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第2章 お先真っ暗

「おーっす。お待たせー」

最後まで逃げようと地味な抵抗をする嶺斗を引っ張りながらリクは大政と合流した。

建物の中は少しじめじめしており、東雲医院と書かれた看板が倒れていた。

外側から何かのツタが生い茂っていて、見た感じ結構年季が入っていそうだ。

薄暗い病室内。暗い室内にびくびくしていた嶺斗だが、悪いことばかりではなかった。

懐中電灯がなくても、夜行性の生物は夜目が利く。つまり、想像していたより明るく見えてきて安心していた。

「なーんだ、なんもねえじゃん」

あたりを見回してつまらなそうにつぶやく狼。リクもまた夜目が利くのである。

カタ...カタ...時々窓が小刻みに揺れて音を立てる。だんだんと大政の顔から余裕がなくなっていく。

「ほらな!大丈夫って言ったろ!」

そう言いつつも大政の声は震えていた。大政も嶺斗ほどではないが怖がりであることは事実だ。


しばらくして。

「なんかこうやってると探検隊みたいで楽しいな」

「探検隊って...小学生かよ全く」

はしゃぐ大政を一周する嶺斗。なおも大政は続ける。

「せっかくだしコードネームみたいなの考えてみようぜ」

「おっ、面白そうだなそれ」

「まずは嶺斗から...んーそうだなぁ...」

「レートとか?」

「なんのだよ」

「なんか異世界っぽく『レト』なんてどうだ?」

「いいねそれ。気に入った」

「レト。いい名前だな」

「じゃあ次は...」

少しバカにしていた嶺斗も、いつの間にか一緒になってはしゃいでいた。

そんなこんなで、嶺斗は「レト」、大政は「ダイス」、裏喰は「リク」になった。

「なんでオレは変わらないんだよ」

「切り抜くほどの文字数ないんだから仕方ないだろ」

呼び方が変わらなかったリクが文句を言っていると、


ドサッ


なにかやわらかいものの倒れるような音が静かな廊下に響いた。

嶺斗はなにか寒気がしたが、怖さを紛らわすために、前を歩くリクを追いかける。

ふと、大政の声が聞こえないことに気づいた。リクにしがみつきながら恐る恐る振り向いてみると、

少し遅れて大政がついてきているのが見えた。

しかし、いつもと雰囲気が違う。よほど疲れているのか、顔を下に向けながら歩いてくる。

「遅いよー!早く来な...よ...」

言葉を失う嶺斗。異変に気付いたリク。二人の内なる本能が危険信号を全力で発している。

目の前の「大政」は、ぎょろりと目を向いて涎を垂らし、どこからか持ち出したメスをこちらに向けているのだ。

「コ...ロス...オマエ...ラ...」

低い声で化け物がうなる。

「ニ...ゲ...テ...」

かすかに残った大政の意思が友人を守ろうと抗う。だが抵抗もむなしく、「大政」が暴れだす。

「ケヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」

笑いとも奇声とも取れる声をあげながら飛び掛かってくる化け物。間一髪で避ける嶺斗。

「逃げるぞ!」

呆然とする嶺斗だがリクの呼び掛けにハッと我に帰る。

その場から走り出した二人をなおも化け物は追い続ける。だんだん息が荒くなる二人とは対照的に「大政だったもの」は汗一つかく気配がない。

「おい、あいついつまで追いかけてくるんだよ!!」

「ハァ、ハァ...あいつの体力底なしだろ...」

息を整えようと病室に隠れた二人。恐怖からか絶えず口は動く。

タン、タン、タン。足音がだんだん近づいて、だんだん小さくなっていく。

「行った...のか?」

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