慌ただしい
その日は特に騒がしかった。
陽衣たちが買い物をした帰り道。
やけに慌ただしい雰囲気の冒険者たちがいっぱいいた。
さらに、冒険者たちが祭りとかに使われる広場に集まっていた。
ちなみに、陽衣たちは年齢的にまだ冒険者になることができない。
まあ、三人の目標が今のところ女奈を含んだ四人でこの世界を楽しむことなので、冒険者になるつもりはないのだが。
刀気と凛心も、早く女奈に会ってみたいと言っているので一刻も早く探しに行きたいのだが、是千代が今の陽衣では危ないと言うのだ。
嘘かと思って無理して『心情理解』を使ったが、嘘を言っている様子ではなかった。
それどころか、どこか必死なような感じが見えた。
一応、彼もかなりの実力者であるし、まだ底が見えない分、今のまま味方サイドにいてくれたほうがありがたい。
ということで、まだ探すことができないのだ。
まあ、彼女がそんな簡単に死ぬはずがないのだ。
それに、諦めてない限り『奇跡』は起きる。
以上のことから、陽衣が女奈を見つけることは決定事項だ。
しばらくは我慢。
今は我慢。
信じて我慢。
話を戻しまして。
「やけに街全体が騒がしいな」
「そうだね。特に冒険者たちが」
「ん。不吉な予感」
「フラグが立った気がするな」
しばらくその集まりを見ていると、二人が家の方を見た。
是千代が家に訪れているらしい。
ただ事じゃない予感がした三人は、急いで家に帰った。
「おかえりなさい、陽衣クン、刀輝クン、凛心サン」
「ここは刀輝と凛心の家だけどな」
軽口を叩き合って家に入る。
家のソファーに座ったタイミングで話し始めることにした。
「それにしても、めずらしいね。是千代さんが二日連続で家に来るなんて」
「それが、まあまあやばいことが起きまして」
「それはマジモンか?」
「今回はけっこうなマジモンっすね〜」
「そうか」
刀輝と陽衣で、是千代に事情を聞いてみる。
「それで? 何が起きた? あの人数の冒険者とか普通にまずいってレベルじゃねーぞ」
「それがですね〜。魔物がこの街の近くに現れましてね〜」
「魔物が!?」
魔物、モンスター、野獣、敵、化け物。ライトノベルによって呼び方は様々であるが、意味するものは決まっている。
人類の敵となる危険な生き物。
「通常そういうのって森みたいな自然だけに出てくるんじゃないのか?」
「それがですね〜」
是千代が言うには、今までの魔物は基本的には街に出るようなことはなかった。
それがこの前、街の近くに数体出現したんだそうだ。
「しかし、なんでだ?」
「それがわからないんすよね」
なぜ魔物が街の近くに出るようになったのか。
「考えられることは?」
「森でなにかあったとか、ですかね」
魔物が住む森。
そこになにかあった。
そこまではわかる。
しかし、逆に言うとそれしかわからない。
それ以上のことがわからない。
「何があったのかな?」
「わからないのが怖い」
「まぁ、恐怖しかないな」
「恐怖のきの字も感じてなさそうな皆サンが言う言葉ではないっすね〜」
「バカ言え。おれたち子供だぞ」
まったく、何を言っているのか。
「それで?」
もうそろそろ真面目な話をしよう。
「なんでそんな話をおれたちにしたんだ?」
その言葉に当然のようにニヤッと微笑む是千代さん。
「もちろん森の中を調査してもらうためっすよ」
「話聞いてたか? おれたち子供なんだが」
これだからこの人は。
「まあ、僕たちの話は一先ず置いといて。学園の子たちは連れて行かないのかい?」
「いや〜、危険じゃないっすか〜」
「そんな場所にさらに小さい子供を連れて行こうとしている件について」
話が真面目になりきらない。
どうしてくれるんだ。
「まあ、ぶっちゃけた話をしましょう。このことを街の人に知られるわけには行かないんですよ」
「混乱を呼ぶからか?」
無言の肯定。
「なので、バレないうちに最大戦力をつぎ込む必要があるんですよ」
「あんな開放的に作戦会議していたのに?」
「ご愛嬌っすよ」
そういうことらしい。
「そのためには、あなたたちの力が必要なんですよ。あなたたちがこの街の最大戦力なんです」
なるほど。
「つまりぶっちゃけた話をすると、魔物は倒すか森に引き返してもらいたい。けど戦力が足りない。だからおれたちの力を利用したい、と?」
「さっすが〜、話がわかるじゃないっすか〜」
なるほど納得。
「でもな〜。二人はともかくおれ、チート使えないんだよなぁ」
「それを言うなら僕も剣がないんだけど」
「私もまだ魔力が全開じゃない」
三人だって全力が出せるわけじゃない。
「第一、そんなに冒険者って弱いのか?」
「冒険者には、街を守ってもらわなくちゃなんですよ」
「是千代さんは?」
「自分がいままで抜けるときってだいたい緊急事態でして」
学園からいなくなると怪しまれるらしい。
「それだと俺たちしかいないじゃん」
もう決定事項らしい。
「はあ、しょうがない。二人もそれでいいか?」
「緊急事態だしね」
「やるだけやる」
「話が早い」
「ただし」
条件をつける。
「おれたちが逃げたいと思ったら逃げるからな」
「わかりました」
というわけで勇者も魔王もチーターも、そんな簡単に平穏な毎日は送らせてもらえないらしい。
話が動きます。




