拷问教會の日常 上
「みんな~! 焼き肉の時間やよ~!」
本編からおよそ百年前。場所は地獄のどこの階層にも存在していない、時空の狭間の人造空間。
開闢王を交えた拷问教會上位六席による定例会議は、そんな第一声から始まった。
彼女達が居るその空間は周囲を壁に囲まれた、和風の狭い個室。天井の灯りに淡く照らされた正方形のテーブルが中央に一つ。それを取り囲むように長椅子が並べられており、六つの人影が座している。
テーブルの中心には穴が空いていて、その中に木炭が焚べられ、下から直火で炙っている。更にその上から金網を敷いて――所謂それは、炭火の網焼きプレートであった。
そんな金網の上に目掛けて、何も無いはずの天井付近の虚空から次々と肉の切れ端が降ってくる。その現象が拷问教會第一席、シスター・カタリナの転送能力によるものであることは、今更説明するまでもないだろう。
「お肉っ! フィデスさまっ、お肉です!」
「そうだナ……いっぱい食えヨ」
彼女達は机の四方を囲む長椅子にそれぞれ二人一組ずつ分かれる形で座っていた。南側の長椅子、その右側にちょこんと腰掛けている金髪の少女は拷问教會第五席、シスター・アナスタシア。そんな彼女の左隣に座っている銀髪の女が拷问教會第二席、シスター・フィデス。
肉が焼ける香ばしい匂いに、アナスタシアはフォークを片手に爛々と目を輝かせている。そんな様子を見てフィデスは満足気に目を細めていた。
「食べたいお肉あったら言ってねえ。異能でなんぼでも持ってこれるからあ」
アナスタシアから見て東側の壁、その奥に座っていたカタリナが声を上げる。そんなカタリナの今日の髪型はマッシュウルフ、色はネイビーグレー。服装はタイトめなショート丈のカットソー、その上からジャケットを羽織り、バギーパンツとスニーカーを履いたラフな格好。
「おお! ありがとうっ、店員さん!」
そんな見た目だからなのか、彼女を店員だと勘違いした様子のアナスタシアに対し、カタリナは困ったような笑みを浮かべていた。
「あはは、店員さんて! ナーシャちゃんてば面白い冗談やねえ」
「……? 店員さんでは、ない……? ならば貴様、何者だ……?」
「えっ……もしかしてうちのこと、また忘れてる……?」
不思議そうに首を傾げるアナスタシア。どうやら勘違いどころか本気で忘れられているらしい。笑みが消え困惑の表情になるカタリナ。
「フィデスさま……妾のことをナーシャちゃんなどと気安く呼ぶこの者は一体どちらさまなのでしょうか……?」
「何を言っているんだいアナスタシア。見覚えが無いと言うことは部外者、つまりただの店員サンに決まっているだろウ。それより何が食べたいんダ? 遠慮せず好きなだけ注文しなさイ」
「そうですかわかりましたっ! では妾、タンが食べたいですっ!」
「――というわけダ。聞いていたナ? 店員サン。上質なタンをありったけ持ってこイ。アナスタシアを待たせるなヨ」
「えぇ〜……うちの扱い……まあいいけどさあ……」
便乗して性格の悪い笑みを浮かべるフィデス。カタリナは渋々ながらもそれに応じ、天井から牛の舌をぱらぱらと降り注ぐのだった。
「……いいんでしょうか。私が此処に居ても……」
そんなカタリナの正面、つまり西側の長椅子に座っている、黒いパーカーフードに身を包んだ女性がおずおずと声を上げた。その女は深く被ったフードから褐色の肌とフレームの細い眼鏡、そして毛先の碧い朱髪をちらりと覗かせている。
「む? そういえば見慣れない顔がもう一つあるな?」
「あははっ。マヨイちゃんも忘れられてるう。うちら仲間やねえ」
「…………」
自分のことは棚に上げてケタケタと笑うカタリナ。それに対して呆れた様子でマヨイちゃん――如月真宵はこれ見よがしに溜息を吐いた。
「彼女はマヨイちゃん。この『部屋』を提供してくれたのよお。みんな、マヨイちゃんに感謝しようねえ」
「そうなのか! ありがとう、マヨイちゃん!」
「いえ……まあ、はい……」
しかしあのロアにして『世界を創る異能』とまで言わしめた彼女の能力を、果たしてこんな事の為に使っていいものか――この場に居る誰もが頭の片隅でそう思いつつも黙っていた。焼き肉の前では些細なことである。
◆
斯くして上位六席の定例会は始まった。網の上では肉が踊るように焼かれ、彼女達はそれを箸やトングで思い思いに摘んでいく。
ちなみに。上位六席とは言ったものの、今日出席しているのはその六席の内の四人だけである。
第一席のカタリナ、第二席のフィデス、第五席のアナスタシア、そして――
「ふへへ……はい、ナーシャちゃん……これ、もう焼けてるよ……」
――第六席、シスター・アポロニア。
そこに開闢王と如月真宵を含めた以上六名が本日の出席者だった。
「おお! ありがとう、アポロニア! しかし貴様も他人の分をよそってばかりいないで、ちゃんと自分も食べるのだぞ?」
「う、うん……でも、ぼくは大丈夫だから……あ、ありがとね……ふへへ……」
シスター・アポロニア、彼女はカタリナの左隣に座っていて、トングで摘み上げた肉の切れ端を焼いたそばから右隣のアナスタシアの小皿にせっせと移していた。
そんな甲斐甲斐しい様子を見せるアポロニアだが、しかしよく見るとその手にトングは持っていない。ならばどのようにして肉を移しているのかと言うと――それは彼女の容貌が、この場に居る誰よりも異質な異形であるが故に可能な所業であった。
まず、てらてらと青黒く発光するその髪のような物体は、泡雲のように膨張と収縮を繰り返す変幻自在。宙を漂うそれを触手のように操って、彼女はトングを掴み持っていたのだ。
そんな彼女の巨体はあの開闢王よりも更に大きく、肌は夜の闇のような純黒。肉付きの良いその身体を覆う修道服の隙間からは獣のような瞳孔が複数、外界を覗いている。
玉虫色に妖しく煌めく瞳は、彼女の顔に四つ付いていて――その四つ目は慈愛に満ちた眼差しで、隣のアナスタシアを見つめていた。
「ふへ……目がたくさん付いててよかった……かわいいナーシャちゃんを色んな角度から見られて幸せです……ふへへ……眼福……」
そんな異形の彼女、アポロニアは蚊の鳴くような声で一人、恍惚と囁く。アナスタシアの世話を焼けることが余程嬉しいのか、彼女は心底満足気な微笑を浮かべていた。
そこに邪な感情は一切無く、ひとえにそれは母性によるもの。それが解っているからか、アナスタシアの隣でその様子を眺めていたフィデスも面白く無さそうな表情を浮かべつつ咎めるようなことはしなかった。
「ほな、アポロニアちゃんの分はうちがよそってあげようねえ」
「へぁっ、あっあ……ありがとうございます……カタリナせんぱい……」
気を利かせたカタリナがトングで掴んだ肉をアポロニアの小皿へと移していく。するとアポロニアは途端にわたわたと取り乱し、その巨体を縮こませるのだった。
「まあでも、これくらいじゃアポロニアちゃんはお腹いっぱいにならへんよねえ。あとで牛一頭届けとくから、そっちはひとりでゆっくり食べなよお」
「あっ……ふひ……い、いつもすみません……へへ……」
諂うように笑うアポロニア、複数ある眼はどれも泳いでいてカタリナのそれとは交わらない。泡のように弾け雲のように漂う奇妙なその毛髪は天高く伸び、恥じらう彼女の気持ちを代弁するようにハートの形を作っていた。
「……しかし残念である。マルガリタはともかく、今回もバルバラさまは来てくださらなかったのか……」
レモン汁を浸した牛タンを口の中に放り込みながら、アナスタシアはふと残念そうに声を上げる。
「あはは……まあ、あの子は騒がしい場所が苦手やからねえ。それに、うちも今は会いづらいし……」
「(そもそも誘ってないからナ……)」
バルバラの名が出てきた途端、カタリナとフィデスは何やら複雑そうな表情を揃って浮かべていた。
「それにしてもナーシャちゃん、ほんまにあの子のことが好きやねえ。こないだの定例会でも同じこと言うてたよお?」
「なぜ店員さんがそのことを知っているのだ!?」
「あれ、勘違い続いたままだった!? うち第一席やからね!?」
漫才をしているカタリナとアナスタシアの傍ら、フィデスは苦虫を噛み潰したような顔付きのまま、溜息をひとつ。
「……ふゥ。アナスタシア、おまえは少し誤解していル。バルバラはおまえが思っているような奴じゃナイ。あんな奴のことを慕うのはやめなさイ……」
そうして疲れたように漏らしたフィデスのその言葉にアナスタシアはムッと眉を上げ、途端にその頬をぷくっと膨らませた。
「むうっ……フィデスさまはどうしてバルバラさまをそこまで毛嫌いしておられるのですか! 妾は詳しい事情をよく存じ上げませんが、もし喧嘩をしているのなら仲直りしてほしいですっ!」
「…………無理だナ」
「フィデスさまのがんこ者~っ!」
「ハイハイ……そんな事より肉を食いなさい肉ヲ。ほラ、次は何が食べたイ?」
「むむうっ! ハラミをお願いしますっ! あと白米!」
ぷりぷり怒るアナスタシアを慣れた様子であしらうフィデス。この定例会においてそれはいつもの見慣れた光景で、皆気にすることなく思い思いに肉を頬張っていた。
◆
黙々と肉を啄む如月真宵と、アナスタシアの笑顔を肴に瓶ビールをあおるフィデス。その間に挟まるような位置関係で西側の長椅子に座っている開闢王が、不意に小さく溜息を漏らす。
「……しかし毎度のことながら、これではただの食事会と変わりありませんね」
そうして一人ごちる彼女に気付いたフィデスは、嗤うように鼻を鳴らしてみせた。
「別に良いだロ。どうせ報告する事なんかナイ、いつも通りダ。それより愉しんでいるアナスタシアに水を差すなヨ」
「貴女も困った御方ですね……」
開闢王と上位六席は直接会う場を定期的に設け、自身が担当・管理する事象について報告し合っている。それがこの定例会。
とは言え今の地獄の情勢は煮詰まり切っており、第一階層のように特殊な環境でもない限り変化は乏しい。それは平和であるとも、嵐の前の予兆が続いているとも言える。
「それに報告なら僕からありますよ。第一階層にて、非常に興味深い怪異が現れましてね」
そしてそれはつまり、第一階層は他の階層と比べて大きな変化が発生しやすい環境だということ。その性質もあって第一階層・等活地獄は開闢王のフィールドワークの対象となっていた。
「この百年で王の座を不動のものとしている怪物です。何よりその正体を知る者は誰もいない。とても気になります。ですので一度、その怪異を貴女の異能で読んでいただきたいのですが」
「……構わんガ、読ませたいならアタシの所まで連れてこいヨ。こっちから第一階層まで出向くなんて御免だゼ。非戦闘向きの怪異があんな場所に足を踏み入れるなんザ、命が幾つあっても足りン」
「全くですね。僕も護衛を付けて何度か潜入していますが、彼の者にはお目にかかることすら出来なかった。ですがもうすぐ、あと百年程でマルガリタが目を醒ます予定ですから、それに合わせて第一階層に攻め入り捕獲するつもりです。材料を手に入れる為の行動という名目であれば、彼女のオーダーにも抵触しないでしょう」
「あと百年……それまでに最後の材料を見つケ、奴のオーダーを書き換えるのが理想……だガ……」
「彼の者がそうであったなら話は早いのですがね。しかしそれを差し置いても、未知である以上暴かねば。果たして彼の者にはどのような秘密が隠されているのか。無いはずの心が踊りますね」
「そうかイ……」
等活地獄の幻葬王。それは開闢王にとって未知の可能性を秘めた獲物。いずれ相対する機会を夢見て嬉々とし語る彼女の様子に、フィデスは肩を竦めるのだった。
◆
各々、食事と雑談に興じる時間が暫し続き。宴もたけなわ。
「なんか……あれやね。美少女たちが和気あいあいとさ……ここだけ切り取って見たら、うちら日常系の萌え作品っぽくない?」
「ふへ……流石にそれは無理があるのでは……ぼくたち、人も殺すし薬物にも手を出してるし……あまりにも萌えらしからぬ物騒さですよ……」
「でもほら、今は多様性の時代やからね。人殺しも薬物乱用も美少女無罪~♪」
「多様性ってそういうことでしたっけ……」
カタリナのてきとうな言葉に、ぼそりぼそりとツッコミを入れるアポロニア。そんな彼女の複数ある眼が、炭の焦げ付いた網の状態に目敏く気が付く。
「あ、そろそろ網替えたほうがいいかもですね……ぼくがやりますので、お肉取っちゃってください……」
アポロニアは青黒い雲の触手を伸ばし、それでそのまま網を掴んでみせた。熱さを感じている様子は無い。
「おお、そうだな! よいしょ……はい、フィデスさま!」
「……アリガトウ。でもアタシの分はいいかラ、おまえが食べなさイ」
網に張り付いた肉を箸で攫い、フィデスの小皿にひょいひょいと乗せていくアナスタシア。しかし少食のフィデスは既に腹八分目で、困ったように微笑んでいる。
「うち、ビール持ってこよーっと。他に要るヒトおるう?」
「……お酒なんてよく飲む気になりますよね。いくら飲んだところで、净罪をした私達はもう酔えないのに」
カタリナは瓶ビールを数本、転送して机に落下させた。その様子を見て呆れたように如月真宵が呟く。
「うちは味が好きなのお。フィデスちゃんもそうでしょお?」
「まァナ……」
「……そういえば、この場で净罪をしていないのはシスター・アナスタシアだけですね」
「おっ、せやったねえ。ほなナーシャちゃん、飲酒デビューしてみるう~?」
そうしていたずらっぽく笑うカタリナだったが、即座にそれを咎めるようにフィデスが鋭い目付きを向けていた。
「ふざけるナ。アナスタシアはオレンジジュース以外飲まないんだヨ」
「いやそんな事は無いやろ……」
「むう……フィデスさま、また妾のことを子供扱いして……確かにオレンジジュースは好きですが……」
自身の扱いに納得していない様子で唇を尖らせるアナスタシア。そんな少女の愛らしい様を眺めるアポロニアは自身の頬をだらしなく綻ばせていた。
「ふへへ……あっ、それじゃあぼく……いただいて良いですか? お酒……」
「おっ。はいは~い。アポロニアちゃんの分は樽ごと持ってきてあげようねえ」
「へぁっ……あ、ありがとうございます……ふへへ……で、では……い、いただきます……――」
アポロニアは自身の空中に現れた酒樽を触手で鷲掴みにすると、それをそのまま大きな口で呑み干し始めた。樽の中から大量の黄金色の液体が滝のような勢いで放流するが、アポロニアはそれを一滴も零さずに口から喉の奥へ一気に流し込んでいる。
「おお……」
圧巻なその姿を目の当たりにして驚嘆の息を漏らすアナスタシア。そんな彼女の隣でフィデスはというと「アナスタシア? おまえは良い子だから絶対にマネしちゃいけないヨ?」と心配そうに何度も声を掛けていた。
◆
そんなこんなで。
「ふう……もう妾、お腹いっぱいである……」
基本的にこの定例会はアナスタシアが満足するまで続く。そしてアナスタシアが相当量の肉を平らげ満足した今、自然と解散の雰囲気が漂い始めていた。
「ほなまあ、そろそろお開きとしますかねえ」
カタリナがそう切り出すと、網の上や他の小皿に残った肉を一箇所に集め始める。
「……シスター・カタリナ、タッパーをいただけますか? バルバラの分をお土産に持って帰りたいので」
「嗚呼、でしたら僕も。ゆらぎの分を持って帰りたいですね」
如月真宵がふと思い出したように声を上げ、開闢王もそれに続く。彼女達の要求にカタリナは「はいは~い」と慣れた様子で頷き、ポリプロピレン製のタッパーをそれぞれの手元に一つずつ落としていく。
皿の上の肉を分け合って、真宵と開闢王は自身のタッパーにそれぞれ肉を詰めていく。それが終わるのを見届けた後、皆は揃って椅子から立ち上がった。
「では皆さん。また次の定例会でお会いしましょう」
開闢王がそう告げたのを合図に、彼女達は長椅子が置かれていない北側の壁――この部屋の出入口となる扉の前まで、揃って移動を始める。先頭の開闢王がドアノブを捻り、奥に押し込むと扉が開いて――その向こう側には何も無い闇が広がっていた。
「カタリナ。転送をお願いします」
「はあい」
扉の向こう側の闇が一瞬揺らめく。それを確認した後、開闢王は躊躇いなく扉を潜り抜け、闇の中に消える。
「ではな皆の衆! 行きましょうっ、フィデスさま!」
「嗚呼……」
続いてフィデスとアナスタシアが手を取り合い、一緒に闇の中へと入っていった。その後ろ姿を口惜しそうに眺めていたアポロニアも続いて扉のほうへ近付いていく。
「あっ……えっと、ごちそうさまでした……そ、それじゃあ……カタリナせんぱい……マヨイさん……ま、また……ふへ……」
そうしてアポロニアはおずおずと手を振ってみせてから、闇の向こうへ飛び込んでいった。その場に残されたのは、如月真宵とカタリナの二人だけ。
「……あとはうちらだけやねえ?」
しかし彼女達は一向に部屋から出ようとはしなかった。特に如月真宵は、何か言いたげな神妙な面持ちでカタリナのことを見据えている。
「ふふっ……」
暫し続いた沈黙の後、ふっと笑みを溢しながら、カタリナがその口元を如月真宵の耳元にまで近付ける。互いの呼吸の音がすぐ傍で聞こえるほど肉薄した二人。
「……そろそろ見つかるといいねえ? 最後の材料」
薄く笑みを張り付かせたカタリナの言葉を耳元に受けた瞬間、如月真宵の表情は苦虫を噛み潰したように歪んでいった。
「……必ず、見つけます……」
震える声で応じる如月真宵。その様子にカタリナはくすりと微笑む。それ以上何をするでもなく、彼女は如月真宵から顔を離し、扉に向かって歩き始めた。
「ふふっ。まあ、なるようになるか! ほなね、マヨイちゃん。引き続き、よろしく」
そうして妖しげな笑みだけをその場に残し、手をひらひらと振りながら、扉の奥に姿を消す。結局その場に残されたのは、如月真宵ただひとり。
これは外伝。徒然なる日常。そんな幕間の一時でさえも、彼女は苦難を片時も忘れる事が出来ない。
独り残された如月真宵は、その表情に暗い影を落として――
「…………私の、願いは…………本当に、これで…………」
――祈るような、縋るような、か細い声を漏らすがしかし。
それは誰の耳にも届くことは無いのである。