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チーターの待ち人  作者: 春ヶ勢はせる
二章〜勇者世界〜
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円卓会議

 陽衣たちはソルの家を訪れた。

 

「ソルを助けていただき本当にありがとうございます」


 母親と二人で暮らしているらしい。

 一ミリも場所を取らないから家を貸して欲しいと言ったら笑いながら貸してくれた。

 もっとも、陽衣は冗談で言ったわけじゃない。


「『虚空』」


 『虚空』で空間を創り、そこに『錬金術師』の力を使って部屋を作る。


「たったこれだけで、場所を取らずに部屋を一個作ることができました、と」

「ほんと反則だよね」

「褒め言葉として受け取っておくよ」


 使い終わったらそのまま普段の生活に使って欲しいと言っておき、陽衣は部屋の中に入る。


「ほら、安全だ。みんな入ってこいよ」


 机と椅子も作り出し、入れてくれたお茶をありがたくいただく。

 最初はソルは話し合いに巻き込まない予定だったが、どうしても聴きたいというので五人で話し合いを始める。


「それで? 刀輝と凛心が作ったはずの平和な現在がどうして戦争に繋がるんだ?」

「……原因はありません」

「は?」


 陽衣は意味がわからなかったが、刀輝と凛心は頷く。


「人間は魔族を倒さなきゃいけないって考えが潜在的に入ってるってことさ」

「魔族もそう。きっとちょっとしたこと。『人間如きが』ってなる」


 なんでもないことのように言っているが、刀輝も凛心も悲しそうな表情をしている。

 その言葉にノアはうつむく。


「もちろんそんな人たちばかりじゃないんです。魔族も人間も人というひとつの人種の括りになりましたし、平和を望む人もいます」

「でもそれは少数、か」

「……はい」


 ノアも苦々しげに頷く。

 重苦しい雰囲気が続く。

 陽衣はとりあえず話を逸らしたくなった。


「そういえば、皇女様はどうやってここに来たんだ?」

「私が頼んでいる側なので、皇女様はやめてください。ノアと呼んでください」


 陽衣の半分冗談に苦笑しながらノアは答える。


「私の父……凛心様のお兄様は世界が平和になったら後、平和のために尽くしていました」


 ノアが語り始める。

 つまり、ノアは凛心の姪となるのだろう。

 凛心はノアの方を向く。


「……お金あげたほうが良い?」

「急に伯母さん感出さなくていいから」


 凛心のボケ(たぶん)に刀輝が突っ込む。

 戸惑っているノアに陽衣は無言で続きを促す。


「お父様は人間の代表様と半永久的な平和条約を結び、代表様とともに人魔の交流を深めました」

「さすがお兄様」


 ノアの凛心が自慢気に頷く。


「しかし、魔族も人間もそう簡単に、殺し合ったお互いを信用することはできなかったんです」


 ノアは悲しそうに話す。


「些細なことですぐ喧嘩をおこし、発展した大きな街中では魔族と人間による争いが息を絶えない」


 それはきっと、戦争後の地球と同じなのだろう。

 いままで敵だったから信用できない。

 この世界の人間と魔族は、極端に敵だった期間が長過ぎるのだ。


「ついに暴動が起こり始め、戦争を止めることはほぼ不可能となったとき、お父様は私に逃げるように……」


 なるほど。

 戦争になる前に愛娘は逃がそうと。


「あとは皆さんも知ってのとおりです。魔物に襲われて、皆さんに助けていただいて」


 そこで話は終わった。

 陽衣は刀輝と凛心を見る。

 ふたりに委ねるように、


「どうする? ()勇者と()魔王?」


 その問いはひどく厳しいものだとわかっていて、陽衣はこう聞いた。

 その聞き方に刀輝は苦笑をし、凛心はソルとノアを見たままこちらを見ない。


「言いたいことはわかるよ」


 刀輝は答える。

 僕たちもう、この世界の人間ではないと。

 だが、しかし、


「それでも、なんだ」

「そうか」


 刀輝の答えに陽衣は満足げに頷く。

 そして、イマイチ意味がわかっていなさそうな子供ふたりに笑いながら言う。


「良かったな。ここにいたのが勇者と魔王で」


 意味は理解できていないのかもしれない。

 だが、陽衣はたしかに言った。

 ()()()()()()()()()()()()()と。

 刀輝と凛心がふたりを見る。


「力を貸すよ」

「どうしたら良いか教えて」


 その答えにノアはしばらく呆気にとられていたが、しばらくして嬉しそうに頷いた。








「たぶん、お父様の力を持ってしても、戦争は二週間後には始まってしまうと思います」


 二週間は、絶対に耐えてくれるらしい。

 これはいい情報だ。


「なぁ、刀輝。この世界はどんな感じに戦いが始まるんだ?」

「基本的には地球と同じかな。宣戦布告して、いざ開始、的な」


 なるほど。

 しばらくは猶予があり、さらに宣戦布告の時間があるらしい。


「じゃあ、それまでに聖剣と、それから凛心の武器も取りに行かないとな」

「私の武器も?」

「戦力は三人しかいないからな」


 それに、だ。


「勇者の武器と魔王の武器。それすなわちそれぞれの種族の最強の証だ。戦いを止める上でこれ以上の武器はない」


 何でこっちの基本戦力は三人なのだ。

 しかも、今回は敵を倒すことが目的ではない。

 お互いに仲間だと思ってもらうことが大事なのだ。


「そのために使えるものはなんだって使う」


 そう言うと、まず必要な情報整理した。


「そのためにも聖剣のある場所を知らないとな」

「たしか、『メンシュ』の国の国王の城にあるはず」


 その疑問に答えたのはソルだった。


「それ、本当か?」

「学校の教科書に載ってるからね」


 一般常識だとばかりに答えるソル。

 自分が知れるはずもないのになぜか妙な敗北感を感じる陽衣。

 その気持ちを押しつぶし、次に必要な情報を考える。


「魔王の武器ってなんだよ」

「杖剣。杖と剣の良いとこ取りみたいな」

「あぁ、それなら」


 凛心の言葉にノアが答える。


「私が城から抜け出すときにお父様からいただきました」


 そう言ったあと腰を見て、


「森で落としてしまいましたが」


 申し訳無さそうに答える。

 その言葉に対し、それなら、と陽衣が立ち上がる。

 ノアの方に手を向けると、


「その状況をよく思い出してくれ」


 ノアは言われた通りに思い出す。

 そうすると、陽衣は目をつむる。


「次、……聞こえたか?」

「はい。これは【イエス】でよろしいですか?」

「あぁ」


 すると、陽衣の前に空間の歪みができる。

 そこに陽衣はもう片方の手を入れると、


「なるほど、これが杖剣」


 なにかを掴み、歪みから手を抜く。


「わるくないなぁ」


 そこにはノアが落とした杖剣が。

 驚いたように固まるノア。

 ソルがどこか諦めたような笑みを浮かべながら言う。


「ほんと反則だね」

「まったく」


 凛心が激しく同意し、刀輝は苦笑いだ。

 陽衣は未だうっとりしながら杖剣を見ている。


 三分後、刀輝が陽衣を小突いてようやく我に返ったのであった。

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