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神具の印  作者: 零
第1章 一級霊跋師「我来斂徒」
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第10話 皆のこと

始業式は憂鬱だ。

別に学校が嫌いなわけではない。ただ、何というかほとんど学校に行っていないものだから視線が気になるだけだ。

そんな俺にも良くしてくれる友人はいる。本当だ。


「よお!斂徒!久しぶりだな」

「おう。磊砥、久しぶり。体育祭以来か?」

「ちげえよ。修学旅行来ただろ」

「ああ。そうだったな」


こいつは吾劫(あごう)磊砥(らいと)。俺の通う高校にいる数少ない友人の一人だ。

なかなか学校に来ない俺と中学の時から仲良くしてくれている。

会ってない間は得意のスポーツに明け暮れていたのだろう。前より肌が焼けていて黒い。


「家業が大変なのはわかるけどよ、もうちょっと来てもいいだろ。俺もお前の顔みたいぜ」

「わるい、最近忙しかったんだよ」

「そうよ磊砥。斂徒だって暇じゃないの。ねえ?」


声がした方を振り返ると、顔なじみの三人がいた。


「雲雀、いいんだよ。そういう気持ちは嬉しいから」

「そう?ならいいんだけど」

「雲雀ちゃんも気にしすぎなんだよ。斂徒くんは嫌なら嫌って言えるでしょ」

「でも、久遠。斂徒は優しいから」

「大丈夫だって」

「あんたねえ、誰のこと言ってんのかわかってんの?」

「まあまあ、みんな落ち着いて。その話もわかるけど、まず斂徒に挨拶が先じゃない?」

「すまん、深萊」

「いいよいいよ。こーゆーの得意だし」


初めに磊砥に声を掛けたのは、薄明(はくめい)雲雀(ひばり)。何かと磊砥に突っかかることも多いが、その行動は磊砥の自由さに俺たちが振り回されていないかを心配するゆえと俺は知っている。



放課後は光迅と歌奈の師団加入手続きに来ている。

場所は霊跋師第89支部。ちなみに本部は41支部の地下にある。

受付は相も変わらず桃さんだった。


「では、これで登録の手続きは終了です。あなたたちは神具の印のメンバーとなりました」

「「ありがとうございました」」

「いえいえ。斂徒さんの頼みですから。にしても斂徒さんが新メンバーを連れてくるなんて…どういう心境の変化ですか?」


桃さんはとても驚いた様子で俺に聞いてきた。

別にどうってこともないんだけどなぁ…


「たいした理由はないですよ。志に関心した。それだけです」

「本当にそれだけですか?」

「はい」

「本当に?」

「はぁ、正直に言えばさっきのは2割くらいの理由です。あと1割は素質、他は勘」

「斂徒、俺らのこと勘で決めたのか!?」

「斂徒さんの勘はそう無碍にできませんよ」

「そうなのですか?」

「えぇ、神具の印のメンバーは全員斂徒さんが集めましたし、斂徒さんの勘はよく当たります。しかも天才が多いです」

「天才か〜あんな人達ばっかですからね」

「そうですね。欠点とかなさそうですもんね」

「欠点なら、あいつらにもある」

「え?あるんですか?」


二人は驚いているが、もちろんあいつらにも欠点はある。

現時点でトップ10位以内には入ると言われているのは、うまくその欠点を補っているからだ。


「まぁ神具の印をあそこまで育て上げたのも斂徒さんですからね。あの人たちを強くしたのも斂徒さんなんですよ?」

「マジで!?」

「強くした、というよりは得意を伸ばした方が合ってる」

「それでもあそこまで強くしたんですよね?」

「もともと素質が良かった。あとは俺の師匠のおかげだよ」

「へぇ〜そうなんだ」

「みなさんの欠点というのはなんなんですか!!」

「妙に勢いあるな、あとそれは本人に聞け」

「むぅ、なんでですか」

「欠点というものは話したくないだろう?」

「…そうですね」

「歌奈レベルの霊跋師ファンもその理由には納得なのか」

「なんですか!それは」


あいつらは、強い。でも最初からじゃない。一つの才能を伸ばして、伸ばして、行き着いた境地だ。

そんな景色を二人にも見せてやりたいと思う。




それからは桃さんと世間話をして、支部を離れた。

いまはその帰り道だ。


「そういえば斂徒は俺たちの先輩なんだよな?」

「あぁ」

「じゃあ学校でも会うのか?」

「あー…ちょうどいい機会だし二人に伝えとく」

「何をですか?」

「ルール」

「ルール?」

「学校では俺にはいつも通り話しかけないこと。仕事の話はしないこと。一般人との線引きをすること。だ」

「後2つはわかるけど、1つ目はなんでなんだ?」

「俺の友人は少ない。急に親しくなると違和感が生まれるからな」

「でも目とか合っちゃったりしません?」

「俺は仕事を理由にして学校に行ってないからいい」


そう。俺は学校に行っていない。引きこもりとかではなく仕事があるからだ。別の理由もあるが、


「え、それ大丈夫なんですか?」

「大丈夫だ。学校側も事情を知ってるから問題ないぞ」

「そうじゃなくて、学力がってことだろ。歌奈?」

「そうです。大丈夫ですか?」

「俺はお前らが小学校入ったくらいに高校3年生の学習していた」

「は?」

「冗談言わないでください」

「本当だぞ?今なら大学行けるくらいの学力はある。国立な」

「も、もしかして斂徒ってハイスペック?」

「みんなより学ぶのが早いだけだ」


二人が嘆いているがそんなことは気にしない。

明日から二人は修行だ。もっと神具の印と自分自身のことを知ってもらわなければならない。


「光迅と歌奈は明日から修行だが、準備は大丈夫か?」

「おう。バッチリだ!」

「はい。後顧の憂いはありません」

「そうか。こう言ってはなんだが、かなりハードで行くつもりだ」

「どれくらい?」

「目標は1ヶ月で上級入り」

「マ、マジ!?」

「そんなことできますか!?」

「まぁ多分、、素質とかペースにもよるけどな」

「早く強くなれるなら願ったり叶ったりですけど…」

「神具の印総出でサポートはするから安心してくれ」

「なら、大丈夫ですかね?」

「当たって砕けろだな」

「頑張れ。応援してる」

「「はい!」」


二人は笑顔で俺に返事を返してくれた。

神具の印に相応しい『強さ』を身につけられることを誓おう。


「斂徒は修行つけてくれないのか?」

「週末する」

「最後ですね?」

「なんでだ?」

「俺は教えられることが後付けなんだよ。基礎基本を整えてからの方が俺の指導は役に立つ」

「何を教えてくれるんだ?」

「そうだな、それは秘密ということで」

「えー」

「予想しといてくれよ、歌奈とかそういうの得意だろ」

「歌奈頼んだ!」

「はぁ、わかりましたよ。斂徒さんの修行当てて見せましょう!」


明日からは修行の日々が始まる。

辛い修行もあるかもしれないが、頑張って乗り越えてもらおう。

そう思いながら俺たちは我が家の門をくぐった。

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