名前と呼び方
短いです。あ、いつも短いや。
「少し聞きたいことがあるんだけどいいか?」
朝、起きてすぐに、陽衣はそんな一言を発した。
昨日契約が終わったあと、一緒に住むことになってからが大変だった。
特に陽衣は、陰キャとオタクの二重の路線でキャパオーバーだった。
女神の部屋の確認、(無断で入ったら……と言われた)や、キッチン、お風呂場など意外と女神が女子だったことに驚いていた。
まあ、その中でも一番驚いたのが、陽衣と女神が契約したあの空間が、実は女神の家にある彼女の仕事部屋だったことだが。
女神の家は生きていた世界のつくりと同じで、そのせいで女子の家にお邪魔すると認識してしまった陽衣は、オタクとしての喜びと陰キャとしての緊張で胃がパンクしそうだった。
というか、女神って家に住んでいるんだな、と親近感を覚えた。
家庭的な女神もわるくないなあって思った。
そんなこんなで家を拡張したり(女神が)、部屋を案内したり(女神が)、もちろんチートを渡されたり(苦労したのは女神)してとても疲れて(主に疲れたのは女神)一日目は終わった。
こうして二日目の朝、朝ごはんを一緒に食べながら、ふと疑問に思ったこと陽衣は口にした。
「女神様の名前ってなんていうの?」
すると、女神は困ったような笑みを浮かべながら返答した。
「私に名前はありません」
その返答に、陽衣は一瞬、地雷踏んだかな?と思ったが、当の本人は、むしろ申し訳無さそうにしているので、少しいたたまれなくなってしまった。
その、半分くらい麻痺した思考のまま陽衣はあまり考えずにボソッた呟いた。
「じゃあ、名前を決めないとな〜」
「え!?」
思っていたより大きい反応にびっくりする陽衣。そのまま大きい声を出した女神様の方を向くと、期待と困惑の入り混じった瞳を向けてきていた。
「名前、つけてくれるんですか?」
「まあ、つけなきゃ何かと不便だし、一様、契約的におれとあんたは対等だし。ていうか、なによりこれから二年半以上一緒にいるのにあんた、とか女神様、とかずっと呼ぶわけにもいかないだろ」
そういうと、陽衣は考え始め……
「ん〜と……、神崎女奈、とかどうかな?」
「神と女をうまく入れただけですか?」
「ああ」
「そのままですね」
「そのままだな」
陽衣には名前をつけるセンスが無いらしい。
「他の名前を考えようか?」
「いえ、女奈が良いです」
「良いのか?そんな名前で?」
「良いんです」
そう言うと、女神改め女奈は花が咲くような笑顔をした。
「つけてくれたことが嬉しいので」
柔らかい声音できれいな笑みを陽衣に向けた。
その笑みの美しさをまっすぐに向けられた陽衣はもちろん耐えられるわけない。
顔を真っ赤にして、
「なら良かった」
と返すのが精一杯だった。
それからしばらく無言で朝ごはんを食べ続け、二人が食べ終わったタイミングで、陽衣が
「女奈」
「なんですか?」
「呼んだだけ」
「あなた風に言うと、どこのテンプレですか?」
「なぁ、死ぬ瞬間のこと思い出させるのやめてくれよ〜」
そんな冗談を交わしあった。
「というか、あなたが私のことを呼び捨てで呼ぶのは別によろしいですが、私はあなたのことをなんと呼べば良いのでしょうか?」
「普通に下の名前で呼んでいいけど。てか、敬語もやめてほしい」
「そうですか。では、」
そう言うと、少し心の準備をしてから、女奈は口を開いた。
「陽衣くん。これでいい?」
「何だ、このテンプレすぎる正ヒロイン」
言外で褒める陽衣にくすりと笑みを浮かべると、
「それじゃあお皿を洗いたいから持ってきて? 陽衣くん」
「わかったよ。女奈」
そう言ってお互いに照れた感じを出しながら作業をし始めた。
二人が出会ってからまだ一日しか経ってないことを、まったく意識せずに。
完全に恋愛タグですね




