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チーターの待ち人  作者: 春ヶ勢はせる
プロローグ〜女神の涙〜
1/43

わるくないなぁ

 人間、誰でも一度は自分が何故生きているのか、命とは、生とはなにか考えるだろう。


 ある少年は考えた。


 今の自分は、この世界で生きている意味はあるのだろうか。この世界である必要があるのか。


 答えは否。別の世界でも彼の欲望は満たされる。


 彼の知識欲は人の域を外れていた。読書欲は底がなかった。だが、その欲望はいま生きている世界で満たさなくても良かった。


 どちらにせよ答えが出た。


 しかし、少年は考えることをやめなかった。少年は生きることと真逆のことを考え始めた。


 人が死んだらどうなるのだろうか。意識が完全に消えてしまうのか。はたまた、輪廻して転生するのか。もしかしたら、幽霊として永遠に現世で暮らさなければならないのかもしれない。


 いずれにせよ、一度死んでみないとどうなるのかはわからない。

 生きるということには答えが出るのに死ぬということには答えがでないのだ。


 少年は死後の世界を見てみたいと思った。




 そして、自殺しようと考えた。





 包丁を構えた。


 そして……






 死ねなかった。





 どうやら人間の本能は思った以上に強固にできているらしい。本能に抗うことはできなかった。

 しかし、このときの少年は人間の本能の強固さを知ることによって知識欲を満たした。


 そして少年はまた本を読み始めた。


 大きくなり、小、中、高と生きていくうちに、少年の心はだんだんと穏やかになっていった。人に優しくなった。だんだんと読書以外にも興味を持つようになった。しかし、彼の生活の本質は読書欲と知識欲だった。


 少年は小説の影響で周りを用心深く見るようになった。そのおかげ、いや、そのせいで彼は気づいてしまった。

 普通の人なら間に合わないことに間に合ってしまった。


「ったく、どんなテンプレだよっ!?」

 

 少年はトラックにはねられそうになった女の子をかばって……






 









 そして、黒川(くろかわ)陽衣(はるい)は目が覚めたら謎の場所という状況を初めて知った。少なくとも、病院ではない。

 

 自分でもどうなっているのかわからない肉体、地面がないのにも関わらず歩ける状況、そして何より目の前に美少女。

薄い桃色の髪に、水色の目をしている彼女は初めて口を開けた。 


「こういった言い方をするのもどうかと思いますが、目が覚めましたか?」


 ()()()()()()()()と言っている時点で、十中八九死んでいると陽衣は唐突に理解させられた。

たぶん目の前の美少女は生を司る女神といったところか。

 

「私は命の選択をするものです。あなたの世界の言い方で言うと女神といったところでしょうか?」


 わざわざ説明してくれた。陽衣が混乱しないためというのもあったのだろう。


(今までここに来た色んな人が自分の状況が理解できずに混乱していたんだろうな)

 

 命を選択する女神というのだ。今まで何人もの混乱する人を見てきたのだろう。

 だが、女神は知らなかった。否、まだ知る必要もなかった。


黒川陽衣という人間を。


 陽衣はかなりの量のアニメを見ていた。ゲームだってほぼ毎日やっていた。

 そして何よりとてつもない本好きだった。何なら今もじゃっかん本に飢えていた。

 

 学校の授業中も本を読んで先生にしょっちゅう怒られ、家に帰ってもアニメ、ゲーム、そして本。三大欲求よりも読書欲、知識欲が勝る。寝るよりもアニメを見て、食べるよりもゲームをしていた。ゲームのために動画を見て、実況者にもハマり、何ならスパチャも送っていた。

 

 そして、買った本の中にはもちろん異世界転生系も入っているわけで……。


 そんな、言うなればじゃっかんオタク気質の陽衣にとって、この状況でも混乱する予兆はまるでなく、むしろ、冷静に自分の状況と目の前の美少女を確認して急にニヤリと笑った。


「目が覚めたら目の前に女神。わるくないなぁ」


 かなりの余裕で、何ならいつも以上にテンションが高くなった状態で言った。

 

 目の前の女神が大きな瞳をさらに大きくして驚いている。いや、戸惑っている。


 そして、後に一生以上の時間忘れられなくなる美少女を見て、その混乱している状態を見て、もう一度。


「わるくないなぁ」


 このときは二人とも夢にも思っていなかっただろう。


 この状態から二人が二年半以上もの間、同居することになるとは。

神を一人と数えるのか?という質問はやめてください。ない語彙力で必死に考えたんです。


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