駆け出しの翻訳家
Uには空を飛ぶのと古代文字を読む力があった。そのため、各洞窟や神殿へ行き、古代語の翻訳をしながら旅をしていた。魔力の素養があったのだが魔法が使えずにいた。魔法書は高く、とても手が出る代物ではない。その力が得る時が来た。宝箱の中に石板があり、読んでみると、汝、これを手にするものに火属性初級魔法ファイヤボールを無詠唱習得させる。早速イメージしてみると、いとも簡単にファイヤボールが連発できた。空中にも多数存在することであかりとしても活用できたりし、今後の翻訳の探検に役立つこと間違いなしである。
洞窟を出る際に落石に遭い、箒が折れてしまった。近くの森で硬い木を短剣で、作り出し、狼を狩って、しっぽを木に焼き付けては、ファイヤボールで次々に仕留めていったものを尻尾を狩って箒にしていく。十分箒に見える頃には一面が狼の死骸が転がっていた。ファイヤボールの石板は重く、飛行で持ち上げたら洞窟内が崩れてきたので、急いで脱出したわけだった。ファイヤボールの石碑は空間にしまった。この空間に仕舞えるというのは、アイテムを一時保管することで手に持っていない状態にすることが可能する。Uは全部で七種類の空間ボックスを持っている。なめした鞄と今使っている箒と、しまったファイヤボールの石碑を使用している。残り4つが空きになっている。鞄には体力回復LPと魔力快復MPなど、戦闘で必要な物資をしまっている。鉱山の国ガンダダ王国に到着したUは、北大都市オウルゴンタールの魔法屋に行き、ファイヤボールの石碑を見せた。亭主はぜひとも買わせてほしいと言ってきた。この世界では、上から白金貨1枚、金貨100枚、銀貨100枚、銅貨100枚となっている。それの金貨20枚で買い取りたいと言い、お金を受け取る。店を出て、ここから北に向かってガルン王国の南大都市トリノに向かった。銀貨20枚の青いローブを買い両替を済ませ、飛行を止めると、先ほどの魔法屋にファイヤボールの石碑は石の塊に成り代わっていた。大型のモンスターだが飛行で上から短剣で突き刺せれば倒せる魔物、マンモースを三体ほど狩った。
お金を空間にしまった。盗まれない対策である。自由に使えるのは残り4つとなった。
Uの根城にしているガルン王国のフロスト地方の一軒家がある。万年雪が降り積もるところである。ポストには大量の手紙が刺さっている。前に狩ったマンモースの肉を丸太の木の上で解体し、大きさは座布団一枚ほどに揃えて切っていった。何十枚にもなるので手早く処理をし、固形の油は石鹸として活用しようと考え、空間の中にしまった。全身血糊がべったりと付着しており、着替えて、血糊のついた衣服は燃やした。
一個ずつ見てみる。どうでもよい依頼は、暖炉の中に入れていく。時間が足りなくなるからだ。そんな中気になる手紙を読んだ。“U様ご機嫌麗しゅうございます。あなたの力をお借りしたくて、お手紙を出させていただきました。しかし、U様は難題を解く時間が足りないと嘆いておりませんか?私からささやかなプレゼントを贈らせていただきました。これを飲めば、解決のお手伝いが出来るかと思います。”言われるがまま、飲んでみた。それはエルフの飲み薬だった。不老長寿になった。…。やったー!これで研究に没頭出来るぞ。うれしさのあまり、複写した文献を破ってしまった。まずいな、どうしようと頭を抱えていた時、斜め読みをすれば解読可能かもしれないと閃いた。瓢箪に駒である。どうやら、これはエルフの疫病について書かれていることが分かった。エルフ語が分からないUが解けて、エルフ族が解けないのは当たり前だった。疫病を治したのはエルフ族ではないからだ。人の手で行われた治療だからと、エルフ語を合わせて書かれていたのだ。
ここ、ガルン王国より南の南大都市トリノの大森林に住まうエルフ族に遭う必要性があるなと思い、飛行した。途中飛竜に出くわしたが、何回もの回避行動で乗り切った。エルフ族に遭うために手紙を持ち、森を突き進んでいく。すると、エルフの里に到着した。手紙を持っていたことから、Uであることが確認されたらしい。村長の家に案内されて、石碑の意味を話した。古くから蔓延する疫病のこととは何のことなのかと。すると、長老は怯え、周りも怯えてしまった。病気の名前は星屑。本屋で見たが、どこにもそんな文献が載っていない。こうなったらと洋紙に初級万能薬(次からはSRと略します)のレシピを書き写しておいた。それから、薬屋へ行き、レシピに乗っている薬草を一つずつ買った。銀貨30枚で魔法の筆とインクを買い、レシピと薬草が合致するように番号を付けてわかるようにした。それから乳鉢と乳棒を買い、準備を整えた。ということを話した。「大変だ、星屑が一人罹った。」それからは一気に患者が増え続けて皆動けない状態になった。急いで、薬草をかき集めると乳鉢に薬草を入れて乳棒で調合していく。出来た薬をかかった人に飲ませる。すると星屑が消え、抗体ができる。出来たエルフは息を吹き返したように元気になる。それが十数年に一度やってくる。だから、特効薬なんて作れないし、そのために作る人もいなかったわけだった。実際に星屑にかかったUも薬を飲んで抗体を作って復活を果たし、里の人間全員に飲ませた。エルフ族に認められ、Uもエルフの一員としてエルフの首飾りを貰った。里の中で自由に歩き回れるようになったUは様々な古語を目にする。一つ一つ丁寧に解読して、何が書いてあるのか、じっくり研究する。古代エルフ語であれば、借りた本で解読するのだが、そうでもないらしい。見覚えのある文字なのだが、頭に来たので、ファイヤボールをぶつけてみた。すると、魔力を感じたのか、石碑は翻訳された。手を置き、新たな魔法を授けん。手を置いてみた。手を恐る恐る置いてみると、回復魔法のウィトリートを無詠唱習得した。役目を終えた石碑は風化して、土にかえった。同じような石碑がいくつもあった。手を当ててみたらマジックポーション(魔力を回復させる秘薬、次からはMPと略す)が出てきたり、ライフポーション(体力を回復させる秘薬、次からはLPと略す)が出てきたりして、鞄の中が潤った。一番うれしかったのは、回復魔法ウィトリートをかけて翳したときに、氷属性初期魔法アイスキットを無詠唱習得したことだ。何度も使って練習しているうちに、六発の装填が出来、狙いを定めて、打てるようになった。とにかくクイックチャージ出来るのが魅力的だ。ファイヤボールとアイスキットの合成技で水属性初級魔法ウォーターリングを魔法錬金出来て、無詠唱習得したことも大きな成果だ。薬剤を新たに作るのにどうしても水が必要になってくる。それを魔法できれいに出来るのは大きい。飲み水もしかり。生活魔法では右に出るものなし。エルフ族から水筒を渡された。見た目とは裏腹、結構な水の量が入り、すごく便利だ。感謝の意を述べ、ありがたく頂戴した。家の中に隕石が降ってきて、困っている家を訪ねた。飛行で持ち上げ、外に出し地面に降ろす。ささくれたところを治す呪文はないか聞いてみると、治癒魔法ノット・リゲートという魔法があるらしい。主に治療に使われるらしいが、それを使って、ささくれたところを修繕していた。石を取り除いてくれたお詫びとして、その魔法が覚えられるところに案内してくれた。湖の先に祠があり、そこに石板がある。一人一回しかできない為、後戻りはできないという。このエルフ族タスフはそう教えてくれた。他のものは違う治癒呪文を覚えたりと様々だという。言われるままに手を当ててみた。すると、重症個所を治し、縫合する治癒魔法ナイツ・オブ・メスを無詠唱習得した。タスフは喜びをあらわにし、早速、病人のところに来てほしいと手をつなぎ、連れていかれた。連れていかれたのは日陰になっている風の通りをよくした静かな部屋。「メイン、先生を連れてきたぞ」黙って頷く。「この子は生まれつき、声が出せない病気なのです。原因もわかりません。むやみやたらに解剖したりしたら、彼女自身傷つきますし、亡くなった親も悲しむでしょう。」「いきなりで恐縮ですが、先生、治療をお願いします。」いったん外に出て、白い麻で出来た白衣を一着作ってください。治すのはそれからです。アイスキットを医療器具に変える練習を繰り返し行っている。きれいな白衣が出来上がった。それを来て、患者のところへ向かう。外はタスフが守ってくれている。首に氷で出来たメスを入れる。血が飛び散り、白衣で防ぐ。押しつぶしている腫瘍を取り除いて、氷の糸で縫合する。縫合し終わると何もなかったように傷口が塞がった。「先生、ありがとう。あれ、声が出ている。声が出ているよ。」と言って泣いていた。