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ブッキングもどき

続きまーす。

両手に花という言葉を聞いた事があるだろうか。それは男なら一度は経験したい体験だろうし、女性なら『但しイケメンに限る』を、想像するだろう。


俺はね、人生で初めて両手に花という奇跡を味わっている。だが、それは二人の女性が一人の男性を取り合って起きる出来事ならすごく羨ましい事案だと思う。


俺が今体験しているのはそんな生ぬるいのではない。そもそもモテないのだから、取り合われることもないし、なにより人数が二人じゃない。三人いる。三人いたらもはや両手ではなくなって足を使えばいいのか? いやいや。足とか相手に失礼だ。俺ならそうあしらわれても仕方がないと諦められるが、彼女達はそれぞれ違うベクトルの美人さんだ。


モブの俺では太刀打ちできない……いやだから、何と戦ってるんだ。話を戻そう。目を背けようと問題を先延ばしにしていたが、改めて目の前で繰り広げられている水面下の戦いに目を向ける。


「え、何? 秋人の知り合い? なわけないよね? こんなに美人と知り合いなんてさ」


「それはこっちの台詞ですね。ちょっと三隅! さっきはよくも逃げたわね。言い訳があるなら聞かせてくれる?」


「三隅君。どういうことか私にも説明お願いします」


水穂さん、二葉さん、四宮さん……三人がブッキングしてしまった。って、ブッキングも何も予定を組んでいたわけではないけれど、現に三人が同時に出会ってしまった! 何故こうなったんだ!? と、回想してみる。


「はあー。四宮さんってさ、モテるでしょ」


「え!? そ、そんなことないですよ!」


「嘘つかなくてもいいから。そうでしょ? 秋人」


「え……俺に聞くの? うーん」


水穂さんの質問に答える為に思考を巡らす。出会って間もないわけではないが知り合いと呼べるようになったのはついこの前。それより前の四宮さんは、悪いがはっきり言ってあまり知らない。知らないがここ一週間前のやり取りや男性陣に囲まれている姿を見た限り、あれは絶対にモテている。結論が出て、顎に手をあてながら頷く。


「うん。モテるね」


「み、三隅君! もう。恥ずかしいから言わないで下さい」


「やっぱりね! 顔だけ良い女じゃないと思ったよ」


「え? そうなの? 顔が良いとモテるんじゃないの?」


「まあ、確かに間違いではないけど、性格とか男性に好かれる仕草とかそういうのもモテる要素に含まれてるのよ。ただ四宮さんは顔が元からいいからそうじゃない人より数歩も先を歩んでいるのは間違いないけどね」


「へぇ。知らなかったなー。確かにキレイだもんね」


マジマジと四宮さんを物色するように見る。その不躾な目に耐えられなかったのか四宮さんが顔を赤くしながら視線を逸らす。そして、ついでとばかりに話題も逸らす。


「そ、そういう水穂さんだって男性が選り取り見取りで選び放題だと伺ったんですが。でも、一定の相手がいないとも聞きました。……何か意味があったりして」


おお! 敬語が抜けてため口に! ……そのかわり空気が重くなった。なんで?! ここは喜ぼうよ! ん? いや、待てよ。今の四宮さんの最後の言葉―――なんか含みがあったように聞こえたような。


「べ、別に何もないわよ。も、もうこの話はおしまい! 長居しても悪いから出ましょ」


スタスタと去って行く水穂さんの背中を二人で追いかけ、スタブを後にする。あてもなく歩いていると、前方から声をかけられた。よく見るとまたも見知った顔……てかヤバい。知りすぎてる。だって雪矢と二葉さんだったんだから。


逃げ出したい所だが、そうはいかない。退路を絶たれてたまるか! と合流してからもずっと模索する。雪矢に助けを求めると肩を竦めながら頭を振った。ははっ。終わった……。


そして冒頭に戻る。最初は平和的にお喋りが始まったんだ。雲行きが怪しくなったのは水穂さんが雪矢と二葉さんがデートをしていたのか疑り始めた時から。二葉さんが否定して水穂さんがわかってるからみたいな悟りきった表情と言葉で戦いの火蓋が切られた。


「本当は三隅と来るはずだったのに勝手に雪矢が付いてきた」とか「私は途中で会って楽しくお茶をしていた」とか「秋人がいたから私も会話に混じっただけ」とか。はあ。ほんとありのままの出来事を話ただけで何故俺が責められる側にいつの間にかなってるんだ?


「え、えっと。まずは二葉さん、さっきはごめん! 急にお腹痛くなったからトイレに行っててさ。上演開始してたから帰ろうとしてモール内歩いてたら四宮さんと会ってついでにお茶してたら、そこで水穂さんに会った。ただそれだけなんだ」


なんとも苦しい言い訳か。己で言っておきながら誠に聞き苦しい。ありのままを話たけれど、何故だろう。浮気男の言い訳にしか聞こえない。


叱責されるのも覚悟の上、目を瞑る。


「……わかった。じゃあ、またどっか出かけよ? そうだ! 海とかどう?」


「海なら秋人と行く予定だったから、良かったら来るか?」


「えっ! いいの?!」


「ああ。いいぞ。なあ! 秋人!」


「えっ!? あ、ああ、うん。いいよ」


「ヤッター。じゃあ水着選ばなくちゃ! あっ! 今日の埋め合わせで三隅に水着選んでもらおうかな」


「ええ!? お、俺男だし無理だよ!」


「大丈夫! ね! 今から行こ?」


腕に手を回しぎゅっと腕組みしてくる二葉さん。目が合うと俺が大好きな天真爛漫な笑顔。可愛い……。って、それが駄目なんだ! 別れたんだからこれは雪矢の気を引くため! 俺の気を引くためでは断じてない! 自分を奮い立たせていたら慌てた声が二つ。


「ま、待って! 海に行くなら私が車出してあげる! ね! 秋人いいでしょ? ほら、いいわよね? 雪矢」


俺に向けた笑顔から一変、鋭い眼光で雪矢を射ぬき雪矢は借りてきた猫のように両手を上げて降参ポーズをとる。顔は諦めた表情をしていた。どうしていつも雪矢はこういう表情をするんだろう? 水穂さん優しいよねって言ったらすごく嫌そうな顔をする。まあ、格好いいんだけど少し照れ屋なせいで、よく手が出るんだけど。


「わ、私も行っていいですか? 海あまり行った事がなくて……楽しそうだったので」


「おう! えっと、四宮さんだっけ。いいぜ! 人数多い方が楽しいだろうしな」


「じゃあそうと決まれば私も水着買わないと。秋人選んでね」


「私も三隅君に見てもらって選んで欲しいです。駄目ですか?」


期待の目とすがる目が俺を見つめてくる。雪矢に続き、俺も両手を上げる。厳密に言うと片手だけ。だって二葉さんが柔らかい二つの球体を腕に押し付けてくるので、手を上げられない。いや、決してやましい気持ちがあるわけじゃないよ。うん。しょうがないよね。


俺の腕と二葉さんを何度も交互に見て、頬を膨らます水穂さん。困った表情で見つめてくる四宮さん。満足そうな二葉さん。能天気な雪矢。そして、胃が痛い俺の計5人で海へ行くことになった。


どうしよう、海に行った後胃に穴が開いたらと恐怖する俺なのだった。

水着回も近いですね。 モブじゃなくなりつつあることに秋人は気付いているのでしょうか? いや、恐らく気付いてないでしょうね。

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