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百パーセント

「……え?」


 陽衣の思考が追いつかない。

 陽衣の耳が正常ならば、女奈はかなりやばいことを言っていた気がするのだが。

 目の前で女神以上の笑顔をしている女奈にワンモアをプリーズしてみる。


「もう一度言ってくれ」

「だから、これからの修行は私を倒すこと」

「はぁ!!??」


 さも当然かのように言う女奈に驚き叫ぶ陽衣。


「お前、自分がなに言ってるのか分かってるのか?」

「わかって言ってるんだよ」


 言っていることと笑顔のきれいさのギャップが激しい。

 陽衣はこの現実知らずの女神に現実を教える。

 陽衣は女奈を指差した。


「まずな、お前、神」

「そうだね」


 なに言ってるのか、今更? みたいな顔をする女神様。

 その顔の確度は心臓に悪いからやめてほしい。


 次に陽衣は自分を指差す。


「おれ、人間」

「うん、それもわかってるよ?」


 まだわからないという顔をする女奈。

 そんな女奈に陽衣は言う。


「神と人間がどう張り合えって言うんだよ!?」

「種族? みたいなものは関係ないんじゃない?」

「それは、魔族とかエルフに使うものだ! 天使以上は規模が違う!!」

「えぇ?」


 心外だとばかりに言ってくる女奈。

 神様は人間が神と張り合えると思っているらしい。


「これが、戦闘経験のあるやつなら話は変わる。けど、おれは戦闘経験ないだろ?」

「まぁ、それはそうだけどね」


 まだ、やらせる気なのか。


「う〜ん、最近の陽衣は頑張ってるし、いけると思うんだけどな〜」

「いきなり神は分が悪い、無理だ」


 できるよ、と繰り返す女奈と無理だ、と繰り返す陽衣。

 まるで、子どもの言い合いのようだ。


「できるって」

「無理だ。できない」


 ひたすらこれを繰り返す。


「そんなに私が怖いの?」

「怖いとかじゃない。いまのおれでは百パーセント勝てないって話だ」

「そんなことないよ」


 ふと、女奈が声色を変えた。

 まるで、女神以上の微笑み。


 これが戦略なら良い。

 まだやりようがある。

 だが、


「陽衣が思っているより陽衣は強いよ」


 無自覚にこういうことをしてくるからタチが悪い。


「それでもだ。まだ、おれには――」

「そんなことないよ」


 なおも突っぱねようとした陽衣を遮る女奈。


「百パーセントという言葉を使える時っていうのはひとつしかないんだよ」


 いつだかわかる? と聞いてくる女奈。

 陽衣は考えてみるがわからない。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 笑って答える。


「百パーセントっていう言葉は百パーセント存在しない。この言葉が使えるのはここだけだよ」


 優しい微笑み。


「人生は0.1パーセントから99.9パーセントでできている。人にできないことなんてないんだよ」


 人の考えすら変えてしまう力強い言葉。


「作ろうと思えばタイムマシーンだって作れるし、努力すれば落ちこぼれだって社長になれる。それが人生」


「大事なのは変えようと思う気持ち」


「気持ちの強さは努力の大きさと比例するから」


 気持ちの強さ、か。

 なら陽衣にはダメだ。

 陽衣には自信がない。


「それでも、」

「自分を信用できない?」


 無言の肯定をする。


「そっか〜」


 だが、女奈は笑っていた。


「それなら、」


 包み込むような優しさで。


「君じゃなくて私を信じて?」


 女神以上のきれいさに、


「私は神なんだからさ」


 少しの茶目っ気を添えて。


 その笑顔と言葉に、陽衣は思ってしまう。


(ほら、お前には勝てない)


 これには陽衣もお手上げだ。

 女神様を信じる以外の選択肢を根こそぎ消されてしまった。


「勘弁してくれよ〜」

「? 何か言った?」

「いや、なにも」


 おまけに難聴ヒロイン。

 こういうところだ。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()


「そっか〜、お前は女神だったもんな〜」

「なに?」


 急に何か人を小馬鹿にするような陽衣に警戒する女奈。

 だが、今回の陽衣は女奈から目を見て逸らした。


 少し頬を赤くして。


「いや、本当にそうだなって」

「!?」


 この時、陽衣が目を逸らしてなかったら見えただろう。

 真っ赤に染まる女奈の顔が。


 それ以来、女奈と陽衣は週四ぐらいで上手をするようになった。

 結果は男の尊厳的に言えない。








「……むにゃ、……ん?」


 陽衣は研究室の机の上で目を覚ます。

 いつの間にか寝ていたらしい。


「ははっ」


 笑いが溢れる。

 良い夢だった。


 笑いながら陽衣は考える。


 ひょっとしたら、


(気づいていたのかもな)


 あのときの陽衣は見限られるのが怖かった。

 本人ですら気づいていないものだったが、いま思い返したら確かにそのような感情は思い当たる。


(お前は、おれの気づいていないところにまで目を当ててくれてたのかな?)


 恐怖。

 女奈に見限られるのが怖かった。

 自分の底を知られてしまうのが怖かった。


 陽衣は底のある凡人なのだから。

 だが、女奈は、


「私を信じろ、か」


 そう言って机の上を見る。


 そこには、陽衣は作っていない片手銃が、

 黒塗りのシンプルな見た目の片手銃。

 その銃を手に取る。


 鑑定してみると、


「『記憶の銃』か」




 『記憶の銃』

 女神の優しさと少年の記憶が混ざり合った銃。

 何かを信じる限り弾が切れることはなく、感情によって形状が変わる。

 思いを力に変えることができる。





「これは、なんとも」


 またぶっ壊れの銃ができたものだ。

 きっと、陽衣の思い出を材料にしたのだろう。


「本当にできるもんだな」


 どうやってできたのかは知らないが。

 何なら陽衣は寝ていただけなのだが。


 そんなことはどうだっていい。

 良い夢が見れたのだから全部オッケーだ。


「記憶……」


 記憶と言われて真っ先に思い浮かぶのはあの笑顔。


「笑顔……『レッヒェルン』とか」


 レッヒェルン。

 

「わるくないなぁ」


 この銃も、あの夢も、悪くない。


 このあと、久しぶりに外に出た陽衣は太陽の光の強さに目を開けられなくなったらしい。

もう少し幕間に付き合ってください。

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