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チーターの待ち人  作者: 春ヶ勢はせる
第一章〜思い出の剣〜
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怪物と不完全なチーター

三回行動だと!? そんな事があっていいのか!!?

「聞こえた?」

「ん。あっち」


 魔物の喚き声を聞いた刀輝と凛心はすぐに起きあがった。


「陽衣が!!」

「たぶん応戦している」


 すぐにとんでもないオーラの方向へ向かう。


「っ! このオーラ!?」

「かなりやばそうなオーラ!!」


 これはやばい。

 いくら陽衣でも……。


 いや、

 陽衣は負けない。

 彼は最強のチーターなのだから。


「すぐ行くよ」

「ん」


 ふたりは最速で禍々しいオーラのする方へ向かった。







「ぐっ!? 嘘だろ!?」


 なんという重さ。

 残り少ない魔力でぎりぎり障壁のようなものを作れたが、それでも口から血が溢れ出てくる。


「これは……」


 手足の長い二足歩行怪獣。

 なぜこんなところにこんな強い魔物がいるのか。

 なぜ陽衣の魔力に反応して出てきたのか。

 知りたいことたくさんある。


 でもまずは、


「こいつをどうにかしないとな」


 この魔物はかなり強い。

 万全の状態ならまだしも、チートも使えない、魔法も使えない、身体強化もできないといういまの陽衣では勝ち目がないレベルに強い。


「いや、どうしろってんだよ!?」


 とりあえずパンチを紙一重で避けながら必死に思考を巡らせる。

 このままだと、百パーセント負ける。

 勝てる確率が一パーセント以下も存在しない。


 マジな肉食の恐竜だ。


(どう足掻く!?)


 このままだと負ける。

 この言葉しか今は出てこない。


 大きいくせに動きが素早い。

 攻撃力も高い。

 それに、


「くっ!! 固い」


 表面の皮がとてつもなく固いのだ。

 すでに二、三発パンチを当てているが、デコピンで大木をへし折る陽衣のパンチを喰らってもかけらもダメージを受けているように見えない。


「このままだとっ!!」


 最悪の場合、

 ふたりが来る前に負ける。


 きっとこの物音を聞いてふたりともこっちに向かって来てくれているはずだ。

 ふたりが来るまで耐えなくてはいけない。

 いけないが、


(きつい!!)


 今のままだとその前にやられてしまう。

 とりあえず陽衣は逃げに専念する。


 左右で交互に打たれるパンチを紙一重で避ける。

 そのあと、炎熱魔法をギリギリの魔力で相殺する。

 噛み付いてくる魔物のあごをなんとか躱し、すれ違いざまに一発パンチをお見舞いする。


「くっそ!! マジできつい!!」


 まるで効いてない。


(せめて、武器があればっ!!)


 今の陽衣ひとりではこの化け物は倒せない。


「なんとか!! 避けきる!!」


 ふたりが来るまでも辛抱だ。

 それまでなんとしてでも避けきる。


 二連続パンチを躱し、口から炎を吐こうとするタイミングで距離と取る。

 爪で引っ掻こうとする手を避けて、時間を稼ごうとする。

 





 戦い始めてから約十分。

 もうそろそろ陽衣のスタミナもなくなってきてしまった。


 避けることに全力を尽くしてきた陽衣だが、魔物の攻撃がそれ以上に早くて重い。


(やばいか!?)


 じゃっかん反応が遅れて来ている。

 このままじゃすぐにやられる。


「おぉうっ!! らぁ!!」


 ギリギリで対応するも、もう限界か。


(いやっ!! まだだ!!)


 最後の気力を振り絞る。

 ここで負けるわけにはいかない。


 意地でも耐えきりたい。


 だが、気合だけではどうにもならない所までもう来ていた。


 もう服は破け、全身ボロボロの血まみれだ。

 陽衣の腕も足も、もう上がらない。

 目の前の魔物(ばけもの)の口から出てきた炎魔法を対処する気力がもう陽衣にはない。


 陽衣はただ、目の前に広がる炎を見ていた。


『見ているだけか?』


 不意に誰かの声。

 男の声が聞こえた気がする。


 今までの誰の声でもない。

 なのに妙に安心するような、聞いたことないのに聞いてことあるような、そんな声が聞こえた気がした。


『もう、抗えないのか?』


 そんなわけ。

 そんなわけ!!


「そんなわけないだろ!!!!」


 絶対の死に抗う。

 そんな陽衣を無情にも炎は包んでいき、そこに残ったのは―――、









 刀輝と凛心がついたときには、陽衣はそこにはいなかった。


「!! 陽衣!? どこだ!?」

「どこにもいない!?」


 ふたりともまだ陽衣は生きていると思って全力で急いできた。

 空間の歪みなども途中に存在したが、そんなもの知るかとばかりに突っ走って全力で来た。

 なのに、


「どこにも、いない」

「っ!! 刀輝!! 先に自分の心配!!」


 目の前には厄災級の化け物。

 刀輝と凛心も万全ではない。

 それでも、


(自分の命優先って言ったのに)


 それでも、陽衣がやられたなんて信じられなかった。


「絶対こいつを倒して陽衣を探し出そう!!」

「ん!!」


 ふたりは叫んだ。


 目の前の厄災と親友の死。

 ふたつの絶望から抗うために。

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