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チーターの待ち人  作者: 春ヶ勢はせる
第一章〜思い出の剣〜
23/43

体が覚えている

「かなり奥まで来たぞ」

「そうだね」


 森の中に入ってからしばらく進んだ。

 だが、一向に魔物が現れない。


(ほんとに意味がわからん)


 陽衣たちも万全ではない。

 なにもないならないに越したことはないのだが。


 それからしばらくして。


「ねぇ」

「気づいてる」

「ん」


 奥に進めば進むほどに空気が重くなっていく。

 最初は気にならないほどで異常にある程度耐性のある三人は気づかなかったが、だんだんと重くなっていった。

 いまの重圧だと、もう普通の人間には耐えられないだろう。


 つまり、


「奥にやばいのがいるってことだね」

「行きたくねぇな」

「万全じゃないけど大丈夫?」

「もしやばかったら、自分の安全優先で行くぞ」


 その言葉にうなずく二人。


 そのままさらに奥に進んでいく。


 歩いた距離が森に入ってから十キロぐらいになったところで。


「っ!!!」

「ここだな」


 一番空気が重い。

 だが、


「なにもない」


 そう。

 誰もいないし何もないのだ。

 原因が見つからなければ何もできない。


「なんだ? どういうことだ?」


 確かに空気はここが一番重いのだ。


 なのに、なにもない。


 なにもないはずだ。

 だが陽衣には、


(呼ばれている?)


 なにかに呼ばれている気がしてならないのだ。

 声など聞こえないのに。

 まるで、陽衣がそこに行くのが運命であるというかのように。


「もう少しここを調べてみよう」


 そう言って調べてみることにした。


 凛心のとんでもない魔力によるとんでも魔法をぶつけてみたり(これで全力じゃないのだから恐ろしいものだ)、限界まで穴を掘ってみたり、わざわざ街のほうから魔物を引き寄せてそこら周辺で倒したりもした。


 だが、一向になにも起きない。


「なにも起きないね」

「ん、ここじゃないのかも」


 刀輝と凛心も少し諦めだしている。

 しかし、陽衣はずっと妙な気配を感じていた。


「明日もう一回だけ調べさせてくれ」

「陽衣がそこまで言うなら」

「ん、わかった」


 そう言って、今日は眠ることにした。

 幸い、森の中には魔物はいないに等しい。

 安心して眠れる。


「飯、作るか」

「今日は僕が作るよ」


 夜ご飯を作ろうとした陽衣を刀輝と凛心が止めた。


「こういう野宿のときに作るご飯はぼくが一番慣れてるよ」


 戦争のとき、勇者であった刀輝はだいたい野宿をしていた。

 凛心と違って城で待ち構えているいるわけではなく、かと言って人間たちの中でも遊軍として戦っていた刀輝は野宿に慣れているのだ。


「何で遊軍だったんだ?」

「勇者がいたら、その場所が狙われるでしょ?」

「ん。刀輝はそういう気遣いができる男」


 なぜか凛心のほうが誇らしげだった。







 ご飯が終わって刀輝と凛心はもう寝ている。

 そんな中、二人から少し離れたところで、陽衣はひとり夜空の月を見ていた。


「お前もいま、あの夜空を見ているのかな?」


 そうだといいな、とつぶやく。


 毎晩、陽衣が夜空と月を見て思うことだ。

 夜空はどこに言っても夜空だ。

 この世界のどこかにいるならば、きっと女奈も同じ夜空をみているのだろう。


 そうなのかな?

 そうだといいな。


 陽衣はそうであると勝手に思っておくことにした。

 この世界のどこかに女奈がいると信じて。


(さて、戻るか)


 明日もきっと朝からやることがたくさんある。

 明日に備えて寝ておかなくてはならない。


 陽衣がふたりのいるところに戻ろうとしたその時、


 ふいに、どこからか声が聞こえた。


『陽衣、こっちだよ』


「……え?」


 その声が陽衣の心を揺らした。


 いや、おかしい。そんなはずがない。

 絶対にありえない。


 心で精一杯の否定をする。


 それでも、体が言っている。

 耳が震えている。

 脳が叫んでいる。

 血が暴れている。

 心臓が高鳴っている。

 そして、


 ()()()()()()()

 これは完全に彼女の、いや、()()の声だと。


(い〜や、そんなわけ無いだろ)


 流石に幻聴だ。

 そんな事があるわけがない。


 そんな陽衣の考えを否定するかのように、


『こっちだよ』


 また声がする。


「嘘だろぉ」


 いや、本当は嘘であってほしくなんかない。

 だが、心はそんな事はありえないと言っている。


 しかし、そんな心ももう限界だった。


『早く〜。こっちだよ』


「あぁ」


 それがありえないとかもう、どうでも良かった。

 ただ、少しでも女奈の声を近くで聞きたかった。


 声のする方へ向かう。

 その方向が、今いる場所がどこなのか、もう陽衣にはわからない。


 それでも、声のする方へ向かう。


 そして、


『ここだよ』


「ついた」


 声のする場所にたどり着いた。

 そこはなにもない場所だった。


 だが、陽衣には関係ない。


「ここで、ここでなにをすればいいんだ?」


 その問いに対し、声が答える。


『そこで、いま出せる全力の魔力を出して』

「あぁ」


 そう言うと、陽衣は全力で魔力を出した。


 すると、









「あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛」


「おいおい、まじかよ!!」



 出てきたのは厄災級の化け物。

 バカみたいに強大なオーラ。

 二足歩行で歩く姿はまるでティラノサウルスだ。

 たぶん、今回の事件の原因となっている狙いの怪物級魔物だ。


 その強さは、


「おれたち三人でも倒せないレベルじゃねえか」


 かなりやばい強さだ。


「っ!! 一人で耐えるしかないのか!!」


 耐えるしかない。


 陽衣は一瞬で戦闘態勢に入った。


 もう、女奈の声なんて気にしている場合ではなかった。


「とりあえず死なないように――」


 その言葉と陽衣が怪物のパンチでふっ飛ばされるのは同時だった。

こちらでは、久しぶりの高評価餌食です。よろしければ感想、高評価お願いします。意外とまじでモチベーション上がるんですよね〜。

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