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ラブレター?

のんび~りと。

梅雨前という事もあり、じめじめとしている。肌が若干だがしっとりとしており、汗のせいでシャツが肌に張り付く。嫌~な季節だ。


まあ、そんな些細な事は捨て置き、今日も今日とてモブという立ち位置に精を出す。と、言いたい所なのだが…。


「雪矢ー、これってなんだと思う?」


「んー? って、それラブレターなんじゃね?」


「あーラブレターね。よく少女漫画で出てくるやつね…って、ラブレター?!」


もう一度、自分の手に持っている手紙を凝視する。裏面を見ると、あからさまなハートのシールが貼られていた。


動揺し過ぎて、手が震える。持っている手紙を危うく落としかけ―――そうなのを、華麗に雪矢がキャッチする。溜め息混じりに手紙を渡される。


「何やってんだ、秋人。せっかくのラブレターが汚い床に落ちる所だぞ」


「ご、ごめん! ありがとう」


手紙を受け取りながらも、呆れ混じりに幼馴染を見てしまう。雪矢って一言余計なんだよね。汚い床ってわざわざ言わなくてもわかるってのに…。内心で幼馴染にツッコミを入れつつ、もう一度ラブレターに目を落とす。


「とうとう秋人にも春が来んのかー。遊べなくなるなー」


「いやいや。これが本当にラブレターとは限らないから」


雪矢が不愉快だと言わんばかりに思い切り眉間に皺を寄せた。あ、ヤバいと思った時には遅かった。


「何言ってんだ! もしそのラブレターが偽物だったりしてみろ、今度こそ俺が許さねー!」


鼻息荒く、捲し立てる雪矢をドウドウとあやす。せっかくのイケメンが~と、女の子達の気持ちを汲む事も忘れない。


「例えそうだとしても、俺は大丈夫だから。雪矢もそんな怒るなよ」


「いいや! やつらは何もわかってないんだ! 秋人が優しいやつで利用してもいいやつじゃないって事」


「まあまあ。俺は気にしてないからさ。立場ってのわかってるつもりだし」


「秋人は甘いんだ。だから、あの女共が付け上がる。秋人が許しても俺は許さねー」


「わかった。わかった。俺の為に怒ってくれてありがとう。てなわけで、この手紙の話しになるんだけど、放課後呼び出しくらってるんだよね」


雪矢を諌めて、もう一度ラブレター……手紙に話題を持っていく。ここで、ラブレターと言うのが恥ずかしくなってきたというわけではないと否定しておこう。


強引だが俺の機転がどうにか功を奏して、雪矢のお怒りが収まった。まあ、雪矢がキレるのもわからなくもない。雪矢自身認めたくないと言っているが、誰が見てもイケメンと答える容姿の為、これまで雪矢にアタックする前に俺を利用し、お近づきを狙う女の子が後を経たなかったかったからだ。


友達想いの友人を持つと我が身の事のように考えてくれるけど、15年来の友人のせいか当の昔に踏ん切りがついたのだが、雪矢はそれを良しとはしない。

まあ、何が言いたいかって言うと、イケメンなのに情に熱いやつなのだ。


「じゃあ、放課後一緒に帰れねーのか」


「うん、雪矢の言うようにそういう人ではないって思いたいけど、普通にイタズラの線もあるから、正直行きたくはないんだよね」


俺の手から手紙を掴み、自分の頭の上空に翳しながら、ポツリと口を動かす。


「だなー。男共が遊び半分でこういう事してるって聞いた事あるしな」


「え? ほんと? えー、それ聞くと行きたくなくなった」


俺の肩に腕を回して、ニカッと笑いながら俺を励ます。


「もしそうだとしてもお前が傷付かない程度のイタズラなら笑い話しにしちゃおうぜ、昔こんなことあったなーって」


そう解釈する幼馴染を横目で見つつ、つくづく俺の幼馴染はイケメンだなーって納得してしまった。


次の授業が始まるからと雪矢は自分の席へ戻っていった。授業が始まっても先生の話しが耳に入らない。考えているのはずっと手紙の事。頬杖をつきながら雪矢が言ったようにイタズラの可能性と、こんなモブにあってもいいのかわからないラブイベントの可能性も模索する……思案が止まらず、気がついた時には手紙に書かれていた約束の10分前になってしまっていた。


いつの間に授業が終わって、HRも終わったんだ! と、嘆いても仕方がない。聞いていなかった自分が悪いのだから。


慌てて、手紙に書かれていた約束の場所へ向かう。といっても、俺が約束したわけではないのだけども。一方的にされたので、これは果たして約束と言えるのか。なんて、しょうもないことを頭に巡らせながら、校舎裏へ向かう。


なんて、ベタな告白スポットなんだろうって間抜けにも考えていた自分をこの時、叱責出来ていれば、気持ちの整理が出来たかもしれなかったのに。


約束の時間まで後少しと、歩く速度を上げる。校舎裏まで後ちょっとだ。


時間を巻き戻そう。俺と雪矢が手紙の事で想像を膨らませていた時、俺達の事を遠きに見ている人の視線に気がついていれば、これから待ち受けている現実に即座に対応出来たのかもしれない。

ラブコメっぽくなっていけたらいいなーと思ってます。

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