■■地獄 16
「大丈夫ですよ。九十九さん」
今にも挫けそうになっていた、その時。彼女の耳元へ届いたその声色は、静かで、それでいて力強く。
凛としたその響きに、九十九は落ちかけた視線を再び前方に引き戻されて――
「うおおおおおおおおおっ!?」
続いて聞こえてきたのは、そんな間抜けな叫び声。
一ノ瀬ちり。彼女はまるで釣り上げられた魚のように、落ちたはずの穴から勢いよく飛び出してきて――そのまま空中で静止していた。
「……えっ……?」
空中に漂っているちりの姿、その珍妙な光景に、九十九は先程までとは別の意味で言葉を失い、呆然と空を見上げていた。
しかし戸惑いながらもその表情は、絶望に満ちたものではなく――輝きを失いかけていた赤い瞳は再び、光を取り戻す。
「……あれえ? ちりちゃん、空飛べたっけえ……?」
そして戸惑っているのは、あのカタリナも同様だった。異能の餌食になったはずのちりが、何故か突然穴から飛び出してきて、あまつさえ宙に浮いている。その状況が予想外だったのか、カタリナは首を捻っていた。
「はッ!! このバカがッ!! 対策済みなんだよ!!」
空中にぶら下がったような体勢のまま、一ノ瀬ちりは牙を剥き嘲笑う。カタリナを見下ろすその赤い瞳は依然、灼熱のような怒りが滲んでいた。
「そもそもテメェの異能は、物体を転送させる能力じゃない! 便宜上そう呼んでいただけで、正確には『空間と空間を繋げる能力』ッ! あくまでも座標を対象に発動する、言うなれば『落とし穴を作る能力』ってところだ!」
赤い爪の先が、カタリナを突き刺さんばかりに向けられる。対するカタリナは今の状況にいまいちピンときていない様子で、空に浮くちりの姿をまじまじと眺めていた。
「それがどうしたって面ァしてるけどよォ、『物体を直接転送させる』のと『空間を経由させる』のとでは大きな違いがあるんだぜ。つまりテメェは任意の物体を転送させる為に、そいつをわざわざその座標へ落としたり通らせたりする必要があるってことだ!」
例えば先刻、黄昏愛の触手攻撃をカタリナが能力で防いだ時。一定の距離に到達した瞬間、触手の先端だけが部分的に消えていた。
物体を転送させる能力ならそんな風にはならない。触手と直接繋がっている本体ごと能力の対象となり消えるはず。
この現象は樹海や上空でも特定の座標に到達すると発生している。これら幾つかの状況証拠を踏まえると、ちりが能力の正体に思い至ったのも自然だと言えるだろう。
「理性の無い人造怪異や、注意が散漫になっている人間相手なら、穴に落ちるよう誘導したり、行動を予測して先回りすることも可能だろうがよ。最初からタネが分かっていれば対策は簡単だ」
揚々と語るちりの頭上、不意に雲の切れ目から微かに月光が降り注ぐ。それを浴びた瞬間、ちりの周囲で何かが煌めいていた。
「……? 今、何か……光って……?」
ちりを見上げる『マヨイちゃん』が、その煌めきに気が付いて――眼鏡の奥、驚愕で目を見開かせる。
「単純な話だぜ。こんな風に……糸を身体に括り付けておけば……落ちる事は無いんだからなァ!!」
蜘蛛の糸。目を凝らしてよく見ると、それがちりの全身至る所に巻き付いていた。どうやらその糸に引っ張り上げられて、ちりは宙に浮いているようだった。
その糸の出処を辿っていくと、やはりと言うべきか――その全てが、黄昏愛と繋がっている。
「……いつの間に……」
動揺していたのもあるだろう、遅れて九十九もそれに気が付く。愛の作り出した糸がちりだけでは無く、九十九自身にも巻き付いていたことに。
あの時の、2人の会話――
『黄昏愛、準備だけはしておけよ』
『解っています……』
――あの時点で既に、愛は自分達の身体へ密かに、糸を巻き付けていたのだ。
当然、普通の蜘蛛の糸ではない。光でも当てない限りは視認不可の無色透明、それでいて人間を空中で支えることも可能な程の強靭さ。そして触れている事にも気付けない程の軽さ、その伸縮性。
気付けばそれが愛達の身体のみならず周囲の至る所へ、蜘蛛の巣の如く張り巡らされていたのである。まさに糸の結界。月の光が再び雲によって遮られると、糸は闇の中へ消え、もう見えなくなっていた。
「ここまで、闇雲に攻撃していたわけではなく……触手を使って密かに、周囲へ張り巡らせていた……?」
「ふうん……なるほどねえ」
それでも尚、カタリナの涼し気な表情は変わらない。しかしその声色は確実に、警戒の色を宿していた。
「でも、それが何だって言うのお? 結局、うちに攻撃が届かないことに変わりは無いと思うけどお」
カタリナの言葉が終わるよりも先に、愛はすかさず触手を伸ばしていた。触手は槍のように先端を鋭く伸ばし、カタリナに向かって放たれる。
「だからあ、無駄やって――」
先程までと同じ状況なら、愛の触手は転送の穴に呑み込まれ、あらぬ方向から排出されていただろう。カタリナの言う通り、愛の攻撃は結局届かない。
「……あれれ?」
しかし今回は違った。愛の触手の先端は、途中で妨害されることなく――そのままカタリナの左肩を貫き、腕を千切り飛ばしていたのである。
千切れた左腕は重力に従って地面に落ち、左肩から夥しい量の血が噴き出す。その光景をカタリナは、首を傾げ不思議そうに見つめていた。
「うわっ……!?」
カタリナのすぐ傍に立っていた『マヨイちゃん』は驚きの声を上げ、慌ててカタリナの傍から離れる。
「ちょっ……シスター・カタリナ!? どうして防御しないんですか!?」
「……せやねえ。なんで発動せんかったんやろ、うちの異能……」
抗議の声を上げる『マヨイちゃん』には目もくれず、カタリナは出血し続ける自分の左肩を依然、訝しげに見つめるのだった。
「そこの赤いひとが言っていたでしょう。対策済みだと」
それに答えるのは、黄昏愛。黒いセーラー服を靡かせて、彼女は冷酷な眼差しをカタリナに向けていた。
「異能には必ず発動条件がある。その落とし穴もきっと、どこにでも作れるわけじゃない。そこで私達は、これまでの観察結果を元に仮説を立てました。恐らくそれは……座標上に物体が重なっていない、何も無い空間にしか作れないはずだと」
本当にどこにでも落とし穴を作れるのなら、対象の足元に直接重なるようにして作ってしまえば、簡単に転送させることが出来るはず。それをしようとせず、カタリナはわざわざ対象の行動を先回りして穴を設置している。
それはカタリナが物体を直接転送出来ないという仮説の裏付けになると共に、異能の発動条件にも関係しているのでは――というのが、愛とちり、二人の辿り着いた結論だった。
「とは言え、完全に何も無い空間なんてありえない。少なくとも空気は存在するし、雲の中から巨人が降ってきたこともありました。以上を踏まえて、推測される発動条件はふたつ。空間そのものが無機物のみで構成されていること。そして、対象となる空間上に有機物が重なっていないこと」
有機物の定義は、生物が自身の体内で産み出した物質であること。無論それは、生物そのものも含まれる。既に有機物の在る場所に落とし穴は作れない。それはつまり、例えるなら――地面に落とし穴は作れるが、地面の中に生物が棲んでいたら作れない――ということ。
「だったらこんな風に――有機物で空間を満たしてしまえば。少なくとも、私達の周囲で大きな穴を作ることは出来なくなるはず」
そして今まさに、周囲に張り巡らされた蜘蛛の糸の結界は、黄昏愛の体内から作り出され、今も黄昏愛と繋がっている有機物である。
愛の放った触手攻撃、その進行方向には既に糸の結界と言う名の有機物で満たされていた。カタリナの異能は糸が在る座標を対象にすることが出来ず、攻撃を素通りさせてしまったのだ。
「あくまでも仮説でしたが……どうやら正解だったようですね。なら……後は詰めるだけです」
白い息を吐きながら、黄昏愛が一歩、前に進む。ローファーが力強く、大地を踏み締める。遠く離れたカタリナ達の元に、まるで圧とでも呼ぶべき気迫が突風のように吹き荒ぶ。
それは静かに燃える焔のようで。闘志と呼ぶにはあまりに冷たい、殺意の籠もった黒い瞳。それに射抜かれた『マヨイちゃん』は思わず後退っていた。
「何してるのお、姦姦蛇螺ちゃん。いつまでも捕まってないで、その辺の糸、はよう引きちぎって」
表情の無くなったカタリナの視線が、九十九の傍でのた打ち回る姦姦蛇螺へと注がれる。
『――――う――――ゥ――――!』
切り離された触手によって身動きを封じられていた姦姦蛇螺だったが、カタリナの一言で様子を一変させる。まるで怯えるように、全身を大きく震わせていた。自身に纏わりつく触手を払い除け、藻掻くように多脚を伸ばす。今にも突進しそうな勢いで、血の滲んだ白目を前方、黄昏愛へと向けている。
「無駄です」
しかし愛、冷酷にそう言い放つと、おもむろに右腕を掲げた。身体はカタリナの方に向けたまま、伸ばした右腕だけを姦姦蛇螺に向ける。そんな愛の手首の内側から直後、血管のような物がまるで蛇口のような形となって、皮膚を貫き浮かび上がってきた。
『ゥウ――――――――ッ!?』
血管の蛇口から愛が射出したのは、弾丸。――否、そう見間違えるほど高速に放たれた――蜘蛛の糸の塊。糸の塊は姦姦蛇螺に命中すると、まるで巻き網のように糸を拡散して、姦姦蛇螺の身体を覆い尽くす。
それら弾丸の雨が次々と射出されて、姦姦蛇螺はあっという間に、大量の糸によって雁字搦め。白い糸に包まれた姦姦蛇螺はまるで雪だるまのようになり、その場で完全に身動きを封じられたのだった。
「うおッ……と……!」
愛が姦姦蛇螺を一瞬で無力化する傍ら、一ノ瀬ちりはようやく、まるで糸に吊るされたパペットのように空中から地上へ降りてきていた。そのまま愛の左隣に立つ。
「ハッ……上手くいったな」
「ええ。さっさと殺してしまいましょう。顔を見るのも不愉快です」
「同感だ。情報を吐かせるのはその後でもいい。何度でも殺せるッてのが怪異の良いところだぜ、まったくよォ」
隣り合い、言葉を交わす両者。けれどその瞳孔は、刺すような赤と黒の視線は、カタリナを捉えて離さない。煮え滾った地獄の釜のような、憎悪と殺意のみがそこには宿っていた。
「まさか尻尾巻いて逃げたりなんかしねェよなァ? テメェから売ってきた喧嘩だぜ!? 拷问教會の第一席サマよォ!!」
挑発的なその言葉に、カタリナは言い返さない。左肩の傷口を右手で抑えて、俯いたまま、押し黙っている。
無理もない。現世にすら影響を及ぼす空間転送、間違いなく規格外と言っていいその異能を、彼女はよもや攻略されてしまったのだ。
左腕は欠損。姦姦蛇螺も再起不能。攻撃を防げる進路も限られている。絶体絶命の窮地に立たされた彼女が浮かべる、その表情は――
「あはっ! 愛ちゃんそれすごおい! アメコミのヒーローみたいやねえ!」
――あろうことか、弾けんばかりの邪悪な笑顔。
「黙れ」
しかし今更、その戯けたようなカタリナの口振りに戸惑うこともなく。愛はただ一言、はっきり拒絶だけを示す。軽蔑をたっぷりと込めた、冷たい声色で。
「……九十九さん。大丈夫です。貴女には、私達が付いています」
そんな愛が今度は、未だ呆然と立ち尽くしている九十九に向かって声を掛ける。それはカタリナに向け放たれたそれとは真逆の、暖かな声色だった。
「頼ってください。どんな時でも。どんな事でも。私達は、貴女の味方なんですから」
そう、かつて同じように――愛は九十九の言葉に救われた。他人に頼ることを教わった。だから、今度は私の番なのだと。罪も、罰も、共に背負うと。そんな誓いを込めた、信頼の言葉。
「愛……」
その想いが、その熱が、芥川九十九の心に届く。身体が動く。酸素が脳を巡っていく。視界が拓けていく。
「……うん!」
重かった足取りが、今ではすっかり軽い。九十九はそのまま愛の右隣に並び立つ。愛と、そしてちり、彼女達へ交互に視線を合わせて――凪いだような赤い瞳は、力強く前を向くのだった。
「……あ~あ。すっかり嫌われてしもうたみたいやねえ。愛ちゃんのこと、けっこう本気で狙ってたのにい……ショックやわあ……」
並び立つ3人を見据えながら、カタリナは大袈裟に肩を落としてみせる。どうやら痛みを感じていないのか、千切れた左肩は血を垂れ流し続けているにも拘わらず、彼女は汗のひとつもかいていないようだった。
「そ……そんな事を、言っている場合ですか」
そしてこの期に及んでまだ軽口を叩くカタリナに、いよいよ切羽詰まった様子で『マヨイちゃん』が苦言を呈する。ローブに隠されたその表情が見えずとも解る程に、その声色は焦りを滲ませていた。
「どうするんですかこれ……まさかここまできて、打つ手無しとは言いませんよね?」
「う~ん…………」
隣から抗議の声を受けながら、カタリナは右手を自分の顎に当て、わざとらしく首を捻って見せる。
確かにカタリナにとって、今は異能を最大限に活用出来る状況では無くなった。愛達の周囲は勿論、そこから繰り出される攻撃の進路を妨害することはもはや出来ない。
だが完全に封じられているわけではない。愛がまだ糸を張っていない場所、例えばカタリナより後ろに位置する空間ならば異能を発動出来る。
しかしそれは愛にとっても承知の上。だから愛は確実に詰めてくるだろう。物理的に距離を詰めてくるだろう。唯一の生命線である後方の空間にもしも回り込まれでもしたら、その時点でアウト。カタリナは逃げることすら出来なくなる。
まだ全ての謎を解かれたわけでは無いとは言え、悠長に構えていられるほどの余裕は無い。早急に対策を講じるべきだろう。普通なら。
「う~ん……打つ手無し! うちの負けやね!」
しかし、シスター・カタリナ。この魔女はこういう場面でこそ、あっけらかんと白旗を上げてしまう怪物なのである。
「なっ……はあ!?」
一方でこの状況、この場においては『マヨイちゃん』と呼ばれる彼女こそ、他の誰よりも焦っているようだった。
「まあまあ、落ち着いてよマヨイちゃん。そない眉間にシワ寄せたら、可愛いお顔が台無しよお?」
「顔のことは言わないでくださいっ……じゃなくて! 考え直してください、カタリナ! こんなチャンスはもう二度と訪れないかもしれないんですよ!? それは貴女も解っているはず……!」
慌てふためく彼女の、そのただならぬ雰囲気に、遠くから様子を窺っていた一ノ瀬ちりは人知れず眉を顰めている。
「あは! もお、大丈夫やってえ」
その時。右から左へ受け流すように、カタリナはどこまでも呑気にへらへらと笑ってみせたかと思えば――
「こういう時はね、適材適所。え~と……今の時間帯なら、多分この辺りに……」
――不意に。その眼前に黒いモヤのようなものが、どこからともなくじわりと浮かび上がってきた。そのモヤの向こう側を、カタリナは「ふむふむ」などと唸りながら、何やら覗き込んでいる。
どうやらカタリナは、自分のすぐ目の前に転送の穴を具現化させ――穴の向こう側に広がっている別空間の景色を観ているようだった。
「ああ、居た居た」
その向こう側に何かを見つけたカタリナは、すかさず右腕を掲げてみせる。すると今度はカタリナの頭上、遥か上空から鈍色の金属バットが降ってきて、近くの地面に突き刺さった。カタリナは右手で、おもむろにそれを掴むと――
「つんつん……っと」
目の前の穴に向かっておもむろに、その先端部分を差し入れる。金属バットの先端が、黒いモヤのように漂う空間の中へと消えていき――向こう側にいる何かを、どうやらカタリナは金属バットで突付き始めたのだった。
「動かない有機物は、こうやって……こっちから押し出してやれば……無理やり転送させられるのよねえ……よいしょ!」
などと宣いながら、金属バットを奥へ奥へと押し込み続けるという奇怪な行動を取るカタリナ。しかし目の前で呑気にそんな事をしていて、見逃されるはずもなく――
「死ね」
飛蝗の脚で跳躍した黄昏愛は、既にカタリナの頭上にまで迫っていた。熊の怪腕は既に振りかぶられている。愛の全身から揺蕩う糸の結界が、カタリナの異能発動を妨害する。もはやその進路を妨げることも、避けることも敵わない。
ならば、どうするか――
「ほうら、行っておいでえ!」
愛の拳がカタリナの頭蓋を砕かんと迫る、刹那の瀬戸際。カタリナの目の前に浮かんでいた黒いモヤの中へ、金属バットが吸い込まれるようにして消えていき――
「……は?」
入れ替わるようにして、それはカタリナの背後から飛び出してきた。
「ぬわああああああああああっ!? なななっ、何事だあああああああああっ!?」
その小さな影は、愛とカタリナの間に突如として割り込んできて――あろうことか、愛の拳をその小さな片手で受け止めたのである。
刺激に対する反射的な防衛行動だったのだろう。その小さな影は愛の拳を受け止めると同時、その細腕からは想像もつかない程の怪力で愛の手首を咄嗟に掴みに掛かって、そのままいとも容易く愛のことを投げ飛ばしていた。
投げ飛ばされ地面を転がる黄昏愛。獣のように受け身を取りながら勢いを殺し、すぐさま起き上がる愛であったが、その目は依然として驚愕に見開かれていた。
「うおおおっびっくりしたあっ!? なんだ貴様っ!? 急に何を……待て、まさか貴様『ぬえ』の怪異か!? 貴様がなぜ此処に……此処はどこだっ!? 余はさっきまで夢を――いやこれも夢か!? ジョンはどこだ!? 余の現実はどこに行ったあっ!?」
カタリナの頭上を飛び越えて、その目の前に着地した、予期せぬ来訪者。彼女はすっかり混乱し切った様子で騒ぎ始める。その可憐な姿に、この場に居る誰もが――あらゆる意味で、釘付けとなっていた。
「むっ……おお!? 其処に居るのは幻葬王っ! 存外早い再会だな! あ、いや……待て待て。貴様本物か? これが夢なら……むむむ……ええいっ! もうこの際、夢でも現でも構わん! 教えてくれ!」
童のように幼気な顔立ち。長く伸ばした金髪。宝石のような赤い瞳。修道服の上から纏う、身の丈以上のマントコート。
「余は一体、どうなってしまったのだぁ~っ!?」
――それはヒト呼んで、吸血皇女。
拷问教會の第五席、シスター・アナスタシア。
空間を飛び越えて、今――愛達の前に、その姿を現したのだ。