どうにかしてくれよ(自分は視野には入れてない)
「準備できたか?」
陽衣はレッヒェルンを腰のホルダー付きベルトに、背中にエアインネルングを装備して尋ねる。
刀輝も凛心も準備万端なようだ。
時刻は午前三時、まだ、深夜だ。
チートを使って世界を渡ることはできるが、どこにつくかはわからない。
そのため、どこに出てもいいようにこの時間にゲートを開く。
「でも、こっちの世界と僕たちのいた世界の時間が一緒とは限らないんじゃない?」
「大丈夫だ。そのために時雨がいるからな」
陽衣の言葉に二人は首を傾げる。
「時雨?」
「だれ?」
「あぁ、知らないんだったな。時の神様の名前。時雨って言うんだ」
まぁ、決めたの女奈だけど。
「時の神はすべての世界の時間が同一に動くようにするのが仕事なんだ。そうしないとバランスが崩れるんだと」
世界はバランスを重視する。
「神は世界それぞれのバランスを揃えるための歯車。いつの日か女奈はそう言ってた」
加護を与えるのだって世界のパワーバランスを整えて、治安が良すぎず、悪すぎずを保つためだ。
白河のの清きに魚もなんとやらだ。
いい塩梅を保つのが良いのだろう。
話が脱線した。
「そんなわけで、あっちの世界の時間は大丈夫だ」
あとは、と。
「二人は大丈夫か? 自分たちの干渉がなくなった後の世界の有り様を見る覚悟は———」
「心配性」
「覚悟はとうにできてるよ」
余計な心配だったようだ。
まぁ、それもそうかと納得する。
(それぞれの種族をまとめた最強同士だもんな)
強大なのは力や魔力だけではないらしい。
戦い抜いたその精神は、陽衣とはまた別ベクトルでとてつもなく強いものなのだろう。
「そうか」
そういうと、陽衣はチートを使う。
「『ゲート』、『瞬間転移』、『虚空』」
続け様にチートを練り込み、繊細に重ねていく。
少ししたところで、ふと陽衣は刀輝に尋ねた。
「刀輝。お前、転生する前の名前は?」
「今と同じだけど……」
なにを聞かれてるかわからない刀輝に陽衣は答える。
「行ったことがないところには『テレポート』は使えないし、『瞬間転移』じゃ世界は超えられない。だから……」
そういうと、陽衣はひとつのチートを使う。
「『歴史書の図書館』」
『歴史書の図書館』
様々な人の歴史をたどれる『歴史書』。
名前の通り、それらの置いてある本棚の集合体だ。
陽衣の使うチートの中でも繊細で、集中力のいるチートだ。
「『勇日刀輝』」
その中でも、刀輝の歴史書を手に取ると、少しの間それを読む。
「……自分の歴史を読まれるのって恥ずかしいんだけど」
「疑似的にぎりぎりそこに行ったことがあるようにしているんだ。すこし、勘弁してくれ」
人の歴史に介入することで、少しだけ目的地を鮮明にさせる。
それにより、『瞬間転移』を擬似的に発動し、それを『テレポート』で補修する。
その状態をキープしたり、陽衣たちがその世界の歪みを使えるように、さらにチートを使っていく。
そして、最後のひとつが使った時、
三人の前には虹色の歪みがあった。
まるで、そこには空間という概念がないかのような幻想的綺麗さと吸い込まれるような色彩の深さ。
陽衣が二人の前に立っていなかったら、そのまま無自覚に入ってしまっていただろう。
「これが、重ねチート『世界転移』だ」
「……綺麗だね」
「吸い込まれるみたい」
二人の力を持ってしてもなおどのようになっているのかわからないそこにある何かは、まさに『神の加護』と呼べるものなのだろう。
その異様な雰囲気に、凛心が尋ねる。
「これ、本当に入って大丈夫なの?」
「たぶん」
曖昧な返事はご愛嬌だと思ってもろて。
「よし、行こうか」
陽衣の声に二人は我に帰った。
陽衣が苦笑しながら二人を見ていた。
「ごめん」
「夢中になってた」
「しょうがないさ。おれも初めて作ったとき思わず自分でその中に入って女奈に助けてもらっているから」
あのときはまだ未熟だった。
ギリギリ半分生きているのかもしれない体と女奈の精神への指示がなかったら、半死状態で世界の狭間で永遠の時間を過ごす事になったかもしれない。
まぁ、そんな黒歴史は置いておいて。
「というわけで、この歪みはお前らの世界に繋がっている」
「わかった」
「行こう」
陽衣は瑠璃色のコートを翻す。
首にかけたヘッドホンも、手にしているグローブも、この日のために作った特注品だ。
刀輝や凛心にも装備は充実させておいた。
そして、ゲートが消える。
いつもどおりの日常が戻る。
そこには、いつもと同じ景色が戻っていた。
陽衣たちはゲートをくぐり抜ける。
空間の歪みによって、自分たちが立っているのかすらもわからないような状況で、進み続ける。
「大丈夫か?」
「僕は大丈夫だよ」
「平気」
先頭を歩いていた陽衣が後ろに¥を振り向いて尋ねる。
歪みの中ではぐれると、世界の狭間を死ぬまで漂うことになる。
そのため、陽衣の歩くペースにしっかり付いてきてもらわないといけない。
三人は虹色の空間の中を歩き続ける。
「なんだろう。歩いているのに地面を踏みしめている感じがしない。かと言って、空を飛んでいる感じでもないね」
「そういうものなんだよ」
だから迷いやすいのだろう。
三人は迷いなく歩き続ける。
そして、ゲートを抜ける。
その先には、
『うわぁ〜〜〜!!!!!』
森の中。
それと子供の悲鳴。
「どうす―――」
陽衣が尋ねる前に、ふたりは走り出していた。
そんなふたりに陽衣はつぶやく。
「その巻き込まれ体質、どうにかしてくれよ………」
久しぶりの高評価餌食だ〜〜(いえぇ〜い)。もしよろしければ、高評価していただけると嬉しいような気がします。(気がするだけじゃくれない? いやいや、またまた〜〜)




