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チーターの待ち人  作者: 春ヶ勢はせる
プロローグ〜女神の涙〜
9/43

お前以外には渡せない

「おれと同じ世界に転生してくれないか?」


 その言葉への最初の返答は、


「……え?」


 その反応に陽衣は少し慌てたように弁明した。


「違うんだ。女奈に記憶をなくしてほしいわけじゃないんだ。別にそういうつもりで言ったわけじゃ……」

「そうじゃないよ!」


 陽衣の言葉を女奈は遮った。


「それって記憶をなくした私を探すってことだよね!?」

「そうだけど…」

「それがどれだけ茨の道か分かって言ってるの!?」


 女奈はそのまま叫ぶように話し続けた。


「たとえ一緒の世界に転生しても、また出会えるとは限らないんだよ!? それに、私は記憶がなくなっちゃうから君は一人で広大な世界から私を探さなくちゃなんだよ!? たとえ出会えたとしても、君にひどいことを言うかもしれないんだよ!?」


 そう叫ぶと、一度目元を擦ってから言葉を続けた。


「私は君に救われた。だからもういいよ。君は新しい世界で自由に生きてよ」


 静かな世界に一人の少女は語りかける。


「私は君に傷ついてほしくないよ……」

 

 女奈の瞳からは泣き始めてからずっと涙が流れていた。

 しかし、今はそこに少しの憤りが見えた。


 そして、優しさも。


 その言葉を聞き、その瞳をまっすぐに向けられた陽衣は、


(やっぱり女奈を失いたくないなぁ)


 そう思った。

 否、思わされてしまった。

 

 自分の想い人に大切に思われていると実感させられた。

 幸せという言葉の真の意味を理解させられたような感覚。


 だからこそ、諦めたくなかった。

 いつまでも一緒にいられるようになるために、諦めるわけにはいかなくなった。


 今この瞬間、陽衣の頭の中で、女奈と生きる以外の選択肢がなくなった。。


「女奈。お前は勘違いをしているよ」


 自分の気持ちをぶつける。


「お前におれじゃないんだよ。おれにお前が必要なんだ」


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「おれにはお前が必要だ」


 自分の正直な気持ちを


「お前の記憶がどうなろうが関係ない」


 今まで隠してきた荒れ狂う感情を


「世界の果てのその先まで追いかけて」


 今、この場所でぶつける。


「お前のことをつかまえる」


 陽衣は封印していた空白の二文字を解き放つ。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 その言葉に女奈は一瞬目を見開き、すぐに笑顔になる。


「そんな事言われたら、なにも言い返せないじゃん」


 そして、確認するように言葉を続ける。


「茨の道なんだよ?」

「『状態異常耐性』でも使うさ」

「会えるかわからないんだよ?」

「会うさ、必ず」

「たとえ出会えても、記憶はないんだよ?」

「女奈が女奈のままでいるならそれでいい」


 最後に、と少し間を開けて女奈は聞いた。


「今、君が言ったことを叶えられる確率なんて、限りなくゼロに近いんだよ?」

「そんな事はわかってるさ」


 でも、と続ける。


「それが叶ったら、それは『奇跡』だろ?」

「そうだね」

「おれは『奇跡』を起こすよ」


 遠回しに女奈を諦めないという陽衣。

 もちろんその意味はしっかりと伝わっている。

 だから女奈は反論できない。


「なにそれ」


 そう言って陽衣の胸に顔を押し付けることしかできない。

 陽衣はその華奢な体を抱きしめた。


 すると、陽衣の体から光の粒子が出始めた。


「時間だな」

「そうだね」


 そう言うと、二人はもう一度強く抱き合う。

 お互いのぬくもりを確認するように。


 もう、すぐに消えてもおかしくない思うくらい薄くなってきたとき、重大なことに気づいた陽衣は女奈の顔を覗き込んで聞いた。


「そういえば、告白の返事を返してもらってないけど」


 すると、何度も見てきた最高の笑顔を陽衣に向けて


「もう一度、()()()()()()で言って。その時に答える」


 その答えと笑顔に、


「わるくないなあ」


 と言って陽衣は消えた。

プロローグは、あと一話続きます。

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