二年が経ち
急に二年も経ってすいません。話が進まないのでかなりとばしています。もし書いてほしいというご要望があれば書くかもしれません。
「あれから二年か〜」
陽衣と女奈が出会ってから、今日でちょうど二年だ。
最初はきつかったチートを使いこなす鍛錬も、今ではだいぶ慣れた。
全体的に体も引き締まっており、無駄な肉のないスリム体型になった。(マッチョにならないのは『体型維持』というチートの効果)
さらに、たくさんの人の歴史書を読んで魔法や戦い方を覚えた。
『瞬間絶対記憶能力』は便利だ。
今では、それなりに女奈と戦えるくらいには強くなった。
今日の分の修行が終わった陽衣は暇人だった。
この時間は女奈も仕事をしており、完全に一人の時間だった。
屋根に登って果てしなくなにもない世界を見つめていた。
この世界には女奈の家しかない。
それ以外にはなにも建ってなく、ただ空が広がっているだけ。
ぼぉっとする場所としてはぴったりだった。
実際、陽衣は屋根の上から見る夕日を気に入っていた。
「アニメも気になってたのは見終わったしな〜」
女奈と一緒に暮らし始めてからも、陽衣はアニメ鑑賞を趣味としていた。
テレビは『錬金術師』で作った。
休日は女奈と一緒にみることもあるが、基本は一人で見ることが多い。
仲が悪いわけではない。
都合が合わないことが多いだけだ。
というわけで、時間を持て余していた陽衣はぼんやりとここ一年にあったことを振り返っていた。
「世界の時間軸が同じっていうのは楽だよな〜。神もいい仕事してるわ」
本来それぞれの世界というものは、ちょっとずつ時間軸がずれているらしい。
そして、そのズレを揃えるのが時の神の仕事なんだそうだ。
主神はありとあらゆるズレの修復を行う仕事をしている。
その中で特に難しいズレは、修復する専門の神がいる。
それが、女奈や、時の神だ。
時間軸が同じということは日付も同じということ。
今までそういう事ができなかった分、女奈にはそういった行事の一つ一つを楽しんでもらいたかった。
「おかげでクリスマスもハロウィンも楽しかったな〜。バレンタインは二回ともチョコくれたしな〜。めっちゃ美味かったからお返し大変だったけど」
おかえしは一回目はぬいぐるみ、二回目はマカロンにした。
「誕生日なんて本人が忘れてるのに祝ってくれたし」
陽衣は自分をそこまで大事だと思っていない。
そのせいもあってか誕生日とかはすぐに忘れてしまうのだ。
祝われてから気づいて、密かに祝ってもらえたことに喜んでいたりする。
誕生日プレゼントは持っていても生まれ変わるときに持っていけないので用意されず、その変わり、女奈に一日自由に甘えていいというものだった。
少しは甘えていたが、襲わない程度に理性を抑えるのが大変だった。
ちなみに女奈側からすると、私ってそんなに魅力的じゃないのかな、とか思っていたりする。
「そういえば一周年にサプライズパーティーしたときも泣いてたな」
一周年にサプライズパーティーをした。
女奈が感極ってずっと泣いていた。
最後に見せてくれた笑顔を見て、推しの笑顔を見れたら死んでもいいと言う人間の気持ちがわかった気がした。
「それに……」
さすがの陽衣も気づいている。
この二年で自覚してしまった。
「でもなぁ……」
これが普通のラブコメなら、告白すればよかったのかもしれない。
妙に自虐的な主人公たちもきっと最終的には結ばれる。
だが、陽衣と女奈を結んでいるのはあくまで契約だ。
その契約が切れたとき、陽衣は新たな世界に生まれ変わらなければならない。
要するに、どれだけ好きでも最終的には分かれることが決定しているのだ。
その事実が胸を締め付けるのと同時に、その選択をしたのは自分なのだという自虐的な思考が生まれる。
(女奈は、おれのわがままに付き合ってくれているだけだ。それ以外のなんでもない)
そう考えて、自分を納得させる。
今の陽衣には、それ以外の選択肢が見当たらなかった。
「こういうのはテンプレにはないんだけどなぁ」
でも、今の関係だからこその表情だってきっとあるのだろう。
それに、この契約をしなければ一緒に生活することすらなかったかもしれないのだ。
そう考えると、
「わるくない、のかなぁ」
そうつぶやく陽衣の背中はずっと丸まっていた。
それからどれくらい黄昏れていたのか、
「やっぱりここにいたんだ」
その言葉に目が覚める。
どうやら寝ていたらしい。
「仕事は?」
「ずっと寝てたんだね。仕事は終わったよ」
意識が確かになっていくにつれて、背景がオレンジに染まっていることに気づく。
「もう夕方か」
「どれくらい寝てたの?」
「たぶん二時間くらい」
「うわ〜、ねぼすけさんだ。こんなところで寝てたら風邪引くよ」
「大丈夫だよ。っていうかさ〜。はやく『状態異常耐性』くれればいいだけじゃん」
「そういう問題じゃないの」
そう言いながら女奈はまっすぐこっちを見た。
「どれだけ加護を手に入れてもあなたは一人の男の子なの。加護が手に入ったからって痛覚が消えるわけじゃないんだよ」
「わかってるよ」
そう言いながら陽衣はその桃色の瞳を見返す。
「おれは所詮人間だよ」
「ホントにわかってるんだか」
「わかってるって」
苦笑しながら返す。
「ただ、目の前に女の子がいるのに弱いところなんて見せたいわけ無いだろ」
「私は陽衣より強いよ」
「それでもだよ」
そんな話をしながらお互いに肩を預け合う。
夕焼けの中に薄く月が見えた。
「夕月夜だね」
「あぁ」
そう言いながら陽衣は女神の能力でも聞こえないほど、むしろ声に出してないのではないのかと言うほどの声量で呟いた。
「月はずッときれいなんだけどな」
「ん? なにか言った?」
「いや」
それでもかなり距離が近いのでかすかに聞こえたらしい。
それを苦笑で誤魔化しながら陽衣は今度は聞こえる声で言う。
「二年間ありがとう。これからあと半年とちょっと、一緒に楽しもう」
すると、少し驚いた表情をしたあと、桜の花のような笑顔で短く。
「はい!」
その夕月夜すら脇役にする笑みにもう一度苦笑する。
(やっぱ月よりも花よりも女神だな)
マカロンの意味はググってください。




