なんだって!?
「なんだって!?」
陽衣は叫んだ。
陽衣の過去を振り返っていたらすっかり夕方になってしまった。
概ね二人からの信頼も得られたようでしばらくは家に停めてくれるらしい。
正直一文無しだったのでとてもありがたいことだ。
そこで、この世界について教えてもらっていたのだが。
「スマホがない!?」
無いらしい。
あの世紀の発明が。
スマートなホンが。
言っておくが本人たちは真面目に話している。
「あぁ、僕もこの世界に来た当初は驚いたよ」
刀輝も神妙な顔をして頷いた。
この世界は基本的に発展している。
魔法と科学がうまく混ざりあった世界となっており永久風魔法を使ったクーラーだったり、水魔法をを使った洗濯機があったりする。
全体的に見ても自然と科学がうまく融合しているとてもいい世界だと思う。
だが、スマホがないのだ。
人によっては依存症まで引き起こす大発明。
複数持っていると人に自慢できる価値の高さ。
ありとあらゆる性能のほとんどが備わった時代の申し子が。
再度言っておくが本人たちは真面目に話している。
「す、す……それってそんなにすごかったの?」
もちろん凛心はスマホなんて知らない。
「あれは世紀の大発明だぞ。あれ一つで電話できるし動画見れるし写真取れるしコンテンツでアニメやドラマも見れるすぐれものだ」
「それってすごいの?」
「僕と陽衣がもといた世界ではすごいことだったんだよ」
ということで、
「陽衣、力を貸してくれ」
「おう、この世界にあったスマホを俺たちで作ろう」
そういう事になった。
それから、陽衣と刀輝はしばらくスマホを作るために時間を費やすことになった。
材料を手に入れ、型を作り、作っては改良を繰り返した。
そして、
「できたぞ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
ついにできた。
電話、カメラ、動画視聴、インターネット、さらには脂肪燃費などまでわかる渾身の一品。
極限まで前世の記憶を絞り出し、思い出せる機能を全てつぎ込んだ。
スマートホン、β版だ。
勇者とチーターが一週間、寝ずに作った。
勇者の方は力尽きている。
ちなみに、このスマートホンはこれからも二人によって機能が追加されていくが、この時の二人はまだ知らない。
やる気を出したオタクの創作欲は怖いのだ。
そんなこともありつつ。
陽衣はこの世界に馴染んでいった。
ちなみに三人が住んでいる街は『バンド』というらしい。
一週間後に初めて知った。
この世界には色々な種族がいるらしい。
人族、魔族、エルフ、精霊、その他にも色々いるらしい。
それだけではなく魔物とかもいるらしい。
魔物は定期的に冒険者が倒しに行くそうだが。
陽衣はこの世界で二人と生活するようになった。
陽衣は二人の仲を考えて出ていくと行ったが、じゃあ宛はあるのか?、という見事なカウンターを喰らってしまった。
それでも陽衣は二人が二人になる時間を多く作れるようにしている。
気持ちはまさに厄介リスナー。
三人での生活も慣れ、本当に周三でくる是千代をあしらい、楽しい生活を過ごしていた。
それでも充実はしていない。
夜、陽衣はいつも同じことを考えている。
陽衣が本当にほしいのは女奈だ。
これは譲れない。
探せるなら今すぐにでも探しに行きたい。
だが、今の陽衣にはそれができない。
持っている力に体がついてこないのだ。
今の陽衣の体は小学校高学年くらいだ。
対して、この世界で魔力の才が出始めるのはもといた世界で言う高校生ぐらいからなんだそうだ。
是千代が言うには15歳ぐらいから魔力があるものには出始めるらしいが。
まあ、刀輝と凛心はもう魔法が使えるらしいが。
最初はお腹が空いていたせいで気づかなかったが、魔力がないと気づいてからは不憫でしょうがない。
陽衣のもらった加護は量が多すぎるため、普通に使い続けると体が持たない。
そのことを女奈と相談し、魔力で任意でしまったり出したりできるようにしたのだ。
つまり、魔力がないと使うことができない。
(『魔力含有量上昇』があるからって甘く見てたな)
今の陽衣には『瞬間絶対記憶能力』を使い続けるので精一杯だ。
『瞬間転移』を使ったときは加護自体が軽いものだったから平気だったが、効力の強い加護は当然使えない。
つまり、今のまま仮に女奈を探すための旅に出たところで自分の命が持たないのだ。
「勘弁してくれよ〜」
弱々しくつぶやく。
今は一人なので、周りの目線も気にしなくて良い。
女奈は元気に生きているだろうか。
せめて、普通に生活できているといいな。
いじめられてないといいけど。
窓から月を見る。
この世界にも、月と太陽がある。
厳密に同じなのかはわからないが。
あの月を今頃、女奈も見ているのだろうか。
見ているといいな。
「はぁ、今日も月が綺麗だな」
そういえば、ファンタジータグなんですよね。一体いつ戦闘シーンが出てくるのやら。




