十、アルバとノエルが二十ずつ。複製体の強さは痛いほど知っている。だから、この状況が絶望的だと一瞬で受け入れてしまった。
「シオン! しっかりしてシオン!!」
シオンにぼくの声が届かない。彼女は茫然自失で座り込み、砕け散った氷の破片を拾い集めていた。そこに、レイラはもういないというのに。
どうする……魔力も残り少ないし、シオン一人を守り切れるかすら怪しい。迎撃は無理、不可能。残りの魔力じゃせいぜい抗うくらいしか……。
右腕もあまりの痛みに感覚がなくなりかけている。辛うじて動かせはするだろうけど、何度か魔法を使ったらもう完全に使い物にならない。
それでもやるしかない。ぼくはシオンを助ける、救うって決めたんだから。
「……こい!!」
総勢五十五の複製体と対峙する。これだけ数がいれば、彼らの得意とするスピード主体の戦法は使えない。ただ、全員一斉に雷撃を放たれるだけでもジリ貧だから、できれば何体かバラバラに突っ込んできて欲しいけど―――
全員が、ぼくに雷撃を放つ動作を見せた。
そりゃそうだよね……防げるか分からないけど、やるしかない。
「【氷王の覚醒】ッ!!」
飛来する無数の雷撃を、吹雪の魔法で相殺。氷の壁を作って、打ち消しきれなかった攻撃を防ぐ。
でも、やっぱりだめだ……一撃が重すぎて、ぼくの氷を簡単に打ち砕く。分厚い壁でも、もって数十秒が限界だ。
どうにかしないと―――
「……先輩、代わって」
「シオン!?」
小さく呟いたシオンがぼくの前に出ると同時に、氷の壁が崩壊する。
無数の雷撃が飛来。シオンはただ立っているだけで、何の防御姿勢もとろうとしなかった。
死ぬ気だ―――咄嗟に、そう思った。だけど違った。シオンは雷撃に向けて右手を構えると、呟くようにその名を呼んだ。
「喰らい尽くせ【星盾】」
シオンの前方に出現した白金の大盾が、ぼくたちに飛来する雷撃を阻んだ。
盾の中央が割れて開き、その中から覗く紫紺の瞳に魔術が吸い寄せられていく。
喰らっている、喰らい尽くしている。魔法だろうと魔術だろうと、あらゆる力を阻んで喰らうその大盾は、どれだけの攻撃を受けようと、欠けることなくそこにそびえ立っていた。
盾の瞳が光り輝く。魔力を喰らうたびに輝きを増していくそれを見て、何故かぞくりと嫌な予感がした。
『シオンが得た紫電の星盾の暴走。それが、三年前の魔力災害の正体っす』
クロエの言葉が脳裏を過る。
大盾は魔力を喰らい続ける。でもそれにも限界があるはずだ。魔力を貯め込むには限界があって、いつか腹が膨れてそれが止まるはず。
でも、止まらない。
魔力災害の正体、大穴を開けたあの爆発が、星盾の貯め込んだ魔力によるものだったとしたら。いや、だとしてもあれだけの爆発を引き起こすほど魔力を貯め込むことは不可能だ。
なら―――星盾に魔力を増幅する能力があるとしたら。
星紡ぐ物語にすら付与されている能力なんだ、星神器だって持っていてもおかしくはない。
「シオン! まずいよ! このままだと魔力が貯められなくなって暴走するっ!!」
シオンに、ぼくの声は届いていなかった。
彼女はただ無表情で、光のない眼で前を見ているだけだった。
そこには何も映っていない。シオン自身に意識はない。だとするならこれは、星神器が自己を防衛するためにシオンの身体を操っている可能性が高い。
セナの自己治癒だってユスティア由来の力だ。それなら、ゴーティスも同じような力を持っていてもおかしくはない。特にシオンは、アストライア家が星神器を手に入れるために生み出した人造人間だ。常人以上に星神器と強く共鳴してしまう可能性もある。
だとするなら、これはまずい、シオンを止めな―――
「解き放て【|紫電の雷砲《|バステリオス・ライカ》】」
星盾ゴーティスが、貯め込んだ魔力を解放した。
閃光が辺り一帯を眩く照らす。耳を劈く轟音が轟き、紫電の軌跡が竜のように渦を巻き、天高く舞い上がる。
展開した氷の盾が一瞬で崩壊するほどの衝撃と、それがもたらした光景にぼくは目を見開いた。
「なにが……起きて……」
光が晴れた後、最初に視界に飛び込んできたのは青空だった。
さっきまで地下施設にいたはずなのに、ぼくの目の前には青い空と、大穴が広がっている。
ぼくたちを阻んでいた壁は一瞬にして取り除かれて、ぼくたちを取り囲んでいた複製体たちは一人残らずその全てが蒸発していた。
「ハハッ……ハハハハハハハハハハハハハッ!! 素晴らしい! それが星神器の、星盾の真の力か!! ますます欲しくなった……シオン、それを僕に寄越せッ!!」
大穴の中心で膝を突き、空を仰ぐシオンに、赤い瞳を輝かせながらシノブが襲いかかる。だけどその手が触れる瞬間、シオンが纏う雷撃が彼の右手を吹き飛ばし、蒸発させた。
「何ッ!?」
シオンがゆっくりと立ち上がる。いつもポニーテールにまとめている紫色の髪が解けて、彼女が纏う雷と共にヘビのように蠢いていた。
白金の大盾、星盾ゴーティスは複数に割れてシオンの背後に円を描く。
何の感情も込められていない翡翠色の瞳がこちらを見つめる。
シオンは右手をシノブに、ぼくたちに向けた。
目の前の敵を―――いいや、目に映るもの全てを、薙ぎ払おうとしていた。
「《多重詠唱》・【刺し穿つ雷光】」
シオンの背後を回る複数の星盾が一斉に開き、その瞳を一瞬輝かせる。
無数の雷撃がシノブの全身を貫き吹き飛ばし、土壁に縫い留め磔にした。
目の前の敵の排除が完了した。となれば次は―――ぼくたちだ。
「《反復詠唱》」
全く同じ動作をとりながら、星盾の瞳がぼくを睨む。
咄嗟に氷の盾を展開して防御する。けど、一発の威力が重すぎて盾が砕け散る。
防御をすり抜けた雷撃がぼくに飛来する。でもそれは、ぼくに届く寸前で黄金の剣閃に切り裂かれて消失した。
「無事ですか、イヴ」
「ぼ、ぼくは平気。でも、シオンが……」
「あれだけ好きだったイヴにも手を上げるほどのバーサーカー状態ですね。あの状態には見覚えがあります。私も、ユスティアの力に呑まれそうになった時に同じ体験をしました」
「どうやって戻ってきたの!?」
「……お母さんにボコボコにしてもらいました。その時には既に私が不死身だと分かっていたので、一度殺してもらって、正気に戻ったんです」
セナも同じ状態に陥ったことがあるのなら話は早い。シオンを助ける方法を知らないか尋ねてみるが―――セナから返ってきたのは、絶望的な現実だった。
「なんで……それじゃあ、シオンは……」
「今のところ、殺してしまう以外で無力化する方法はありません」
セナはいい、だってどれだけ致命傷を負ったところで死なない身体だから。
でもシオンは、ぼくらは違う。手足を失えば一生そのままだし、血を失い過ぎれば死ぬ。だから、そんな方法はとれない。
「ひとまず、私が相手をして食い止めます。その間に何か方法を探してください」
ユスティアを構え直して、セナは暴走するシオンに剣先を向けた。
ごめんセナ……少しだけ耐えて、きっと何か方法はあるはずだから。
とはいっても、方法なんてこれっぽっちも思いつかない。今彼女がどんな状況なのかも分からない。だからぼくは氷の剣を手に生み出し、シオンに最も詳しいであろう「彼」を問い詰めた。
「……シオンに一体何があったの?」
「ハハッ……あれは雷神だよ。星盾ゴーティスに封じられた古の魔神が覚醒したのさ!!」
狂乱の笑みを浮かべたシノブは、歓喜しながらその光景を眺めていた。
雷神……古の魔神。彼は確かにそう言った。だとするなら、今のシオンは魔神の古王と同等か、それ以上の力を持っている。
それを正直にぼくたちに明かしたのは、ぼくたちに勝機がないことを察してのことだろう。先生の言葉を借りるのなら、冥途の土産というものだ。
「さぁ暴れ回れ雷神! 勇者を殺せ! 魔女を殺せ! そして……世界を滅ぼしたお前の力を僕が奪ってやる!! ハハッ、ハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「くっ……この、外道が……!!」
「外道で結構。で、僕なんかに構っている暇があるのかい? あの化け物は放っておけば全てを滅ぼす。この一帯を、この国を、この世界を! あれを止められるのは全盛期の焔の魔女と初代剣星だけだ!!」
「うぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!」
怒りに任せて氷の剣を磔のシノブに突き刺して、シオンの攻撃を凌ぐセナに目を向けた。
目にも止まらない速さで繰り出される剣閃で飛来する無数の雷撃を切り落とすセナ。それでも完全に防ぎきることはできず、肩や脚に雷が直撃し、セナの表情が苦痛に歪む。
セナが辛うじて凌げているのは、シオンがついさっき魔力をほぼ使い果たしたからだ。ここで変に魔術や魔法で援護すれば、星盾が魔力を喰らって攻撃の威力と密度を上げるだろう。
右腕ももう動かない。左腕じゃ、セナも巻き込む可能性があるから支援は不可能だ。
殺すだけなら……方法はある。
先生ならきっと、あれを殺すことができる。だけどそれは最終手段だ。今はシオンを、シオンを取り戻すことだけを……
駄目だ、ぼくの頭じゃ、殺す以外にシオンを救い出す方法が思いつかない……!!
「我が敵を焼き払え! 【炎天の流星雨】ッ!!」
上空から、無数の火の矢が降り注ぐ。
背後に展開された星盾でも防ぎきれないほどの数と密度にシオンの防御は突破され、炎の矢はシオンの身体に突き刺さり燃え上がる。
不死鳥の精霊の背に乗って降下してきたテレジアとアルミリアが膝から崩れ落ちていたぼくの前に立ち、暴走するシオンに武器を向けた。
「無事ですか、イヴ。それで、あれは一体何ですの?」
「テレジア……シオンが、シオンが……っ」
「星神器の暴走……シオンは、星盾に呑み込まれてしまったようだね」
「なっ……それは実に厄介ですわね。手加減はできませんわよっ!!」
「駄目だテレジア!!」
急に叫んだぼくの声に驚き、テレジアはシオンから狙いを外した。
「駄目だ……魔力は、星盾の餌なんだ……あれ以上強くなったら、ぼくたちじゃ手に負えなくなる」
「そういえばあの盾の力はそうでしたわね……まったく、敵に回ると面倒この上ないですわ」
「となれば、テレジアとイヴは上空から援護してくれ。私はセナに加勢して、あれを抑えるとしよう」
「……気を付けて」
アルミリアは黄金の槍を構えて、暴走するシオンに向けて突撃する。
彼女の指示に従ってテレジアは【フェネクス】を呼び出し、ぼくを背中に乗せて空中へ。
見ていることしかできないのが、とても歯がゆかった。
「はぁぁぁぁあああああああああああああっ!!」
シオンの雷撃を切り払いながら、セナが接近する。
近付くたびに攻撃は数を増して、直撃を避けるので精一杯。傷つく身体に鞭を打ちながらシオンに立ち向かうセナが、痛々しくて見ていられなかった。
「せいっ! やぁぁっ!! おっと、うわっ!?」
変則的な軌道を描くシオンの雷撃を辛うじて打ち落としたセナが、大きく体勢を崩した。
その隙を逃さず、シオンは心臓を狙って雷撃を放つ。でもそれは、間に挟まった黄金の光に阻まれてセナに届かなかった。
「無事かい、セナ」
「アルミリア……!! はい、無事です! でも、シオンが……」
「分かっている。ユスティアの光は使えないのかい?」
「……私自身が迷っているせいなのか、応えてくれません」
「そうか……なら、シオンは私が引き受ける。セナはその間に、何とか迷いを振り切ってくれ」
「でも……っ、シオンは私たちの大切な後輩です。それを斬るなんて……」
「ユスティアなら、彼女を生かしたまま救い出すことが可能だ。だから頼む、セナ。それまで、あれは私が抑えて見せよう」
アルミリアがセナの横を駆け抜けて、シオンに槍の穂先を向ける。
ユスティアなら、シオンを取り戻すことが可能。どうして、アルミリアはそんなことが分かるのだろう。そういえば、アルバはアルミリアのことを「剣星になれなかった失敗作」と言っていた。それと何か関係があるのだろうか。
「グランヴィル家の初代当主はアルトリウスと共に世界を救った英雄ですわ。ユスティアの力を彼女が把握していても何もおかしなことはないでしょう?」
「……そっか、そうだよね、そうだ」
心の内で湧いたぼくの疑問を、テレジアがバッサリと切り捨てる。
そんなこと考えている暇なんてない。シオンを助けるために、ぼくたちにだってできることがあるはずだ。とはいえ、後方支援射撃が主体のぼくたちでは攻撃に魔力を用いるから、ゴーティスに餌を与えるだけ、どうしたものか。
「……ねぇ、テレジア。アルミリアって、あんなに強かったっけ……」
シオンの雷撃を躱しながら踊るように舞い、アルミリアは的確に槍の一撃を叩き込んでいく。
それは星盾に阻まれてシオンを捉えることはなかったけど、セナと違って動きに無駄がないから雷撃を避けて接近と、彼女が成し得なかったことを軽々しく成し遂げて見せる。
「アルミリアは、アルバ・アストライアを無傷で無力化していましたわ。彼女が実力を隠していたことは確かでしょう」
「アルバを無傷で!?」
制服が破けたり、素肌に爪の痕が残っているテレジアに比べて、アルミリアには一切のダメージがなかった。彼女の戦いをぼくは知らないけど、テレジアが嫉妬で歯を食いしばり拳を握り締めている辺り、凄まじいものだったんだろう。
「グランヴィルとリヒテンベルク、千年前から勇者の座を維持し続けている二つの名家。世間は私とアルミリアを同列に扱いますが、現実は違う……私とアルミリアの間には決して超えられない高い壁が存在します……悔しいですが、彼女はセナよりも強いでしょう」
テレジアにそう言わせるだけあって、アルミリアの戦いは華麗の一言で片付けてしまうには烏滸がましいほど美しかった。舞踏であり、演舞であり、剣舞。星盾の防御を完全に見切った上で攻撃と回避を同時に行う。セナも十分超人的ではあったけど、アルミリアもそれに匹敵……いや、セナを超えていた。
ぼくはそんな彼女に、勇者になって偉業を成したリーナの姿を重ねていた。
「アルミリアは天才ですわ。グランヴィル家の最高傑作。いずれ星剣を手にするだろうと噂されていました。実際、十歳を迎える年に星剣へ挑戦することを国王陛下に許されていたと聞いています」
でも、それは叶わなかった。
アルミリアが九歳の時、リーナが星剣ユスティアに認められてしまったから。
「もし、アルミリアが星剣ユスティアを手にしていたら……私は彼女の幼馴染として、好敵手として、どうしても考えてしまうのですわ」
テレジアのその呟きが、アルミリアにリーナの姿を重ねた理由をぼくに自覚させる。
ぼくも考えてしまったんだ。もしセナじゃなくて、リーナじゃなくて、アルミリアがユスティアを振るう、そんな未来があったとしたら―――それは、誰よりも優れた勇者であったかもしれない。そんな可能性を浮かんでしまうくらいに、アルミリアの戦う姿は気高く、美しかった。
「セナ! できる限り早くしてくれ! 私もこれを凌ぐのは少し骨が折れる!!」
「……っ! はい!!」
自分の身体の一部のように槍を扱い、アルミリアはシオンの猛攻を凌ぎつつも一撃を叩き込む。だが、それもアルミリアが万全の状態だったからだ。防ぎきれなかった雷撃が腕や脚を掠め、彼女の動きを鈍らせていく。
それでもアルミリアは、決してシオンの前から退こうとしなかった。
「急いでくれ、セナ!!」
「……はい!!」
セナがユスティアを構え直して目を瞑り、深く息を吐いた。
黄金の剣に、光が灯る。
それは僅かな淡い輝きだったかもしれない。それでも、シオンを救う覚悟を決めたセナに迷いはなかった。
「ユスティアは宿主の意志に応える剣だ。だからその性質を利用し、星盾とシオンを避け封じられた魔神だけを斬る。できるね?」
「……やります」
セナの黄金の瞳がゆっくりと開かれ、ユスティアを握る手に力を込める。
アルミリアの提案は突拍子もないものだった。それでも何の疑いもなく従うのは、未だ謎多いユスティアの力をセナが信頼しているからだ。
「―――【星剣解放】ッ!!」
ユスティアから溢れる光が、周囲を黄金の照らしていく。
今まで見たどの輝きよりも眩く気高く温かな光。それが、ユスティアを通じて顕現したセナの意志だった。
「……いきますっ!!」
黄金の輝きを纏ったセナが大地を蹴って、荒れ狂う雷神に突撃する。
シオンは、シオンを操る雷神はユスティアの光に僅かに狼狽え、紫電の雷撃でセナを迎撃。
セナはユスティアを振るい、雷撃を薙ぎ払う。黄金の輝きに阻まれた雷神が吹き飛ばされるけど、シオンの身体は衝撃を受けても傷一つなかった。
雷撃がセナの身体を貫く。それでも足を止めず、セナが僅かに笑った。
鮮血を撒き散らしながらも前へと足を突き動かし、セナは雷神に肉薄。
「はぁぁぁぁぁああああああああああああああああああッ!!」
黄金の剣が振り下ろされて雷神の身体を切り裂く。
溢れ出した眩い輝きと荒れ狂う紫電の雷光がセナとシオンを包み込み、星盾に貯め込まれた魔力が爆発した―――




