思い出
今日の陽衣はごきげんだった。
なぜなら、
「ここがこの街の図書館か〜」
この言葉通り、陽衣は図書館に来ているからだ。
陽衣はここ二週間、本を読めていなかった。
なぜか最近は読書欲が以前ほどではなくなったが、完全になくなったわけではない。
二週間も本を読まないとさすがに禁断症状が出始める頃だ。
ということで刀輝に場所を教えてもらい、図書館に来た。
ちなみに刀輝と凛心はお留守番している。
二人でラブラブしてくれ。
「にしても、でかいな」
前の世界の図書館よりかなり大きい。
どっかの大きい美術館ぐらいの大きさだ。
「これは楽しみだ」
そう言うと、陽衣は目をキラキラさせて中に入っていった。
結論から言おう。
この図書館やべぇ。
「何だここ。一週間は住み込めるぞ」
それぐらいの楽園だった。
物語、エッセイ、随筆、昔話、それだけではなく、魔導書や剣の指南書とかもある。
まさに宝庫。
もちろん図書館なので、基本的に静けさを保っている。
それでいて魔法や剣を試せる防音スペースも存在している。
すごい。
完璧だ。
これぞ図書館の完成形。
「マジですげーな」
しばらくその雰囲気を味わったあと、陽衣は本を読み始めた。
その日の陽衣はありとあらゆる種類の本を読んだ。
陽衣は一度集中し始めるとしばらく集中を解かない。
ものすごい量の本をかなりの速さで読み漁っていく。
そうしているとあっという間に夕方になり、図書館が閉まる時間になってしまった。
「はあ、楽しかった」
すると、司書さんが話しかけてきた。
「君、すごい集中力だね」
「はい。本が好きなので」
「そっか。また来てね」
「はい。また明日、来ます」
陽衣はこの図書館をとても気に入った。
次の日、陽衣はまた図書館に来ていた。
この図書館は雰囲気が良いから来たくなる。
それに、陽衣は一日中読書をしたぐらいで欲は満たされない。
陽衣にとって、読書は食事や睡眠と同種だ。
だが、それだけではないのかもしれない。
今の陽衣には基本的な魔法しか使えない。
身体能力は化け物級だが、普段からそんな力は使わない。
つまり、今の陽衣は特別なことができないただの一人の子供なのだ。
十歳の子供が一人で図書館に出かける。
普通、親が一人で子供が出かけることを許すわけがない。
もちろん親が引率する。
陽衣が転生する前の世界でも、十三歳になるまで一人で行かせてくれなかった。
その代わりと言ってもなんだが、陽衣が図書館に行くときいつも母親がついてきてくれた。
子供の頃から本が好きだった陽衣は、よく母親を連れ出して一緒に図書館に行った。
(母さんも、よくあんなに付き合ってくれたよな)
陽衣にとって母親は自慢であり、尊敬であり、目指していた目標だった。
母親一人で育てられたのに陽衣の性格がひねくれていないのは、誰がなんと言おうと母親のおかげだ。
陽衣は、将来頑張ってお金をためて母親にはやりたいことをやってもらおうと思っていた。
だが、事故によって陽衣は死んでしまった。
起きたものはしょうがない。
結果的に少女も守れたし、女奈や刀輝、凛心と言った色々な仲間に会うこともできた。
それでも、一人残してしまった母親に申し訳無さはあった。
きっと、ここまで育てるのは大変だったのだろう。
見えないところでもっと働いていたのかもしれない。
それでも陽衣が行きたいときは、すぐに支度をして一緒に出かけてくれた。
すごい人だった。
自分の母親としてはもったいないぐらいの。
そんな色々な思いを抱えながら、一人で過去を振り替えたかったのかもしれない。
この図書館にいる自分が、過去の自分と重なった。
(母さん、今の俺は幸せです。育ててくれてありがとう)
少しでも届いてほしい。
おれは幸せだと。
あなたのことをいつまでも尊敬していると。
「よし、本読むか」
辛気臭い話を陽衣の母親は嫌っていた。
ここでこの話はおしまい。
ここは本を読む場所だ。
今は本を読もう。
それ以来、陽衣はこの図書館に一週間に一回はかならず行くようになる。
思い出とともに。
〜?〜
「あの子、いつもいますね。お母さんとかはいないんですか?」
「それがいつも一人で来るんだよね」
「へぇ〜」
いつもの司書さんとのお話中。
最近いつもいる、あの子の事を話題に上げてみることにしました。
「あの子、本が好きなんでしょうか?」
「どんな本でも楽しそうに読んでいるよね」
どうやら、司書さんもあの子の事をよく見るみたいです。
「気になる?」
「話をしてみたい気はします」
なんであんなに本が好きになったのでしょう。
私はなんで自分が本を読むようになったのかわかりません。
なにかきっかけがあったはずなんですけど。
一緒にお話をしてみたい。
正直、とても気になります。
ですが、
「あんなに集中していると話しかけられない?」
「そうなんです」
あの子の集中力がすごすぎて、話しかけることができません。
いつかお話ができるタイミングがあるといいですけど。
まあ、いつか話せるでしょう。
「あ、もうそろそろ帰らないといけません。お話の続きはまた後日に」
「また来てね」
「はい。またお話しましょう」
そう言うと、少女は図書館を出ていった。
桃色の髪が風になびいていた。
この回は、正直もっと後に出そうと思っていたんですけどね。?の少女は是千代さんと話していた少女とは違う人物です。




