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チーターの待ち人  作者: 春ヶ勢はせる
二章〜勇者世界〜
37/43

夢と図書館

正直、この数日かなり迷いました。本人たちはこうだと言っている気がしましたが、自分がこれでいいのか?と思ってしまいました。ですが、結局こんな感じにすることにしました。暖かく見守ってください。これからも『チーターの待ち人』をよろしくおねがいします。

 陽衣たちが聖剣を取りに行くまであと二日。

 陽衣はひとりで図書館に来ていた。


 明日はどうせ準備にいろいろ時間を使うのだろう。

 是千代とも少し話をしたい。

 そう考えると、本を読むことのできる日が今日しかないのだ。


 あっちに行ったらしばらく本は読めないだろう。

 つまり今日、本をたくさん読んでおく必要がある。

 陽衣は三日間、本が読めなかった死ぬ可能性が出てくる。


 もちろん、三日も行くつもりはない。

 すぐに聖剣が見つかったら、それに越したことはない。

 だが、陽衣は思ってしまう。

 勇者と魔王っていう巻き込まれ体質が働きそうだと。


 とにかく、今日は本が読みたい気分なのだ。

 異論は認めるが受けとめない。


 ということで、朝から本を読みまくることにした。


「まずは、と」


 物語系からだろうか。

 この世界の物語は、魔法や剣術がある世界だからこそ『現実世界の恋愛小説』が妄想とリアルが混ざったような甘酸っぱさがある。

 その感じが、


(とてもいいんですよ。これがまた)


 この世界は決してもともといた現代世界に比べて技術が劣っているわけではない。

 なんならテレビもあるし映画もある。

 家電もあればデパートも大きな駅もある。


 だからこそ物語の質が良いのだろう。

 物語のための世界と言っても過言ではない。


(いや〜、こんな世界おれのための世界みたいなもんだよな)


 本当に物語が尽きない。


 朝から物語を読み漁り読んでは戻し読んでは戻しを繰り返す。

 図書館はルールを守って使おう。

 本を戻さないやつなんて電子レンジで氷を保存するようなバカと同レベルだ。(個人の意見)


 そんなふうに読み漁っているうちに時間は過ぎ、いつの間にか十五時になっている。

 急激に成長した身体を酷使しすぎたのか、陽衣は少し眠くなってきた。


(う〜ん、もっと本を読みたいのに)


 陽衣は机に突っ伏す。

 陽衣は眠気に抗えずに夢の世界に入っていく。


 幸福な夢の世界に。








〜陽衣と女奈が出会って約半年〜


 今日の女奈は、少し様子がおかしかった。

 なにかそわそわしているというか。


 とにかく、ふわふわしていた。

 その様子は抜群の容姿と相まってとても可愛かった。


 とはいえいつまでもおかしい状態でいられてもしょうがない。

 なんなら陽衣が魂の死を迎えてしまう。


「なぁ、今日何かあったか?」

「!! い、いや? 何もないんじゃない?」


 妙に慌てたような感じ。

 しかも、


(『話術師』使ってるな)


 陽衣も『話術師』を使って相殺する。

 加護と加護がぶつかると、加護の力は相殺する。

 つまり、純粋な本人の話術が試される。


 今回の女奈はあまりにも慌てすぎている。

 女奈の嘘をつかない正直な性格もあるのだろう。


(かわいいやつだな〜)


 死んでも本人には言わないが。

 とにかく、女奈がこんなに頑張って隠そうとしてくれているのだ。


「そうか」

「!! うん!!」


 ホッとした顔のあと、満面の笑み。

 最初に出会った時の無表情、敬語はどこに行ったのだろうかとでも言いたくなるような笑顔。


(こんなの分からないフリするしかないだろ)


 本当に信頼してくれているのだろう。

 この半年ほどで、それなりに信頼が芽生えた証だ。


「信頼した相手に嘘つけなくなるのはやめといた方がいいぞ」

「ん? 何か言った?」

「いや〜、なんでもない」


 嬉しく思いながらも小さな声で忠告しておく。

 女奈にも聞こえないような声で。


 朝食をふたりで食べ、女奈は神の仕事に、陽衣は修行を行い、昼食を食べた。

 そして、夜になる。


「はぁ〜あ。今日も疲れたな」


 あくびをしながらリビングに向かうと、普段は陽衣より遅く来る女奈が、今日はもうリビングにいた。

 たくさんのごちそうといっしょに、


「……女奈」

「うん!!」


 にこにこの笑みを浮かべて頷いている。

 にっこにこの女奈に陽衣は困惑気味だ。


「なぁ、今日なんかあったっけ?」

「え?」


 とても驚いたような表情。

 そのあと、呆れたような顔を向けられる。


「なんだよ、その顔」

「本当にわかってないの?」


 わからない。

 無言で女奈の方を向く。

 さらに呆れられたような顔を向けられる陽衣。

 心外だ。


「今日、君の誕生日だよ」

「……あ」


 思い出した。

 たしかに今日は陽衣の誕生日だ。


「本当に覚えてなかったの?」

「ああ」


 完全に忘れていた。


「第一、死んだのに誕生日とか良いのか?」

「細かいことは良いの!!」


 元気いっぱいに笑って返される。


 その後に陽衣の頭を撫でる。

 背伸びして。神以上の微笑みで。


「いつも陽衣からは笑顔をたくさんもらっているから良いの。笑顔を返すことだけじゃなくて、私も笑顔を作りたかったから」


 はっとするような綺麗さ。

 見るものすべてを魅了するような綺麗さと、少し首を傾けたことで揺れる桃色の髪。

 そのひとつひとつの動作が陽衣の心臓を揺らす。


「ほら!! 今日はごちそうなんだよ!!」


 目の前に広がるごちそう。

 どうやら女奈が作ってくれたらしい。

 その中には、さくらのケーキも。


(そういえば、母さんも誕生日はさくらのケーキを手作りしてくれたな)


 そして、陽衣はそれを手伝うのが好きだった。

 目の前のケーキが母と作ったケーキ(思い出)と重なる。


「ん? どうしたの?」


 女奈が目元に触れてくる。


「あれ?」


 そこには一滴の涙が。

 陽衣が気づいていないうちに目元に溜まって今にも溢れそうになっている。


「いや、なんでもない」


 その涙を強引に振り落とす。

 きっと今必要なのは涙じゃないだろうから。


 満面の笑みで女奈に言う。


「ありがとう」


 女奈の笑顔がきれいだったのは言うまでもない。







「……きて……かんじかんですよ」


 誰かの声が陽衣の鼓膜を揺らす。

 目の前で笑っている少女と同じ声。


「……ん?……あ、れ?」


 陽衣は目を覚ます。

 閉館のチャイムが鳴っている。

 どうやら閉館の時間まで寝てしまっていたようだ。


(本を、戻さないと……)


 ぼんやりとした頭で考える。

 思考がだんだんクリアになっていく。

 少しずつ意識が覚醒していく。


「起きてくれてよかったです」


 耳が心地よくなるような声。

 急激に思考が冴えていく。

 突っ伏していた顔を机から上げて、少女の方を見る。


 桃色の髪。桃色の目。艶のある唇。

 そしてなにより、()()()()()()()


「おはようございます。続きは外でお話しましょうか」


 夢の中にいたはずの少女が目の前にいた。







「……………女、奈?」


 まだ出会えないと思っていたばかりなのに。


 諦めない限り、本人の意志には関係なくご都合主義は起こる。


 『()()()()()()()()()()()()()

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