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クレープ屋さん

のんび~りと。

喧騒って人の思考を邪魔するよね。例えば、考え事をしていたりくしゃみを出したくてウズウズしてたり、小説を読んでいたり……そんな時に限って周りの雑音が邪魔をする。みんな一度は経験したことがあるのではないだろうか。


まさしく、今俺もその状況と真っ向して対立している最中だ。


「ふ、二葉さん? ここって」


「ん? クレープ屋さん」


「うん、見ればわかるんだけど……なんだろう個性的だね」


知ってる。クレープ屋って事ぐらい。ただ、理解できないのは入口に書いてた文言だ。


『カップル限定~カップルとわかるものを提示して下さい~』


これだ。カップル限定も意味がわからないが、提示って……人にアピールするものじゃなくない?! 普通。もしかして、俺が普通を知らないただのモブだから置いていかれてるだけ?


「カップルってわかりさえすれば、クレープが半額で食べられるらしいんだけどさー。正直、ハズイよね」


あの二葉さんでも照れるのか! 過去一の驚きが俺を襲ったが、平常を装う。


「ま、まあ? カップルなら当たり前なんだろうね」


俺の前に並んでるカップルなんて、ベタベタと引っ付き離れない。暑くないのだろうか? 季節はもう梅雨目前だというのに。


「うん? そんなことないでしょー。三隅、カップルに夢みすぎだよ」


そうなの!? 普通のカップルでもしないんだ! 知ったかぶって言うんじゃなかった! 安堵と羨ましさが俺を包む。はあー、あそこまでベタベタしたいわけじゃないけど、悪い気はしないんだろうなー。


俺があまりにも羨ましくカップルを見ていたからか、急に右腕を温かさと柔らかさが襲った。バッと勢いよく、右を見ると、なんと二葉さんが俺の右腕にしがみついていた。もうね、全てが当たってました。


「な、な、な!?」


言葉にならない。感想を後で述べよ、と言われたら400字詰め原稿用紙が超大作になってしまう事だけは確かだ。


「もう、これだけで動揺しすぎだよー。ほら、もっとくっついて?」


「は、はい!」


言われるがまま、二葉さんに歩み寄る。二葉さんは何故かご機嫌そうにニコニコと満面の笑みだ。何故だ? なんでご満悦なんだろう? 確かに間違いなく俺は二葉さんに告白された。だけど、どう見ても二葉さんは雪矢に恋してるようにしか見えない。現に仲良いし。


それなのに、今日の昼休みもそうだったけど、俺を放課後デートに誘う時も機嫌が良かった。……謎が深まるばかりで解決の糸口が一向に見つからない。見つからないものはしょうがないので早々に諦めてしまおう。


諦めてしまうとあることに気が付く。……会話がない! ど、どうしよう?! 女の子とまともに話した事がないし、面白い話しやネタなんて更に持ち合わせていない。こんな時に雪矢がいれば―――って、雪矢だ! 雪矢で思い出した!


「そ、そういえば二葉さんてクレープ好きなの?」


……なんで毎回ドモッてしまうのだろうか。やはり女性慣れは必須なのかもしれない。


「んー。まあ、甘いもの好きだし? てか、私三隅にクレープ好きって言ったっけ?」


「いや……前、雪矢と食べに行く云々言ってた気がして」


「うんー? ……あー、そういう事もあったねー。せっかく一条と約束してたのに、あいつ忘れてたんだよー? 酷くない? 思い出したらなんか腹立ってきた」


まあまあ、と落ち着かせる。やはり、引っ掛かる。言葉の端々に雪矢と行きたいって見え隠れしてる気がするんだよね。


「ま、でも今日は三隅と来れたから全然平気。逆に一条と来なくて良かった! それより何食べる? 私はイチゴにしようかなって思ってるんだけど」


……ほんとにズルい。なんで雪矢と来なくて良かったの? と口から出そうになった。口を真一文字に結びながらも、思わず口角が吊り上がってしまう。だって、さっきまでのモヤモヤがその一言で消し去ってしまったのだから。


「俺はチョコのやつにしようかな」


「あ、それも美味しそー。あとで食べさせあいっこしよ?」


「え……いいけど?」


またツンデレを出してしまった。いや、今回はツンデレというより照れ隠しな気もする。食べさせあいっこって! 食べさせあいっこって! 大事なので二回言ってみた。


そのあと、クレープを受け取ってベンチに座った俺達はお互いにクレープを交換したりして放課後デートを満喫したのだった。


終始、二葉さんが自分のを俺に食べさせようとして、それを断る事もできずに結局、二葉さんのクレープを半分近く食べてしまったのは、今でも反省しています。


だって、俺にクレープを向けながら「はい、口開けて? 美味しい?」ってニコニコとまるで恋人みたいな距離―――恋人なんだけど!―――と問いかけと表情に俺自身やられてしまい、誤魔化すように目の前のクレープをたいらげてしまったのは仕方がないことではないでしょうか! しかも最後に、


「ふふ、間接キスだね?」


って言われればより逃げ道は一本に絞られますよね! 二葉さんの真意が結局わからなかったけど、俺にとって至福の一時を過ごさせていただきました。その間、二葉さんの雪矢への想いとか全部抜けてしまっていたのは言うまでもない。


はあ、またクレープ屋に行きたい。新しい店舗いっぱい出来ないかな?

見て下さってる方が増えてきて、とても嬉しいです。これからも頑張るので、二人の恋路応援してくださいね!

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