俺の気持ちを君に伝えたい~両思いになれるその時まで~
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人を好きになる。それは人間の表現の中で一番難しく神秘的なものだ。初恋は高校一年の時。他クラスだけど雪矢を通じて知り合った女の子―――二葉 晴香さん。明るい髪の毛に明るい性格。第一印象は恐かった。ギャルっぽい見た目に少なからず偏見があったからだと思う。
雪矢と話しているといつの間にか合流してきて、いつも俺を睨む。嫌われてるのかな? って最初は疑った。その時は好きじゃなかった。
ある日の放課後、教室の前を通っていたら盛り上がってる声が聞こえた。覗いてみると、二葉さんと数名の友達で駄弁ってるようだ。二葉さんが少し怒った口調で「よく知りもしないのに人の悪口言うものじゃない」って発言している場面だった。友達だとはっきり怒ることをみんな避けたりするものなのに、二葉さんは前を見据え堂々と言い放っていた。
二葉さんの言葉にごめんって謝る友達達は根は悪くないのだろう。ただ、納得出来ないこととか理解し難い事があったりして悪く言ってしまっただけだと思う。そこからは熱に浮かされたように耳に入らなくなった。
二葉さんの背筋を伸ばして発言する姿がとてもかっこよく、目を逸らすことが出来なかったからだ。それからだ。二葉さんの事を意識し始めて好きだなって気付いたのが。
俺の想い人は俺を見てくれないけど、それでもいい―――側にいたいと願い、2年生の夏前恋人関係になった。幸福過ぎて―――怖かった。この関係が崩れてしまう出来事を知ってしまって。知らないのは自分だけで。どうして俺は雪矢じゃないんだろう。どうして俺を二葉さんは見てくれないんだろうって何度も何度も悩んだ。
いろんな誤解の後に仲直りしたら、二葉さんに告白されて―――自分の気持ちがわからなくなった。俺は二葉さんを好き? 自分に問うても答えは帰ってこない。
―――そんな時、二葉さんに夏休み最後のイベントだからと花火大会に誘われた。
「ふ、二葉さん! ちょっとまた当たってるって!」
「当ててるのー。あっ! あそこにたこ焼き屋さん発見! 行こっ! 三隅」
待ち合わせ場所に現れた二葉さんは浴衣で髪をアップにしてすごく色っぽかった。挨拶もそこそこに腕を引っ張られる。相変わらず距離の詰め方がえぐい。
「はい、あーん」
「……あーん」
「ふふっ。恥ずかしがらなくなったね」
「ま、まあ。こう何度も同じ事があったら適応するというか」
「そっかー。新鮮さがないのか。なんか考えなきゃね」
「いやいや! それは望んでないから」
「大丈夫。わかってるから」
絶対わかってない。たこ焼きの熱を冷ましながらあーでもないと口にしている。絶対変なアプローチかけてきそう。
「あ! 秋人ー。二葉さんもいる」
「よう!」
「あ。こんばんは。三隅君、二葉さん」
両手に花のイケメンに声をかけられてしまった。これは逃げねばと軽く後退する。「おい、何やってんだよ」と呆れ声で制される。
「ああ、雪矢か。水穂さん、四宮さん。こんばんは」
「俺の扱い酷くね?」
「俺犯罪者と友達になった記憶ないので」
「お、おい! 冗談でもそういうこと口にすんなよ!」
ベーっと舌を出して知らんぷりを決めこんだ。しょうがないだろ。大事な妹にトラウマを根付かせたくないからね。
訝しげに見る三人になんでもないと伝え、そこから5人で行動した。地元ではここが一番の大きな祭りなのでたくさんの屋台が並んでいて楽しい。
みんなと居る時は何も考えなくてすむからとても楽だ。
「そう言えば、この花火大会のラストの打ち上げ花火が上がった時に告白すると二人は永遠に結ばれるっていうジンクスがあったわね」
「え、そうなんですか? それは素敵ですね」
「ふーん。興味ねぇー」
三者三様とはまさにこのこと。水穂さんの言葉に耳を傾ける雪矢じゃない。が、水穂さんはご立腹で雪矢の脇腹を手のさきっちょでぶっ指すという行為をかましていた。あれは地味に痛い。
四宮さんは口元に手をあてクスクスと上品に笑い、二葉さんは目をキラキラさせながら鼻息荒くこちらをガン見してきた。なんとなく、何を考えているのか手に取るようにわかってしまう自分が恐ろしい。いや、二葉さんがわかりやすすぎるのか。
「三隅、後で―――」
「おっ! 金魚すくいがあんじゃん。やってこーぜ」
雪矢の一言で会話が途切れ二葉さんは一瞬眉を寄せたが、すぐにニコニコ顔に変わった。あーほんと。わかりやすいなー。
「だから、これをさ―――」
『ヒュー』 『ドーン』
という轟音と共に夜空に真っ赤な花が咲いた。今年初めて花火を見た感動が押し寄せる。目を奪われたのは道行く人全員。ハッと気がついたら二葉さんやみんなとはぐれてしまった。花火が始まったことで人の流れが大きく変わってしまったせいだ。
遠くに二葉さんが見えて大きな声で呼ぶが届かない。しばらくしないうちに二葉さんの姿は人混みに消えた。
呆然と立ち尽くしていると、肩を叩かれる。振り向くと四宮さんが。四宮さんは俺に届くように大きめの声でこう言った。
「今なら間に合いますよ! 追いかけないと!」
「で、でも……」
「三隅君、二葉さんの事が好きなんでしょ!? 好きなら離れちゃ駄目ですよ!」
背中を押され、たたらを踏む。
「ごめん! ありがとう!」
走り出した瞬間、小さい声で「頑張って下さい」と聞こえた気がした。
全速力は人混みのせいで出せないが必死に掻い潜りながら走る。ある程度走った所で人の切れ間を見つける。横手に出て一息入れていると、少し遠くから俺を呼ぶ声が。
「何やってんだよ! 秋人! 男なら根性みせろよ」
「そ、そうは言ってもな……こんなに人がいたらわかんなくなるっての」
息も絶え絶えに憎まれ口を叩く。
「秋人! 二葉さんには事前にオススメスポット教えてるの! もしかしたらそこにいるかもしれない。いなかったら……しんないけど」
「水穂さん……」
小走りに駆け寄った俺に水穂さんは不敵に微笑んだ。
「ほら! 雪矢の受け売りじゃないけど根性みせないと! 私の見込んだ男はこんなところで女の子一人にするようなやつじゃないはずでしょ」
「俺……」
「行きな! ぐちゃぐちゃ考えても答えなんて出てこないよ。他人なんて関係ない。自分の心に問うんだ。誰が好きなのかって。大切なのかって。一人にしたくないって思ったらそれが―――恋、でしょ!」
思い切り背中を叩かれる。痛いけど涙は出てこなかった。胸にストンと落ちてきたものを胸に手をあて確かめる。
「走れ! 思い切り!! 時間ねーぞ! 川の少し上流に林の方へ入れる小道がある。そこを真っ直ぐ高台に向かって登れ!」
「ほんと……二人ともありがとう!」
手を上げ、雪矢が教えてくれた方面へ走り出す。やがて草木をかき分け、高台の方へと着いた頃には花火大会が終わる少し前だった。時間がない。ここにいなかったらまだ屋台が並んでるところにいるのかも。急いで探さないと、と周囲を小走りに見渡すと―――見つけた。
ここに来るまでにいろいろと思い出していた。出会った時のこと、二人さんを好きになったこと、付き合ったこと、振って振られたこと。雪矢が好きなのだと誤解していたこと。―――俺を好きだと言ってくれたこと。
走馬灯のようによみがえるたびに会いたい気持ちが膨れあがった。好きかどうかわからないんじゃなかった。
俺は、また失ってしまうのが怖かっただけなんだ。それに気がついたら後は体が勝手に動いていた。
「二葉さん!」
「三隅?」
人影が花火の明かりではっきりと浮かびあがる。色がついた世界では二葉さんは俺が好きになった二葉さんそのものだった。キレイでずっと見ていたいとそう思った。
「なんでここに……ってか、もう戻るの無理そうだったから前教えてもらったここに来たんだけど」
「二葉さんと花火見たくて」
「え?」
「俺さ……ずっと逃げてたんだ。二葉さんが向けてくれる笑顔や、好きって言ってくれる言葉は俺がつまらない人間だってバレた時に切り捨てられるんじゃないかって。だから自分の気持ちに気付いていたのに、気付かない振りをしていたんだ」
「待って。三隅は全然つまらなくないし、私は切り捨てるつもりはないよ」
「うん。俺は結局自分が可愛かったんだと思う。二葉さんの告白は関係なく、俺自信の問題だったんだ」
「どういう意味?」
「だから……その……」
花火が俺達二人を包みこむ。そして夜空に溶けてなくなる花火はつかの間の静寂も呼び寄せる。
俺を訝しげに見つめる二葉さんに言わなくちゃ、と奮い立たされた。
「俺は―――二葉さんが大好きです!!」
ドーン、と豪快な音と共に花火が炸裂する。音にかき消されたか? と目を瞑る。頬に暖かいものが触れ、目を開ける。すると、二葉さんが俺の頬に両手をあて。
「私も大好き!!」
夜空に咲いた大きな花はその後沈黙を貫いた。あれが最後の花火だったのだろう。ラストの打ち上げ花火の時に告白すると二人は永遠に結ばれる。そんなおとぎ話みたいな話しを信じるか信じないかは自分次第。
ただ言えるのは、行動しなければ何も始まらない。例えどんなことが待ち受けようとも二人なら乗り越えていける――――。そう俺は信じてる。
ご愛読ありがとうございました。これにて、本編完結とさせていただきます。こうして一つの作品を完結させることができ、とても感慨深いです。
何より、毎日投稿……今だから言いますが、辛かったです。難産な時もあり、3時間以上筆が進まなかったり。ですが、今になって思えば一番私生活の多忙さと重なった時期にも投稿を欠かすことなく出来たのは見てくださる皆様のおかげです。ありがとうございました。
最後は駆け足になっしまいましたが、秋人と晴香のハッピーエンドを描けれて思い残すことはこざいません。
長くなりましたが、約1ヶ月と少しお付き合いしてくださり、感想もくださり、ありがとうございました!
この作品とは別に『仕事中は恐いけど仕事以外は甘いんです。』も執筆ペースは下がりますが、ご愛読下さいませ。




