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気付いてしまった

のんび~りと。

「はあ?! あのラブレター二葉からだったのかよ!」


「ちょっ!! 声でかい!」


慌てて雪矢の口を手で覆う。まだモゴモゴ何か言っているが、こちらも溜まったものではない。昨日の出来事を雪矢に報告するや否やこの有り様だ。


男友達ということもあってか、男と話す時の雪矢は結構テンションが高い。イケメンクールならちゃんとキャラ守って欲しい。苦言を内心漏らしつつ、雪矢に目配せする。雪矢も落ち着いたらしく、目だけで頷きを返してきた。


ゆっくりと手を放し雪矢を見つめる。


「まあ、俺も悪かった。見知ってるやつの名前が友達の話題から出てくると案外慌てるもんなんだな」


「まあね。俺だって雪矢から知ってる女の子に告白されたなんて聞いたら驚くよ」


あれ? 俺って仲良い女子っていたっけ? 思い当たる人は1人はいるけど、関わりが薄いので数に入れたら申し訳ないか……と、早々に悩むのを諦める。


「でもよかったじゃねーか。二葉、あんな見た目だけど良いやつだし」


うん、俺もその意見には同感だ。腕を組みながら首肯する。


「そうなんだよ。二葉さんって良い意味で期待を裏切ってくれるよね」


そうだな、と雪矢の笑みが急にニヤニヤに変わる。変化に気付いた時には遅かった。


「――なに」


「えいっ」


「うわっ!!」


可愛らしい一声と同時に視界が暗転する。おとぎ話の世界に入り込んだ錯覚に陥った。慌てる俺だったが、時間が経つにつれ冷静になる。


「も、もしかして二葉さん?」


少しの間の後、視界が広がる。眩しさに目を細めると、視界いっぱいに今度は顔が現れる。思わず仰け反ってしまう。椅子から落ちなかっただけ、良しとしよう。


「当たり! よくわかったね」


頭を撫でられる。初めて続きで思考が追い付かない。え? 目隠しされてからの至近距離ドアップの顔、そこから頭よしよし!? 恋愛イベントが目白押し過ぎて頭がキャパオーバーしてしまいそうだ。


何をしてるの、という前に俺の背後に回って肩から手をニュッと出す。そのまま体を俺の背中にくっつける。つまり、俺は座ったままで、後ろから二葉さんにハグされているのだ!


「だって恋人同士になったんなら、スキンシップ取りたいじゃーん……三隅は嫌だった?」


上目遣いで尋ねてくるなんて、ズルい。これが惚れた弱みかと変に納得しつつ、赤くなった頬や耳を見られまいとそっぽを向きながら、返答する。


「まあ、嫌じゃないけど?」


ツンデレか! って突っ込んでしまいたい! もしくは、誰かツッコミを入れてくれ! 切に願う! 俺の想いに応えてくれる人など現れる事もなく、雪矢と二葉さんが喋りだす。


「秋人と付き合いだしたんだってなー」


「うん、そーそー。残念だったね、一条」


「あ? 何が?」


「こんな美人を放っておくから取られちゃうんだよ? 親友に」


「へっ。秋人は優しくて良いやつだから秋人が幸せなら俺はそれでいいんだよ。てか、誰が取られたなんて思うか」


「あー言ったなー」


二人の世界。こんなに近くにいるのに遠くにいるものと勘違いしてしまいそうな程、二人の会話に割り込む事が出来ない。


チラリと頭上に目線を向けてみる。そこで気付きたくないけれど、気付いてしまった。俺の視線なんか感じない程、雪矢と熱中して喋る二葉さんの視線に。雪矢の事を並々ならぬ感情を抱えて、話し込んでいる姿に。


どう見ても、二葉晴香は一条雪矢に恋してる。


なんか秋人可哀想な人になってる気が…。

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