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プロローグ

目が覚めるとそこは、とても静かな場所だった。

周囲を眺めると其処には木があり水がある。空を見れば雲と青色の景色が浮かんでいた。


…此処は何処だろう。なんで私は森に来ているのだろうか?


小さく考え事をしながらも、私は立ち上がって視線を空から目の前の水へと戻す。

水は思ったよりも綺麗で、水を覗いているにも関わらず木と空の景色が一面に広がっていて思わず笑みを浮かべた。

そして何処から流れているか調べようと水に手を入れれば、上から下に流れそうな感覚……つまり此処よりも低い地面があるようだ。

未だ現実と夢の区別もついていないまま私は川を伝いながら歩き続ける。…何処かで人を見つけて此処が何処か探さないと…なんて考えを持っていると…


「…あ。君、此処に住んでいるのか?」


ちゃんとした青年が何故か木の陰から現れた。第一村人…第一森人?に会えたことに少しだけ息を吐きつつ、私は首を横に振る。

それをみた彼は小さく何度か頷き、此処が住処じゃなかったのか…なんて呟くのと同時に…


「じゃあ君は参加者かい?」


わけのわからない別の質問を投げかけてきた。

何の参加者かもわからない、というかいったいこいつらは何に参加しているのだろうか?

山観光ツアーか何かだろうか?とりあえず其処に参加して帰り道だけは知りたいが…嘘を吐くのはいけないだろうと思って首をもう一度横に振った。


「ふむ…参加者でも此処の原住民でもないとすると…はぐれか?それとも精霊?…あるいは魔物の線もあるが…付近の魔物は全部倒したと報告はあったし精霊が使う魔力の残滓は感じない…本物か?」


なにいってるのこのひと、ちゅうにびょうはひとりでやるからかっこいいんだよ?

そんな事を考えながら私は周囲に視線を向け、彼から逃げる手段を模索していた。仮に帰り道を知っている人間でも中二病だけは駄目だ。

あいつら絶対まじめに会話できないもん、途中で絶対変な単語入れてくるもん。


「…ねぇきみ。誰か知り合いとかいるかい?誰でもいい、一応上には顔は通してるから連絡は誰とでも取れるよ?」


中二病も此処までくると大変だろう。これを政治家の前で言ったら鼻で笑われそうだ。

…そろそろ警察とか呼びたいのだが、あいにくまだ実害を受けていない。顔でも叩いてくれたらちゃんと警察を呼べるのに…なんて考えながらも、私はもう一度首を横に振った。

生憎と中二病の知り合いも本物の政治家の知り合いもいない。もしいたら私はちゃんと電話を使ってヘリを呼ぶ。


「ビンゴ!本物のはぐれじゃないか…!見た目も良くて従順そうだし、売ったら高く売れそうだぞ…?」


何か急にしゃべり始めた。というかこの人の中ではぐれと呼ばれる人間は売ることになってるの?

卸売業者か何かなのか?なんて考えながらも、この人の中二病が治る事を祈っておきながら私は彼から踵を返そうとして…


「おっと!今更気がついてももう遅い!君の身柄は拘束させてもらうよ?……ま、君から拘束されにくるんだけどね“ヒプノボイス”君はもう僕の言葉に逆らえない!」


うわ。この人中二病で催眠術大好きとか救いよう無い。

確かに催眠術はえっちな事代名詞みたいな部分もあるけど、流石に中二病と絡めるのは他の中二病が可愛そうだ。

とりあえず彼の方を向いて私は首を傾げてみた。もういいから帰らせてくれと思いつつも、私はゆっくりとため息を吐く。


「ほうほう!君は正に最高の逸材!催眠適正も低く洗脳され放題!此処までの逸材なら…一生遊んで暮らせるほどの大金が手に入るぞ…?と、とりあえずこの籠の中に入れ!話はそれからだ!」


そういいながら彼が用意してきたのは、私がぎりぎり入れる位の籠だった。帰る代わりにこの中に入れとか傍迷惑が過ぎる。

もうちょっと大きな箱が何かどうか提案をしようとした瞬間、急に彼の顔が恐怖によって歪み始める。

…というか固まってしまった。どうしてしまったんだろうか?


「…ねぇ」

「はい。なんでしょうか」

「…おなかすいた。何か食べ物用意して」

「はい」


固まって動かなくなった彼が私の言葉によって急に動き出すと…彼は荷物を置いてからその場に火を放ちそのまま火の中に体を突っ込んだ。

……なにをしているのだろうか。というかこいつ本当に人間か?食事用意してって言って火に突っ込む奴初めてみた。

…これは殺人になるのだろうか?というかお腹空いた。でも人間としてこいつを食べるのはなんか嫌だしもうちょっと良い物を……うーん…こいつ裸で死んだのに碌な物持ってない…あ、火を消しておかないと……これかな?


「水出てこい」


ちょっと変わった形の水筒を振ると、其処から勢いよく水が流れ出す。

…そんなに出るとは思わなかった…私の飲む分大丈夫かな…?……んー……ん?この水筒、見た目に反して凄い水出てくる。

取り合えず死んだ奴にこれ持たせてもしょうがないのでありがたく頂戴しよう。お水美味しい。

後は…これを貰って…何これ、傘かと思ってボタン押したら変な武器出てきたし……あ、傘のボタンこれか。傘として使えるならこれ貰っておこう。…後は…


「…おーい。生きてますかー?」


取り合えず生存確認。実は生きてますってなったら持ち物返さないといけないからね。

一応生きてるかどうかの為に武器が沢山入ってる傘でぐさぐさとさしてみる。焼けた肉の良い匂いがしてきたけど多分焦げてるから良いや。

…お腹空いたなぁ。誰かいないのかなぁ……


「…“しょうがない”“多分食べれる”“実はおいしいかも…”」


自分に自己暗示をする様に、私はゆっくりと彼の死体に手を伸ばす。

……人肉は不味い不味い言われているが、実際不味かったらカニバリズムは起こらないだろう。

という事で…実食!いただきまーす……あむ。


「…あ、美味しい」

--------!-----~--!

「……変な音」


ノイズが聞こえたって事は、この近くで電波が飛んでいるのだろうか?

誰かが遭難して必死に何かやっているのかもしれない。それに乗じて私も一緒に帰ろう。


「…御馳走様。ちゃんと食べられるくらいのおいしさと硬さだったよ」


ちゃんと頭から足まで食べきって、自分の身体がバキバキと音を立てて変化していく。

慌てて水に走って自分の姿を見れば…しっかりと人間の姿になっているのが分かり、小さく安堵の息を吐いた。

取り合えず私の同類を探そう。そんな事を考えながら私はゆっくりと歩みを進めていく。


「…♪…♪」


自分が歩いた形跡が初めて生まれた事に、満足感を覚えながら。

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