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チーターの待ち人  作者: 春ヶ勢はせる
第一章〜思い出の剣〜
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勇者の転生

第一章、開始です。

〜ある勇者の思い出より〜 

 

 世界は戦いに満ちている。

 少なくとも、僕の転移した世界ではそうだった。


 魔族と人間が、争い、妬み、そしてお互いに苦しんでいた。

 だから僕たちは、この戦いに終止符を打ちたかったんだ。


「魔王、今日こそ決着をつけよう」

「うん」


 目の前の少女は、気づいたら因縁の相手になっていた。


 召喚されて、勇者となった僕だが、もちろん『勇者』というだけあって、ステータスも高かった。

 だが、それでも彼女とは互角だった。


 いつしか、僕は彼女を倒すために特訓をするようになった。

 だが、彼女は会うたびに力をつけていた。

 お互いがお互いを刺激しあって、更に力をつけていった。


 交差する刃と刃。

 相殺される魔法と魔法。


 それらすべてが、戦いを輝かせているようだった。


 殺し合いというのは残酷だ。

 人も魔族も死んでしまう。


 人と魔族は、殺し合いをしていた。


 そして、僕は人間側に勝利が与えられるように戦わなければならなかった。


 そんな事はわかっていた。

 だが、そんなことがどうでも良くなるくらい彼女との戦いは楽しかった。


 ダンスのように、お互いをよく見て華麗に舞う。






 僕がこの世界に来てからだいぶ時間がたった。


 決着は突然だった。


 一瞬、彼女に隙ができた。


 原因はわからなかった。

 まるで、この世界で彼女のみが一瞬止まったようだった。


 魔王は魔法を発動するが間に合わず、僕はその一瞬をついて彼女に剣を向け……


 気づいたら、僕の胸に穴が空いていた。

 彼女の魔法だと気づいた。


 そして、目の前の魔王は僕の相棒が胸に突き刺さっていた。


「なんで私の魔法が当たっているの?」


 普段、無口と言うか、ミステリアスと言うか……。

 不思議な雰囲気を出している彼女は、珍しく感情をあらわにしてたずねてきた。


「なんというか……その、ね」


 正直に言うと、ためらってしまった。

 彼女の顔に傷を作ることも、このダンスを終わらせることも。


 認めたくないが、認めるしか無いようだ。


「死んでほしくなかった……かな」


 結局はそういうことだった。

 僕は魔王に死んでほしくなかったようだ。


 その返答に、魔王はしばらく呆けていた。

 しかし、しばらくすると笑いだした。


「ふふ、魔王に死んでほしくない勇者」

「勇者としての使命が残っていたから君の胸に今、剣が刺さっているんだけどね」

「たしかに」


 僕も魔王も重症で、ここは戦場で……。

 それでも、ぼくらは笑い合った。


 気づいたら、戦いは中断していた。

 魔族は魔王の、人間は僕の声を待っている。


 それなら、僕たちがしなくちゃいけないことは一つだ。


「魔族のものよ、聴け」


 声自体は小さいのに、妙に響く声。


「魔王はここに宣言する。人と魔族はわかりあえる」


 その言葉に、僕も言葉を繋げた。


「勇者からも約束しよう。わかりあえるよ。誰だって」


 僕たちは、言葉を続けた。


「もうすぐ、僕たちは死んでしまうと思う」

「どうかあなたたちは、お互いのことを大事にしてほしい」

「僕たちが止められなかった殺し合いを、子どもたちに繋げないように」


 そう言うと、僕たち二人はこの世界での生涯を終えた。




 気がつくと見たことない場所にいた。


 生きているという実感はなく、地に足がついている感覚がしない。

 目の前には、桃色の髪に水色の瞳を持つ少女がいた。

 そして、隣には魔王がいた。


「え〜っと、ここはどこかな。きみはだれ?」


 その質問に、目の前の少女はくすりと笑った。

 

 かなりの美少女だ。

 魔王以外で、ここまでの美少女は初めて見た。

 というか、笑われてしまった。


(なんかとてつもない質問したかな?)


 すると、その少女は少し咳払いをして話し始めた。


「いえ、勇者でもそう答えるのが当たり前なんだと思いまして」

「勇者にもっと面白い返答を求めていた?」

「そういうことではないのですけどね」


 その少女は、感情豊かに見えた。

 話を聞いてみると、彼女は女神で、僕と魔王はこれから転生するらしい。

 女神様の力で、記憶を持ったまま同じ地に転生してくれるらしい。


 転生の説明を聞いたあと、一番気になっていたことを聞くことにした。


「女神様はこのあと、僕たちのいた世界は平和になると思いますか?」


 その質問に対する答えは簡単だった。


「それはわかりません。あの世界に住む人々次第です」


 その言葉自体は冷たいようにも見えるが、言葉にはなんとも言い表せないような優しい感情が感じ取れた。


「お二人に加護は必要ないと思いますが、念の為です」


 そう女神様が話すと、僕と魔王の周りに光が現れた。


「なにをしたの?」

「おまじないです。『奇跡』を信じるおまじない」


 そういうと、僕たちの体が薄くなり始めた。

 どうやら、本格的に転生が始まったらしい。


 最後に魔王がたずねてきた。


「私と転生してよかったの?」


 その言葉に笑みで返すと、僕たちは完全に消えた。






〜二人が消えてから〜


「ん〜? 女奈? なんかごきげんだね」

「今日は素敵な転生者さんが来たんだ。ここに来る人は、主神に見込まれた人だから加護を渡さなくちゃいけないんだけど、何にするか迷っちゃったよ〜」


 そう話している女奈の表情はとても輝いていた。


「あの二人なら加護なんかなくても幸せに暮らせそうだけどね」

「女奈がそこまで言うのか」


 女神様が言うなら、とても心のきれいな人たちだったのだろう。


「おれもその二人にあってみたかったな〜」

夏休みに腑抜けすぎました。誠に申し訳ございません。

無口なキャラが笑う瞬間っていいよなぁ。

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