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小品

クラウドイーター

作者: 星野☆明美

「データは、クラウドと呼ばれる場所へ保管され、管理することができます」

顧客データを暗号化して大量にクラウドに置いた。データ収集にはクラウドソーシングで人を雇い、とても便利な世の中だと思った。

「真中くん、例のあれはどうなっとるかね?」

部長から呼び出し。

「3日前に完了しました」

「おお、よくやった」

しかし、部長にデータの取り扱いに関して説明していたら、がくん、とシステムダウンした。

「どうした?」

「システムに不具合です。多分短時間で復旧すると思います」

内心焦りながら、平静を装う。

「大変です!M社のクラウドがクラウドイーターに乗っ取られました」

女性社員が大慌てで室内に飛び込んできた。

お昼休みの休憩室でテレビを見ていたら臨時ニュースが入ったのだという。

「どういう状況かね?」

部長がイライラとして聞いてくる。

想定外のことで、あたふたするしかない。

「最悪の場合、顧客データが流出して大騒ぎになります」

「なんとか食い止めろ!」

「はい」

M社に電話。しかし回線が混み合っていて繋がらない。メールも何回か送ったものの、他の会社でも同じ事をしているだろうことは予想できるし、いたずらに混乱を招くだけだ。

「M社まで出向いて来ます」

そう言って真中は灼熱の昼間の雑踏に飛び出して行った。

M社に勤める鈴木は、原因追求に追われていた。

「なあ、クラウドイーターだけどさ」

「うん?」

「データを奪って利用するとするなら、データ自体は消えることはないわけだ」

「そうだな」

「一時的に保管する別の場所が必要ってことだろ?」

「新しくクラウドを作ったのかな?」

「いや、それだと足がつく」

「既存の別のクラウドにそっくりそのまま移行したのか!」

「そう考えるのが妥当だろう」

他のクラウド保有会社に、大量に移行した怪しいデータがないか確認作業に徹した。

「そのう、その後クラウドイーター対策はどうなっていますか?」

つめかけた人々がM社の代表に質問を浴びせていた。

「データを奪って別のクラウドに保管した犯人を特定中です。保存日時とアクセスの痕跡でじきに特定できるでしょう。なんとしてもみなさんの大事なデータをお守りします」

真中は滝のように流れる汗をハンカチで拭いながら、ことの成り行きを見守っていた。

「昔はこんなことで困ることはなかった」

老人がボソボソと言った。

「全て人の手で作成し、人の手で管理しておった。今のように便利になっても、今回のような場合にはパニックになる」

時代、ということだろうか?

真中は会社に電話して、なんとかおさまりそうだと伝えた。

発生から僅か数時間で犯人が特定され、パトカーに連れていかれた。

二十代の平凡な男で、最近プログラミングを覚えたばかりだという。クラウドイーターは、誰にでも可能な犯行だった。


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