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チーターの待ち人  作者: 春ヶ勢はせる
プロローグ〜女神の涙〜
10/43

君は私に

プロローグラストです。

〜神崎女奈視点〜


「行っちゃったな」


 さっきまで感じていたぬくもりは光の粒子とともに消えてしまった。


「結局言えなかったな」


 彼にはたくさん感謝していた。

 嬉しさも、楽しさも、心躍る居心地の良い空間も。

 そして、


(この熱く鳴り止まない胸の鼓動も、君と出会わなければ知らなかった)


 ねぇ、知ってた?

 君がここに来たとき実は結構ワクワクしてたんだよ。

 ねぇ、知ってた?

 君のつけてくれた名前、結構気に入ってるんだよ。

 ねぇ、知ってた?

 一ヶ月記念のとき、君に抱きついたのは照れ隠しでもあったんだよ。

 ねぇ、知ってた?

 君が一緒に転生してくれって言ってくれたとき、


「あんなに反論してたけど、実は嬉しかったんだよ」


 嬉しかった。楽しかった。優しかった。恥ずかしかった。

 とても美しい思い出の記憶。


 それはもう過去の感情。

 数秒前でも過去は過去。

 もう、ここに君はいない。


 もし仮に、次に君が私にあったとしても、その私に今の記憶はない。


 今の私の空虚感は、もう誰にも埋められない。


 きっと君は奇跡を起こしてしまうだろう。

 その奇跡はきっと輝かしいもので、でもその横には、今の私の記憶を持った私はいなくて……。


「あれ?」


 なんで涙が出てるんだろう?

 涙が出てると自覚してしまってからは止まらなくなってしまった。


「うぅ〜、うっ、ひっぐ、う」


 堪らえたくても止まらない。

 とめどなく溢れてくる。


 涙も思い出も流れてくる。


 好きだった。大好きだった。

 もともとは彼の生き様に興味を持っていたはずなのに、気づけば彼自身に興味を持っていた。

 ふとした時に見せる柔らかい笑顔を見せるが好きだった。私が笑うと赤くなる君が好きだった。妙に負けず嫌いで、負けると分かっていても、もう一回という君が好きだった。私が見てないときに、隠れて階段のどの高さまでなら飛び降りられるかを調べている無邪気な君が好きだった。


 こちらを見て、「わるくないなあ」と笑う君が大好きだった。


 思い出と好きが溢れてくる。

 こんな気持ち知らなかった。

 君は私に初めてをたくさん教えてくれた。

 私には必要ないと思っていた感情の押入れの扉は、君によってあっさりこじ開けられた。


 初めて彼を見たとき、彼はまだ幼かった。

 主神に、彼をよく見ていろ、と言われた

 それでも、彼の行動は常人のそれではなかった。

 三歳で、もう歩けるのにあえて人前で歩かず、人がいなくなったタイミングおやつを勝手に食べる悪知恵が身についていた。

 四歳で、ものすごい知識欲と読書欲を得た。

 五歳のときには、自殺しようとしたことがあった。

 私はまだ彼に死んでほしくなくて、彼の本能に呼びかけた。

 小、中、高で自分の人格がしっかりとしてきた。

 本能に呼びかけたことが良い方向に向いたのか、知識欲も読書欲も控えめになった。

 まぁ、控えめになってあの感じだったんだけど。

 そして、その人格の良さが仇となって少女を助けて死んでしまった。

 彼のことをずっと見てきたわけではない。

 生命の女神としての仕事もあったし、せいぜい一週間に一回一時間くらいだ。

 それでも、彼の行動にはワクワクさせられた。

 彼が加護を受け取るためにここに来ると聞いて柄にもなく鼓動が早くなったことは、今でも覚えている。


 そして、一緒に暮らすことになった。

 君は、私に名前をつけてくれた。

 一ヶ月記念のパーティーをしてくれた。

 なにか大きい行事があるたびに、はしゃいでいた。

 でも、それも私の羽目を外させるためだったんだろうなぁ。

 そういえば、誕生日にパーティをしたときは結構甘えてくれたっけ。

 あのときの陽衣は猫みたいだったなぁ。


 君は私にとっての神様だった。

 今もこんなに泣いてしまうのは、君の笑顔が恋しいから。

 この思い出がなくなるのが悲しいから。


 転生することにためらいはない。

 彼が探すって行ってくれたから。

 「奇跡を起こす」って言ってくれたから。


 でも……でも……


「この思い出はどこかに残しておきたい」


 こんなこと言ってると重い女だと思われちゃうかな?

 

 でも、この思い出は私にとっての宝物だから。






 そして、()()()()()()女神は、少年を追って転生した。










〜  ?  〜


「はぁ、行っちゃったかぁ」


 本当は止めるために来たんだけどな。

 あんなの見せられたら止められるわけ無いじゃん。

 まったく〜。


「これからしばらく加護持ちは現れない。この変化がすべての世界にどんな変化をもたらすかな?」


 いや、そんなことよりも、


「あの子にそこまで言わせたんだもん。黒川陽衣くん、ちゃんと幸せにしてあげてね」


 彼の影響力は良くも悪くも、だから。


「じゃないと、ボクが君の時間を巻き戻していなかったことにしちゃうよ」

これにて女神の涙編、終了です。

感想、書いてもらえると嬉しいです。

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