禁断症状
めっちゃ短いです。
「女奈〜、助けてくれ〜」
二人で暮らし始めてから一週間経った日の朝、陽衣は唐突にそんな事を言い始めた。
お互いの名前呼びや、女奈の仕事時間(女神を仕事と呼ぶのかはさておき)、家事の割り振りなどもここ一週間でなれ始め、順調に同居生活は始まった。
お互いの程よい距離感も見つけ、契約相手としてはかなりいい感じに事が進んでいると思った矢先のこの言葉だ。
もちろん女奈も気にする。
「どうかした?」
「聞いてくれ」
すると、珍しく真面目な顔をした陽衣が、重苦しそうに言葉を発した。
「実は…、本を読みたいんだ」
「なんだ、そんなことか」
「いや、おれにとってはめちゃくちゃ重要なことなんだよ!」
「たしかに生きているときも、一日三冊は絶対呼んでたもんね」
そう、陽衣はとてつもなく本が読みたかった。
ここ一週間は、色々なことがあって本のことを頭の底にむりやり追いやっていた。
だが、この生活に慣れていくうちに少しずつ、読書欲や知識欲が戻ってきていたのだ。
「女奈もおれの歴史読んだならわかるだろ」
「歴史書にはあくまで5w1hが書いてあるだけで、その人の感情は載ってないから。でもそんなにきついなら、今日の加護は『感情コントロール』にしようか?」
「そんなのもあるのか」
本当にチートって便利だなと思いながらも、さりげなく自分を気にかけてくれている女奈に嬉しく思った。
だが、
「そういう問題でもないんだよな」
ことはそう簡単にも行きそうになかった。
「どういうこと?」
「おれの場合、本が好きとかそういう次元を超えて、もう生活の一部なんだよ。歯磨きと一緒だ。やらないと妙に引っかかるだろ? だから、たとえ頭で必要ないと理解しても体が無自覚のうちに求めると思う。読書以上にやらなきゃいけないことが出てきたりとかすれば、変わるんだろうけど」
「なるほどね~」
う〜ん、とうねる女奈の顔を見る陽衣の表情は、わりと余裕がなかったりする。というのも、これまでは慣れない場所での慣れない同居生活で本すら忘れていた陽衣だが、もう慣れてしまった。
そうなると、目の前にいるのは文字通り女神様なのだ。
桃色の髪に整った顔立ち。目の色は普段は桃色だが、女神の能力を使うときのみ水色になるらしい。
そんなリアル女神様が目の前にいるのだ。オタクとしても陰キャとしてもダブルで心臓に悪い。
更に、最近の調べによると家庭的な面も見えておりヒロイン力が高すぎる。
「マジ正ヒロインだな」
「はい? なにか言った?」
「ここで難聴かよ。まじでヒロインだな」
「はい?」
「いや〜、こっちのセリフ」
おっとおっと、聞かれるところだった。
「でも、本当にどうする?」
「う〜ん。おれも読める歴史書とかないの?」
「あるけど、あれすごい数だよ」
「読めれば最悪なんでも良いし、自分の転生後の世界の歴史も少しは知っておかないとだしな」
「なら、図書室を作るよ」
「ん、助かる」
ということで図書室を作ることになった。また家を改造することに、少し申し訳なさを感じたよくよく考えれば今更だった。
ここに来てから女奈には迷惑をかけてばかりだ。
(でも、少しぐらい自分のできることも増やさないとさすがに申し訳ないな)
男としてのプライドとか、単純に申し訳なさとか。
ジェンダーなんて知らない。
男は女に頼って欲しいものなのだ。
その日から、修行以外に密かに筋トレを増やす陽衣だった。
ちなみに僕も本を一日一回読まないと、死ぬおそれがあります。




