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【4】運命の朝

嫌われたいと思ったことなど、あるわけが無かった。


俺のことを嫌いな人間がいたとしても、可能ならば好きになって欲しい。


ましてや俺のことを心の底から愛してくれている人に嫌われたいなど、考えたことすらなかった。


「姉様、どうするのですか?」


ボルバルザークが不安そうに尋ねてきた。


最悪な目覚め、俺の10歳の誕生日だった。


本当にどうすればいいんだよ!!!子供部屋で俺とボルバルザークは頭を抱える。


俺はハズレスキルを引いて家族から追放される、その予定だ。


だが家族が優しすぎる、いや自慢じゃ無くて。


題名の最初の一文すら回収できないのは本当に不味い。俺もボルバルザークもどうなるのか全く分からない。


こうなったらやれることは一つしかない。


「スキルを授かるまでに何とかしてお父様とお母様に嫌われるぞ」


「安直ですね」


最初はお母様のところへ向かうことにした。


「お母様、メイドさんたち、おはようございます!」


お母様は朝いつも台所にいる。メイドたちの朝食作りを手伝っているのだ。今日も楽しそうにお話をしている。


ちなみに俺は、普通の人の前での一人称は私だ。


「おはよう、アダとボル。そしてお誕生日おめでとう」


そう言ってお母様は俺に優しく微笑む。聖母のごとき笑顔に、思わず目が眩む。


だが、俺はお母様に嫌われなくてはならないのだ。


「お母様」


「何かしら?」


「昨日の夜、お父様と街に買い物に行ったのは新しいメイドさんですか?」


「詳しく聞かせてもらえるかしら」


「姉様、少しいいでしょうか」


俺はボルバルザークに回収され、子供部屋に戻った。


「駄目なのか?」


「親子の関係よりも先に親同士の関係を壊そうとしないでください」


「ごめん」


「子供の無邪気さはこういうところで披露するんじゃないですよ」


ベッドに正座させられた。割と怒られた。


お母様の誤解は自然に解けるだろう。知らんけど。


それよりも、一家の主に嫌われさえすれば簡単に追放されるはずだ。俺はお父様のところへ行くことにした。


お父様はいつも朝食前は鍛錬で庭にいる。俺が庭に出ると、そのことに気付いたようだ。


「アダ、誕生日おめでとう!一層綺麗になったな」


「お父様、おはようございます」


少々心苦しいが、何か酷いことを言って嫌われよう。


「汗を掻かれると、一層加齢臭がキツくなりますね。近寄らないでいただけますか?」


「お父さんゾクゾクきちゃった。もっとそういうの言って貰えるか?」


「すみませんお父様、少し用事を思い出したので」


俺とボルバルザークは子供部屋に帰った。


「なんであんなモンスターが剣聖なんだよ」


「どんな価値観の元に生きてたら、あんな言葉を娘に言い放てるんでしょうね」


だめだ、手詰まりかもしれない。俺たちは、とりあえず朝食に向かった。


朝食時、ラインハルトは滝のような汗を搔いていた。


バブゥが今までにないほどの笑顔をラインハルトに向けているからだ。でも、目は笑っていない。


「何かしたかな?」


「うふふ」


「あ、あはは」


そんな最中、俺はあることを考えていた。


もしかしたら、何とかなるんじゃないか。


いくら両親が優しいと言えど、貴族であることに変わりはない。


俺のハズレスキルを見て失望し、追放してくれるんじゃないだろうか。


なんなら、そもそも俺が主人公じゃなくて別の赤の他人が主人公なんじゃないだろうか。


そうだ、そうに違いない。追放系の主人公など、男と相場が決まっているんだ。


「アダ嬢のスキルは『ゴミの分別』です」


そうだよね、やっぱりそうだよね。


朝食でご飯を食べて教会に向かった俺たちだったが、案の定ハズレスキルを引いた。


さて問題はこれからだ。俺は恐る恐る両親の顔を見る。


隣でボルバルザークも何かに祈っている。頼むから俺のことを蔑んだ目で見ていてくれ!。


別に俺はマゾじゃない!。


「あっはっは、とんだ災難だったなアド」


「私に似ちゃったのかしら、ごめんなさいね」


二人とも朗らかに笑っていた。


そうだよね、やっぱりそうだよね。


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