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近距離戦

 ガルン王国内の猫耳族と長耳族との間で小競り合いが続いていた。離れ小島がどっちの領域かで生産力が格段に変化するからだ。その頃、マンモース狩りをしていたUが裁きを終え、湯につかっているところに書状が届いた。「失礼します。氷の魔導士、U様で間違いないでしょうか?」「人違いです。」「おかしいですね。フロスト地方に一件だけ。極寒の地に住む魔導士が一人いるとの情報はガセネタでしょうか?これは、情報提供してくださった、ローエング氏を始末しなければなりませんね。」「情報源は、あの爺さんかよ。」「今すぐ、猫耳族、長耳族の争いを仲裁してください。」「なぜ、上から目線?」「し、失礼しました。争いを仲裁してくださるよう、応接買っています。」「誰に?」「国王様からです」「国王に伝えろ、自分のケツは自分で拭けとな。」「ほら、拭いて居る」「…。」

 まさか、お忍びで国王自らやって来るとは思わなかった。護衛を一人。ワンワン、一匹。ローブを来て、箒を取り出す。犬以外を中へ通し、家の中で待っているように命じた。足りないものを買ってくると言って。飛び立とうとして、やめて戻る。どうやら、すべてそろっているようですね。鞄にTP,LPを入れる容器、毒消しをいれ、筆ペンと墨、木を入れ、洋紙とレインコート、蝋、白衣×3を入れる。洋紙にSRのレシピと実物が張り付いている氷版、判子に用いる指輪をはめ込みラフの実、モモンの実を空間に放り込む、箒を空間に放り込み、念のため、荷車も放り込んだ。岩風呂を空間にしまった。残り4つ。食料などは王様が用意しているみたいなので、割愛した。年下の王様、王子だな。女騎士に小声で聞く。「本当に王様なんだろうな。…。王子だ。ふざけるな。なぜ、尻の青い小童の世話を焼かんと行けない。後継者争いの真っただ中なのだ。王子に味方しているのは我がクラッシュノスト伯家のみで、後ろ盾があまりに薄い。王子に頼めば、すぐにSランクにしてもらえるぞ」「余計なことをするなよ、姉ちゃん。俺の時間は俺が決める」「すまぬ、しかし、理解してくれ。ローエング氏が認めた御仁なのだ。それは紛れもない事実。ここは平に平にお願い奉る。」「あの爺さんには貸しがある。今回の件でチャラにしてもらおう。」「王子」「後ろで女騎士の手を握って耐えろ。あとは俺がやる。」ウルが王子のところに来てしゃべる。「黙って、事の顛末を静かに見届けようよ。」

 「猫耳族、うさ耳族に次ぐ。今すぐ武器を捨てて、投降せよ。三十秒待つ。」一、二、…、二十九、三十。「つまらぬ小競り合い、今こそ、その種を払しょくさせる。」氷属性中級魔法アイスレイジで大砲を作り、ドカンと音を立て、例の小競り合いの場所を粉々に砕いた。氷の大砲も消える。両軍ともあっけにとられ、退却した。それ以来多少の小競り合いはあれど、大きな衝突はなくなったという。二部族の停戦条約を取り、王宮へと持ち帰った。

報酬の件は美形の女騎士を一人。家庭よりも戦場を取った女騎士。年は明らかに上だ。片手以上はある。剣はほとんど素人だと説明した。持っているモノも短剣一本。好きなとこから攻めて来いと言われ、遠慮なく突っ込んだ。普通の打突、しかし、俊足の能力を保持するUの打突は半端じゃない。切り返して、もう一発の打突。威力がけた外れで剣が軋みを上げている。相手の攻撃も止まって見え、よけるのに難しさは感じなかった。剣の種類は短剣で決まった。しかも双剣で、相手を殴りに行く要領で。下手に小細工を立てるよりもまっすぐな剣で戦った方が向いていると言われた。三日間で卒業した。女剣士がけいこ場で練習していると執事が呼び止めた。Uと名乗る男からワインの差し入れを預かっている。早速開けてみると、年代物の高級ワインだった。ふと頭に過る。好きなこと、ワインを飲んでいる時にボーっとすることさ。ちゃんと話したことはなかったが、気の回るいい奴だった。と涙が出てきた。

今、ホワイトベアと剣一本で戦っている。手の祓いをよけ、回転して首を狙った。ポトリと落ちて、今日五匹目の成果だ。毛皮と肉を分け、肉は焼いて、おびき寄せる。六、七、…、二十七、二十八。剥製を南都市ティリスで捌く一枚当たり金貨20枚、売れないと分かると南都市トリノへ行き、一枚当たり金貨20枚で捌いたら完売した。金貨560枚。お金を空間にしまうとウルが聞き耳を立て、「女戦士が助けを呼んでいるよ」場所は北東都市ウィルの三十キロ北魔物の討伐で手古摺っている。「ウル、しっかりつかまれ」ジェットストリームアタックで雑魚敵を蹴散らす。到着すると、すでに冷たくなった女剣士が居た。飛行で無人の場所に運び込み、身体検査を始める。脈はかろうじてある。LPを乳房の上に突き入れる。マッサージをして温める。上半身はあったまってきた。下半身を温めるために鎧をはぎ取る。体の芯を温める為、何度も擦る。反応があったところで息を吹き返し、岩風呂へ入れた。「あなた、来てくれたの?」「ウルが知らせてくれたんだ。助けてほしいって。あのままだと凍結で死んでた。薬草風呂はいかが?」「ええ、最高よ。胸も熱くなって、下半身も温まってきたわ。ところで私、貞操帯をつけていたんだけど、どうやって外したの?」「えっと…。」「冗談よ。そんなのつけてないわよ。あなたを驚かせた顔を見たくて言っただけ。なんか悔しいから。それから、この戦いが終わったら、温かいスープが飲みたいわ。」

あの女騎士とは関係が続いている。今日も巡回でトンネル近くの影が重なった。半年後に遠征が決定した。それまでにギフトを作らねばならない。毎回の逢瀬で、純粋に受け身になってくれる彼女を見て、心を許した。ギフトは送られた。今回の遠征は無しとなった。他の騎士から恨まれ、階段から落とされ亡くなった。嫉妬と妬みは女の特権なのだろうか?その事件の関係者をすべて抹殺した。最後の最後まで名前は聞かなかった。聞けば、心にとげが刺さるから。でも、これはこれで一つの区切りがついたのかもしれない。人間の欲望の深さに気付かされたということ、それを守れなかったということを。荷馬車に乗り、どこへ行くのもわからないままさまよい続けるU。そんな彼を心配する女性が、ジェーンとレナスだった。一年前から里へ来てくださらないので、心配になって、こちらから出向いたことが度々あった。すると、一人の女剣士とああも楽しそうに笑っているなんて、考えられなかった。ジェーンとレナスはUとは同学年、つり合いは取れていると思う。一人でするよりも二人で支えてあげればきっと、そう思って、馬車にUを乗せて、家に帰ると早速ごちそうを作って、気が付くのを待った。ぼうっとしていたのが晴れていく。ジェーンとレナスにもてなされている。そう思うと涙が止まらなくなった。Uの前で肉を二人が食べる。体が黒くなり、ダークエルフになる。やめるんだと叫んでも二人は決してやめない。嬉しそうに一緒にご飯を食べた。ジェーンとレナスが心の支えになってくれて二十年の月日が流れた。今はもう、すっかり前を向いて生活していけるだけの心の強さを取り戻していた。毎晩続く熱い夜に心を時めかせ、心も体も健康そのものになった。言っていなかった冒険者ギルドにもいくようになった。せっせと経験値を積んでCランクまで昇格した。庭には、雪の国でもとれる野菜を植え、ハーブを取り揃えた。半分自給自足生活になっている。お金が必要ならギルドで稼げばいいことで、それ以外は家でのんびりくつろぐ生活を送っている、郵便ポストは相変わらず満杯になるが、必要に掻き立てられるような案件は来ていない。全て暖炉に入れると、ダブルキングサイズのベッドに寝そべり二人が来るのを待つ。今日の献立は何かな?のような気分でどちらにしようかなと選んでいる。両方頂く日もあるくらいだ。飛行は学園都市アカデミアで、白金貨3枚で無詠唱習得出来ることが分かり、ジェーンとレナスを覚えさせた。世の中、世知辛い。自分の中での特別が大したことが無いと分かってしまい、残念に感じてしまう。しかし、氷の魔導士は簡単にはなれないので、そこは誇ってもいいところであろう。彼女たちの武器は、レナスはレイピア、ジェーンは片手剣である。Uの短剣二刀流という組み合わせだ。至近距離戦である。レナスは光魔法が得意で、ジェーンは風魔法を得意とする。サポーターはレナスが小竜で、ジェーンは羽龍である。ラピィって、希少価値がものすごく高いというけど、竜族から比べると強いのかどうか不安である。ただし、二人の竜は人語を話せないので、その点でいうとウルは珍しいのかもしれない。


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