表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ばっくんとみるこちゃん

作者: 紅森がらす

オオカミぬいぐるみのばっくんと、ニンゲンようちえんじのみるこちゃんは仲良しです。

ばっくんは綿が入っているだけのやわらかいぬいぐるみとはちょっとちがいます。

大きな洗濯ばさみみたいなかたいほねが入っていて、体をにぎにぎすると、口がばっくんばっくん開いて動くんです。


だから、他のぬいぐるみよりもたくさんお喋りをするんですね。

「みるこちゃん」

「なあに?」

みるこちゃんがくるりと振り向きました。頭の大きなりぼんがひらりとゆれます。

「おれの体がごろごろする。寝ているあいだに石ころを詰められたんじゃないかな」

ばっくんは不安そうです。

「きのう図書館でオオカミと七匹の子ヤギの本を読んだからそう思うんでしょ」

みるこちゃんは言いました。

七匹の子ヤギをだまして食べた悪いオオカミは、最後は子ヤギのお母さんヤギに石ころを詰められてしまうのです。

「ばっくんはあのオオカミみたいに、子ヤギを食べてないじゃない」

「そうだな!」

ばっくんは元気にうなずきました。でも、

「お母さんヤギは食べた気がする」

とふと思い出しました。

「えっ?」

みるこちゃんは絵本を読んだ時のことを思い出してみました。

みるこちゃんとばっくんは、石ころを詰められたオオカミがあんまりにも可哀想でたまりませんでした。

お母さんヤギがひどいと思ったみるこちゃんは、ばっくんの体をにぎにぎして、お母さんヤギの描いてあるところの絵を、ばっくんばっくんと食べさせました。


ビリッ!

「……あっ!」


あの時、絵本が破れてしまっていたのです。

みるこちゃんは絵本をこっそり棚に戻して、家に帰ってきてしまいました。

そのことをすっかり忘れていました。


「どうしよう……」

みるこちゃんは困りました。

「おれもお母さんヤギ食べちゃったし、いっしょにあやまりに行こう」

「うん」

みるこちゃんは落ち込んだまま、ばっくんをぎゅっと抱きしめて図書館に行きました。


オオカミと七匹の子ヤギの絵本を持って、図書館のお姉さんのところに行きます。

「あの……」

みるこちゃんはもじもじしながら絵本を出しました。

「貸し出しですか?」

お姉さんはにっこり笑って言いました。

「違って、えっと……」

みるこちゃんは絵本が破れてしまったことを、なかなか言い出せません。

「ごめんなさい、おれがお母さんヤギを食べちゃいました」

ばっくんが先にお姉さんに謝りました。お姉さんは首をかしげました。

「ページが破れて、ええと、わたしが破っちゃって、ごめんなさい!」

みるこちゃんはなんとか謝る言葉が言えました。

ばっくんが口をがばっと開けると、くしゃくしゃになったお母さんヤギが出てきました。

「教えてくれてありがとうございます」

お姉さんがまた、にっこり笑って言いました。

怒られたらどうしようと思って、びくびくしていたばっくんとみるこちゃんは、ほっとしました。


お姉さんは、絵本に大きなフィルムを貼って、破れたページを直してくれました。お母さんヤギはちょっとしわしわでしたが、くっついたページは、フィルムできらきらとしています。


みるこちゃんは、帰り道こんな想像をします。

「ばっくん、お母さんヤギも石を詰めてごめんねって、後で悪いオオカミに謝ったんじゃないかな」

「うん。オオカミも、子ヤギを食べようとしてごめんって言ったんじゃないかな」

「じゃあ、ばっくんみたいにいいオオカミになったんだね」

「あはは、そうかも」

オオカミぬいぐるみのばっくんと、ニンゲンようちえんじのみるこちゃんは今日もとっても仲良しです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 破ってしまったことをちゃんと謝ったのはよかったですね。 伝えないで返すと、そのまま他の子に貸し出してしまったり、修理が難しいぐらい破損が広がるかも。
[一言] 二人の仲良しな姿にほっこり!
2023/01/09 21:57 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ