【2】裸の俺は、女性のおっぱいを吸っている
裸の俺は、女性のおっぱいを吸っている。
擁護のしようもなく、法治国家の日本において明らかな犯罪行為だ。
けれども俺は今現在、嬉しそうに吸い続けている。
理由は単純。俺は赤ちゃんになって異世界に転生したからだ。
「なんて可愛いのかしら」
穏やかな声が頭上から聞こえる。俺は声のした方を見上げる。見上げた先には、とても美しい金髪の女性がいた。
おそらく俺の母親、おっとりとした優しそうな人物だ。
貴族の寝室だろうか。そのベットの上で、女性は俺を優しく抱きかかえている。
「ああそうだな、名前は何にしようか」
その女性の肩に優しく手を置く男性は、おそらく俺の父親に当たる人物。ベットのそばに立っている。
なかなかの二枚目。こちらも誠実そうな人物だ。
身なりから高貴な人物であることが伺える。
「私たちの大切な子供なんだから、うんと良い名前にしないと」
うんうん。
「ああ、そうだな」
そう言って二人はいっそう優しい目で俺を見つめてきた。
本当に良い両親だな。前世とは大きな違いだ。
「あだぁ!」
無意識のうちに喜びの声をあげてしまう。赤ちゃんの愛らしい声はこうやって生まれてくるのか。
「まあ!」
「お前も嬉しいか!」
俺の声に二人が反応する。なんだか気恥ずかしい。
「じゃあお前の名前は今日からアダだ!」
「なんて良い名前なんでしょう!」
うんうん、ん?。
え?今俺の名前決まった?
「おい、さっそく役所に届け出てくれ!」
俺の父親が後ろに声を張る。そこには執事が控えていたらしく、かしこまりましたの声が聞こえた。
え、そんな馬鹿みたいな理由で俺の名前が決まったの?
俺が出せる音ってせいぜい「あだ」か「ばぶぅ!」くらいだよ?
その二択だったらまだアダの方がマシだけどさ。いやそういう問題じゃないんだよ。
「アダ、お前は私たちの大切な一人娘だ。絶対に幸せにして見せるからね」
しかも女なのかよ!
どういう設定だよ!
ラノベで女主人公の俺TUEEEなんて無自覚無双悠々自適スローライフと相場が決まってるんだよ!
なんでダークヒーロー寄りになる追放系の主人公を女にしたんだよ、性癖ねじ曲がりすぎだろ!
そしてこの発言全てが昨今の社会情勢を考えたら危ういんだよ!
「なんだか難しそうな顔をしているわ」
母親が俺を、いや私を?心配そうに見つめる。
そんな目でみないで!
息子との突然の別れに動揺してるだけだから!
「眠たいのかな?」
父親が俺の顔を愛おしそうに眺める。
そんな目で見つめるならもっと趣向を凝らした名前をつけろよ!
「キミは休んで、この子の面倒は僕が見るよ」
そう言って父親は、俺を母親から譲り受けようと両手を出す。
「そんなこと言って、この子の寝顔をみたいだけでしょ」
母親がからかう。困ったなぁと父親がはにかむ。
、、もういいよ。好きなようにしてくれ。
そうして俺は、母親から父親の手へと渡った。
「ゆっくりと休んで早く回復するんだよ、お休みバブゥ」
いや母親の名前バブゥだったんかいーーーーーー!
「ええ、おやすみなさい。ランスロット」
んで父親の名前めっちゃカッコいいのかよ。