水着選び
続きまーす。
「三隅! こっちとこっちだったらどっちが良い?」
「えっと……あ、赤の方かな」
「へえ。こっちの方が好みなんだー。確かにビキニだしねー。挑発的だよねー」
「いや! やっぱり白で! 白の方が絶対いいよ! 二葉さん色白いし!」
俺達がいるのは何を隠そう水着売場である。男がショッピングモールで入れないベスト3にランクインする聖域でもある。なんだろうね。服と違って肌に直接触れてそれを公共の場で晒すからかやたら店内に入るのも直で見るのも恥ずかしい。うん。この考え自体が気持ち悪いね。
話を戻そう。二葉さんの提案もとい発案で水着屋に行くことになった。たどり着けば、そこはなんとオアシスな事か! 男だけだったら絶対に白い目で見られる空間―――いや、ここは聖域と言っておこう―――で、こんなにも堂々と水着を物色し、あまつさえも美人達の生着替え、そして水着姿を拝謁させて頂けるなんて。ありがたやー。
雪矢は何処吹く風らしく気にもとめず、なぜか子供用コーナーへ。え? そこ、小学生くらいまでしか置いてないぞ……。ああ、そうか! その隣の男性コーナーを見たかったんだな! うん。そうだよな。そんなに凝視してみてるのは決して子供用の水着ではないはずだ。
何とも言えない空気が纏わりついてきたので、払拭するために顔を元に戻す。深く考えるのはよそう。この素晴らしい景色を目に焼き付けるんだ。
「どおっ!? めっちゃ良くない?!」
勢いよく試着室のカーテンを開け放つ二葉さん。思わず目を奪われる。色で悩んでた二葉さんだったが、白にして正解だ。赤だと大人っぽすぎるというか……二葉さんの言ったように挑発的に見られてもおかしくない。だが、白はどうだ。シミ一つない二葉さんの肌を白のビキニが包み込むことで、可憐な中にも女性らしさを感じる。思わず、口を開く。
「か、かわいい……」
「へ? な、何言ってんの! 褒めても何もないから!」
「ううん。ほんとに可愛くてみとれ―――いたっ!」
頬を思い切り引っ張られる。引きちぎれそうとは思わないが、痛いものは痛い。涙目で相手に非難の視線を送る。
「秋人、私の方が魅力的でしょ? ほら、大人の女性らしいというか」
痛む頬を擦りながら、水穂さんを凝視してしまった。痛みなんて即効忘れた。擦ってた手がポテリと重力に従って落ちる。直立不動になって口が半開きになる。
「ど、どうなの? 変?」
「そんなことない―――水穂さんすごく大人の女性っぽくて魅力的だよ。イメージに良く合ってる」
俺が褒めると予想してなかった返答だったのか黙りこむ水穂さん。顔が真っ赤なのは怒ってるのかな? 弟の友達に褒められても、たかが高校生の戯言だと切り捨てられるかも。でも、本当に嘘は言ってない。水穂さんの水着姿なんて拝んだ事は一度もないけれど、着てそうだなって妄想でも想像出来る魅惑的な黒ビキニタイプ。胸の真ん中にシルバーのリングがあってパンツ部分は紐だ。
どう見ても誘惑している。このはち切れんばかりのボディでどれだけの男共を誘惑するつもりなのだろうか。立候補したい。こんな女性がいたら弄ばれたい。ちっ! 知り合いじゃなければ良かった!
思わず、歯噛みすると今度は袖を引っ張られる感覚。もう何度も体験してるので、今さら驚かない。また二葉さんでしょ、と振り向くと予想とは違っていた。
「どうしたの? 四宮さん―――って」
「ど、どうですか? あんまり自信ないんですけど……」
四宮さんが用事で俺を引き留めたのだと最初思った。確かに間違いない。さっきから刺激的なモノしか見ていないので四宮さんは着ていないと踏んでいた。対抗するようなタイプに感じなかったので。だが、俺の考えは甘かった。
手で胸元を抱え込むように隠していたのだ。ぐいっと引っ張られる。近い!! 胸が目の前に! ありがとうございます!
「すみません。恥ずかしいのでちょっと隠れて見て下さい……どうでしょう?」
「どうもこうも……すごく素敵だよ。恥ずかしがることないのに」
薄ピンクの水着にはフリルがあしらわれ、他の二人よりもボリュームはあるが露出は少なめだ。図書室の妖精と呼ばれているのでこれくらいがちょうどいいと思う。過激すぎるとイメージがガラガラと崩れちゃうし。
「み、三隅君以外の男性に見られるのはちょっと……でも、褒めて下さってありがとうございます」
ふわっと花が綻ぶように笑う。どぎまぎしてしまう自分がこそばゆい。そこへまたも奇襲。腕にタックルされ、またも腕組みする形となった。あれ? なんで?
「もー。三隅、早く会計行こっ?」
「ふ、二葉さん。その……当たってるんだけど」
俺の指摘を受け、二葉さんはニヤリとほくそ笑む。
「当ててるの」
「なっ!」
何言ってんの、とは言えず口をパクパクさせる。顔が急激に熱くなる。端から見れば恐らく真っ赤だろう。二葉さんはしてやったりとレジへと歩んでいった。そのあと俺と雪矢を含め5人とも、無事新しい水着を購入でき、ホクホク顔で帰路へとついた。
その道中、三隅と呼び止められる。振り向くと二葉さんが俺の肩に手をかけ、自分の方へ俺を引っ張る。そして耳元でこう囁いた。
「あまり他の子に優しいと妬いちゃうから」
バッと耳を抑え、二葉さんを見る。お互いの目が1秒も離れる事なく見つめ合う。それはとても長く感じた。奇妙な感覚だった。が、二葉さんから逸らし前を行く3人に駆け寄り合流した。そこまでを見送ったが、足が動かなかった。
俺一人その場で立ち竦み、二葉さんの吐息がかかった耳を触る。何があるわけじゃない。ただ、無意識に触る自分がいた。
今さらですが、題名を代えるか悩み中です。良い案あったら教えて下さい。




