冒険者ギルド
森の中に化け物が現れたからはや三ヶ月。
森の中にぽっかり『虚空』が開いていた。
『虚空』の中ではひとりの少年が修行をしていた。
「っ!! はぁ!!」
自分で銃弾を放ち、その銃弾をランダムに飛ばし、銃弾を切る。
それをひたすら繰り返していた。
左右上下。
縦横無尽に暴れまわる弾丸を一発一発確実に切っていく。
一発、二発と切っていき、ついにすべての弾丸を切る。
すべての弾丸を切った陽衣は首を傾げた。
「これじゃあいつもといっしょだな」
たしかに『エアインネルング』の切れ味は良かったし『レッヒェルン』の弾丸は速かった。
だが、これではただの剣と銃の気がする。
「『感情を乗せる』ってやつがわからないな」
こればっかりは戦いにならないとできない気がする。
いくら陽衣でも修行に戦い並みの感情を入れるのは無理がある。
感情が乗っていないから、そこまでの強さを出せていない。
陽衣はひとつため息をついた。
「まだ、本来のコイツラを見れたことはないなぁ」
そう言うと、陽衣は無意識に一度エアインネルングを振る。
もちろんなにも起きない。
陽衣は自分のしたことに気付くと苦笑する。
どうやら、無意識にまだ未練が会ったようだ。
「はぁ、前に進むって言ったのにいつまで根に持ってるんだ」
もう一度エアインネルングを振る。
今度は自分の意志で。
(振り切れ。前を向く必要はないけど後ろを向く理由もないだろ)
虚空の中で、修行は続く。
帰りに森で魔物を十匹ほど倒して帰る。
陽衣たちは、魔物を冒険者ギルドに持っていくと特別に報酬がもらえるようになっている。
是千代に頼んでギルドに交渉してもらったのだ。
これは、お金などの報酬の代わりに陽衣たちが頼んだものだ。
冒険者になる気はないが、それ以外にお金を稼ぐ手段が見あたらなかったのだ。
十五歳にもなっていない陽衣たちにお金を稼ぐことは難しい。
今までは民に寛大な領主のおかげで、子ども三人で住んでいる陽衣たちに特別金が支給されていたが、いつまでもそれに頼るわけにはいかない。
(ていうか、たしか領主も子どもだったよな)
たしか。
かなり有能な領主で同い年のはず。
来年いっしょに学園に通う事になりそうだ。
まあようするに、自分たちで稼ぐ方法を作ったというわけだ。
そうこうしているうちにギルド本部に着いた。
「こんにちは」
「よ、今日は刀輝や凛心ちゃんはいないのかい?」
「いつもすごいね」
ここ数ヶ月でギルドの人ともだいぶ仲良くなった。
最初は学園生でもない陽衣たちに訝しんでいたギルドの人たちも、陽衣たちが結果を残すとだんだんと話すようになってくれて、いまでは気軽に話せるようになった。
この世界のギルドにも当然のようにランクがあるので、ランク関係なく次々と魔物おを倒していく陽衣たちに興味が湧いてきたのだろう。
「すみません、今日はひとりなんです」
話してくれた人に笑顔で返す。
そのまま受付のお姉さんに魔物を出す。
「よろしくおねがいします」
「これ、ナハティガルですか?」
鳥をそのまま大きくしたかのようなモンスター。
見た目は怖くないが凶暴で、Aランク相当の魔物らしい。
受付さんはため息をつく。
「もうすでに驚きませんよ。あなたがソロでナハティガルを倒してきても」
「ハハハ」
陽衣は苦笑しかできない。
申し訳ない、のだろうか。
「それじゃあ、残りのやつもお願いします」
「……え? 残り?」
受付さんが呆けたような顔をする。
ギルド内もざわつき始める。
だが、陽衣はいつものことだと無視する。
このざわつきにももう慣れた。
陽衣は黙って十体全て取り出す。
「えぇと……。これ……全部、陽衣さんが?」
「はい、そうですけど」
もうこのやり取りはいつもどおりだ。
受付さんはもう一度ため息をつく。
「前言を撤回します。あなたはやっぱり未知の化け物です」
「ちょっ!? そんな事言われたって!?」
倒せたのだからしょうがない。
「とりあえず、報酬が出ないということはないですよね?」
「ええ、それはないと思います。とはいえAランク相当をひとりで十体なんて、それこそSランク冒険者でもないとできない所業なので、すぐに報酬が用意できませんね……」
「まぁ、そうですよね」
ということで、
「報酬が用意できそうになったら連絡ください」
「わかりました」
ということで受付を離れる。
すると、
「なぁ、陽衣。今の本当か!?」
「全部ひとりで倒したのか!?」
「えぇ、まぁ」
これもいつもどおりといえばいつもどおりだ。
しばらく受け答えを行っていると、
「やっぱ、お前らすごいな。是千代学園長が認めているだけはある」
「そうですか」
という感じでいつも終わる。
「よし、今日はおれの奢りだ。飲みに行こうぜ、陽衣!」」
「だから、何度も言いますけどおれは未成年です」
このやり取りもいつもどおりだ。
基本的には良い人が多い。
冒険者ギルド本部はとてもいやすいところだ。
冒険者ギルドを出て、帰り道。
陽衣は考え事をしていた。
(あと四ヶ月だ)
あと四ヶ月で入学式だ。
陽衣が入学すると言ってから、刀輝と凛心も学園に入学すると言い始めている。
なにかと学園生の肩書は便利なので、それは良いと思う。
だが、
(早いうちに、ふたりが戦力を出せるようにしてあげないとな)
今のままじゃ、刀輝が本気を出せない。
凛心は魔力が開放できていないだけだが、刀輝の場合自分の相棒がいないのと同じだ。
(自分にあった剣を探すのって難しいからな)
しかも一回相棒を見つけているのだ。
なおさら探すのなんて難しいだろう。
「どうするかな〜」
帰り道、陽衣はひとり考える。
二章開始しました。




