雪矢の秘密
続きまーす。
夏休みって過ぎ去るの早いよね。え? いつの間に8月の後半になったわけ? バイト行くか遊ぶかしかしていない。夏休みの宿題がこの前やっとこさ終わったくらい。
「なー、秋人」
「んー?」
「お前二葉とはどうなのよ」
「二葉さん?」
寝っ転がって読んでいた漫画をわきに置いて上体を起こす。
「だってお前らさ、夏休み前別れたろ? それで微妙な空気になってたのに持ち直したと思ったらまたいい感じになってんじゃん?」
「えっ。雪矢気付いてたの?! 誰にも言ってなかったのに」
「いや、わかるだろ。伊達にお前と10年以上幼なじみやってねーよ」
「そ、そう言われちゃうとそうなんだけど……てか、この際だから言わせてもらうんだけどさ」
「あん? なんだ?」
「雪矢と二葉さんの会話前聞いちゃってさ。ずっと疑問だったんだけどなんで俺と二葉さんをくっつけようとしたわけ? 二葉さんをけしかける形で」
「あー。その事? 聞かれてたのか。ま、他意はねーんだけどよ。けしかけたのはお前が二葉の事好きなの気付いてたからだよ」
「―――え? バレてたの?!」
「いや、バレるだろ。あまりにもわかりやすいからお前が動きやすいように色々したけど、ほんとお前って見事にフラグを折っていくんだもんな。そうこうしてるうちに進級するしよ。ラチあかねーと思って二葉をけしかけたんだよ。あいつもお前の事好きっぽかったしな。自覚はなさげだったけど」
「ゆ、雪矢!」
涙腺崩壊待ったなしまで来たが、雪矢が先手を打って手でそれを制した。
「お礼とかいらねーからな。結果としてお前の事だからすっげー悩んだんじゃねーか? 俺頭良くないからお前にしてやれる事ってわからなくてよ。いっつも迷惑かけてきたから今度は俺が! って思ったけど慣れないことはするもんじゃねーな」
「確かにいらない誤解とかあって傷付いたけど今になったらいい思い出になりそう」
「あ? なんで? 結果は良くても騙したようなもんだぞ?」
「結果だけ見ればそうだけど、俺と雪矢の中じゃん。だから許せるってこともあるんだよ。それにやっぱり―――」
疑問符を浮かべている幼なじみもとい、親友へ向けて。
「やっぱり雪矢はいいやつだ。顔も良くて性格も良いなんて出来すぎだよな。あとはもう少し配慮があれば俺も傷付かなくてもすんだのにな」
「だから、それは悪いと思ってるって。悪かった」
「まあ、許してあげよう。他でもない親友なんだから」
「ははっ。そうだな。じゃあ、悪いついでに秋人」
「何?」
爆弾って急に投下されるよね。それと同じ威力のものが俺の脳天にも降りそぞきました。
「俺、ずっと言ってなかったけど、お前の妹―――冬華が好きなんだ」
「へー。冬華を―――へ? 冬華!? いやいやいや! おまっ! 冬華はまだ小5だぞ!? 犯罪だろ!」
「知ってるか、秋人」
「何だよ」
「俺は未成年で冬華も未成年」
「ああ」
「未成年同士は犯罪じゃない!」
「なるほどな……ってあほか!」
手首のスナップをフル活用し、渾身の突っ込みに力を入れる。嘘だろ!? こんなにイケメンなのに幼女が好き……ロリコンだ!! 徐々に距離を取る。
「きっかけはあったんだ。俺だってそれまではちゃんと秋人の妹だって割り切ってたしそんな目で見たこともねぇ。ってか、興味なかった。ただ、価値観が変わったのは冬華が5年に上がった頃。秋人とは別行動で帰ってたら家の玄関前の段差で滑ってこけそうになったのを冬華が華麗に上体支えて助け起こしてくれてさ……。衝撃が走ったんだよな。これが恋なのかって」
納得するなよ! 何ときめいてんだよ! 相手は友達の妹。ましてや小学生だ! まだ中学生なら妥協も出来るがJSなんだよ。それは犯罪だ。いや、確かに法律では裁けないのかもしれない。だが、社会的には死んだも同然だ。マジか! マジなのか! はっ! だから水着選びの時小学生コーナーにいたのか。やっぱり見てたのか。
カミングアウトがあまりに酷くて泣きそうになる。しかも雪矢が最後に放った言葉が胸を突き刺した。
「こういうことだったんだな。人を好きになるって。社会的とか理屈とか関係ないんだな―――」
「雪矢……」
「な! 兄さん!」
……は?
「は? はあー?! なんで兄さんって呼ばれなくちゃいけないんだよ!」
「当たり前だろ。冬華と付き合って結婚したらお前は俺の兄貴なんだから。ああ、大丈夫。冬華が高校卒業するまで待つつもりだから」
「例えそうだしても、認められません!」
そこをなんとか! って声が聞こえるが耳を塞いで絶対に聞き入れなかった。神様、友達が小学生に恋をしてしまいました。助けて下さい。いや、助けなくてもいいので夢だと言って下さい。そう、切に神様に願ったのだった。
雪矢の性癖ヤバい。まあ、もとはこうではなかったのですが。恋というのは人を変えてしまうのですね。
ここでお知らせがございます。本作品残次話で完結となります。最後までお付き合い下さいませ。




