チーターの本気
今回は短いです。
「ふぅ〜」
なんとかふたりがやられる前に帰ってこれた。
なんなら先にふたりに回復魔法を使ってやりたいところだが、
「あいつ、意外と知能も高そうだからな」
強者を前にして逃げそうだ。
逃げられたら元も子もない。
幸いなことに、ふたりともまだ大丈夫そうだ。
なら、やるべきことは一つ。
「速攻で終わらせる」
そう言うやいなや、『瞬間移動』で魔物の前に立つ。
そして魔物が反応するより早く、『身体強化』を使って一発お見舞いする。
続けて腹に一発、続けざまに回し蹴りをぶっ放す。
もう鱗なんて関係ない。
「う゛あ゛ぁ゛あ゛」
魔物が地にひれ伏す。
「よくもやってくれたな!!」
怒りをそのままぶつける。
「お殴りぶっ殺す!!!」
ただの八つ当たりを繰り返す。
衝撃で地面に亀裂が入る。
「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛」
魔物がわめき散らかす。
悲鳴のようなものをあげる。
その声すらも、
「不愉快だ」
そう言うと、陽衣はとある魔法を使いだす。
(そういえば、女奈が言ってたな〜)
『この魔法はかなり強力で、現世にある物質なんてほぼ消し飛ばせる。でも、その代わり―――』
「人に使えば死ぬどころか血の一滴も残らない、か。」
『緊縛』『拘束』『金縛り』を使って一歩も動けないどころか筋一つも動かせない状態の化け物を見下ろして言う。
「おれ、エセ潔癖症なんだわ」
今思いついた設定だけど、と不敵に笑う。
「血も唾液も飛ばない。おれとお前の結末にはもってこいだな」
『魔力効率上昇』『感情上乗せ』『魔力無限上昇』『殺意』これでもかと言うほどに加護を使っていく。
「さあ、蹂躙の時間だ」
そう言うと、ためていた魔力が禍々しく黒く光った。
「破壊魔法、『破滅』」
破壊魔法。
目の前にあるものすべてをなぎ払い他者の追随を許さない、圧倒的な破壊の塊。
触れたらそのものは消滅する。
そこには血の一滴も、毛の一本も残らない。
陽衣の無限に上がる魔力に従ってただ純粋に破壊されるのみ。
強力な力を持った化け物ですら、理不尽に黒き粒子となって消えていく。
痛みも嘆きも許されずに。
「ほら。もうさんざん暴れて疲れただろ?」
目の前の禍々しい光景とは裏腹に優しい声が響く。
「大人しく一生寝ていろ」
怪物が最後の力を使って炎を吐こうとするも、口から出る前に消えてしまう。
ありとあらゆるそのもののすべてを破壊する。
その姿はまさに――蹂躙。
「おやすみ」
陽衣がそう言うと同時にこの世界からさっきまで暴れていた化け物は消えた。
ふたりに回復魔法をかけたあと、ふたりに先に帰ってもらった。
ふたりには、是千代に報告してもらいに行っている。
そして、陽衣は声の正体について調べていた。
「あの声は完全に……。いや、でも」
正直、まだ混乱していた。
あの声は、
聞き間違いじゃなければ、
とりあえず声が最後に途切れたところまで帰ってきた。
「ここ、だよな?」
なにか手がかりはないのか?
どこかに名残か何か無いのか?
「『過去情報再現』」
『過去情報再現』
その場に起こった物事を記録として残す加護。
ここに来て陽衣は加護を遠慮なく使い始めた。
それほど手がかりがほしいのだろう。
『そこで、いま出せる全力の魔力を出して』
「ん?」
最後のところ。
怪物が出てくる前。
わずかに何かが光ったように見えた。
もう一度見直す。
間違いない。
何かが光っている。
「あの魔物は純粋に強大な魔力に引き寄せられただけで、この声は別のものを見せたかった?」
それならば、
「もう一度魔力を出すだけだ」
そう言うと、陽衣は魔力を引き出した。
大地が揺れるほどの強大な魔力。
それに呼応するように、先程まで何もなかった場所になにかが出てきた。
「なんだ?」
光とともに出てきたのは一本の、
「これ、剣か?」
一本の剣。
よく漫画とかで見るような片手剣。
陽衣の目から見て、かなりの力がありそうだ。
だが、
「なんでおれの魔力に反応したんだ?」
それがわからない。
陽衣は一つため息をついた。
「とりあえず、手にとって調べてみるか」
そう言って、剣に触れる。
そのときだった。
剣が今までで一番強烈な光を放った。
「っ!? なんだ!?」
そして光が収まり目の前には――。
「女、奈?……」
久しぶりにちゃんとした(?)あとがきです。今回はたくさんチートが出せて個人的にとても楽しく書けた回でした。




